デジタル大辞泉
「傾く」の意味・読み・例文・類語
かた‐ぶ・く【▽傾く】
[動カ四]
1 「かたむく
1」に同じ。
「大匠拙劣みこそ隅―・けれ」〈記・下・歌謡一〇六〉
2 「かたむく
2」に同じ。
「山の端に月―・けば」〈万・三六二三〉
3 「かたむく
3」に同じ。
「帝畏しと申せども、臣下のあまたにしてかたぶけ奉るときは―・き給ふものなり」〈大鏡・後一条院〉
4 「かたむく
4」に同じ。
「禅の宗旨に―・かせ給ひて」〈太平記・四〉
5 《首がかたむく状態になるというところから》不審に思う。疑う。また、非難する。
「この匠が申すことは何事ぞと―・きをり」〈竹取〉
[動カ下二]
1 「かたむける1」に同じ。
「傘をさしたるに、…横さまに雪を吹きかくれば、少し―・けて」〈枕・二四七〉
2 器を斜めにして中の物を出す。
「わたつ海をみな―・けて洗ふとも」〈風雅・釈教〉
3 「かたむける3」に同じ。
「帝を―・け奉らむと構ふる罪によりて」〈栄花・月の宴〉
4 「かたむける4」に同じ。
「なにとか、なにとか、と耳を―・けて問ふに」〈枕・九〇〉
5 「かたむける5」に同じ。
「白楽天の作をば東坡先生は―・けけるとかや」〈著聞集・四〉
かぶ・く【▽傾く】
[動カ四]《「かぶ」は頭の意》
1 かたむく。頭をかしげる。
「―・けるは稲のほの字ぞ京上﨟/城次」〈貝おほひ〉
2 勝手な振る舞いをする。奇抜な身なりをする。
「―・きたる形ばかりを好み」〈伽・猫のさうし〉
3 歌舞伎を演じる。→歌舞伎
「いざや―・かん」〈伽・歌舞伎草子〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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かた‐ぶ・く【傾】
- [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙
- ① 斜めになる。一方へ向き寄る。かしぐ。かたぐ。
- [初出の実例]「大宮の 彼(をと)つ鰭手(はたで) 隅(すみ)加多夫祁(カタブケ)り」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- 「唐葵、日の影にしたがひてかたぶくこそ、草木といふべくもあらぬ心なれ」(出典:枕草子(10C終)六六)
- ② 太陽や月が沈みかける。
- [初出の実例]「山の端に月可多夫気(カタブケ)ばいざりするあまのともしび沖になづさふ」(出典:万葉集(8C後)一五・三六二三)
- 「あばらなる板敷に月のかたぶくまでふせりて」(出典:伊勢物語(10C前)四)
- ③ 盛んな状態から次第に衰えの状態になる。国、家、年齢、運命などについていう。
- [初出の実例]「又天地の共(むた)長く遠くかはるまじき常典(つねののり)と立て賜へる食国(をすくに)の法も傾(かたぶく)事無く、動くことなく渡り去(ゆ)かむとなも」(出典:続日本紀‐慶雲四年(707)七月一七日・宣命)
- 「いとど、年もかたぶきまかるままに、世中もひさしくみて侍れば」(出典:愚管抄(1220)三)
- ④ ( 首が傾く、というところから ) 不思議に思う。また、あれこれと考える。
- [初出の実例]「竹取の翁、この匠(たくみ)らが申すことは何事ぞ、とかたぶきをり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ⑤ 物事の状態や人の気持、考えなどがある方向にかたよる。あるものにひきつけられる。ある傾向を帯びる。
- [初出の実例]「此の君禅の宗旨に傾(カタフ)かせ給ひて」(出典:太平記(14C後)四)
- 「欲心には誰もかたぶきて」(出典:読本・春雨物語(1808)宮木が塚)
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行四段活用 〙 非難する。
- [初出の実例]「金葉集といふなこそ撰者のえらべるにや。かたぶく人はんべるとかや」(出典:今鏡(1170)二)
- [ 3 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ⇒かたぶける(傾)
傾くの補助注記
中世以後、これから転じた「かたむく」という形が併用され、現代では後者が優勢である。
かた‐む・く【傾】
- [ 1 ] 〘 自動詞 カ行五(四) 〙 ( 「かたぶく」の変化した語 )
- ① 斜めになる。一方へ向き寄る。かしぐ。かたぐ。
- [初出の実例]「此の花の房が、雨にうるをいて、次第にをもく成て、ふさが、かたむきたやうな也」(出典:中華若木詩抄(1520頃)上)
- ② 太陽や月が沈みかける。
- [初出の実例]「夕陽西にかたむけば」(出典:平家物語(13C前)灌頂)
- ③ 盛んな状態から次第に衰えの状態になる。国、家、年齢、運命などについていう。
- [初出の実例]「その時都かたむいて幽王終(つひ)にほろびにき」(出典:平家物語(13C前)二)
- 「イマワ スデニ ヨワイモ catamuite(カタムイテ)、ハモ ヌケ」(出典:天草本伊曾保(1593)老いた犬の事)
- ④ 物事の状態や人の気持、考えなどが、ある方向にかたよる。ある傾向を帯びる。
- [初出の実例]「アクニ catamuqu(カタムク)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- 「思へば思ふ程、此問題は手の附けられぬものだと云ふ意見に傾(カタム)いて」(出典:かのやうに(1912)〈森鴎外〉)
- ⑤ 時間が過ぎる。
- [初出の実例]「八ツがかたむいた抔(など)云八時過のこと也」(出典:浪花聞書(1819頃))
- [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ⇒かたむける(傾)
かぶ・く【傾】
- 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 ( 「かぶ」は頭の意 )
- ① 頭がかたむく。特に、稲が実って穂が傾く。かたぶく。
- [初出の実例]「雨ふれば門田の稲ぞしどろなる心のままにかぶき渡りて」(出典:行宗集(1140頃))
- ② 首をかしげて考える。
- [初出の実例]「彼者よひこされ候事者、能を可二相企一との内存かとかふき申候」(出典:島津家文書‐慶長六年(1601)一二月五日・島津惟新(義弘)書状)
- ③ 勝手気ままなふるまいをする。派手な身なりや、異様な、または好色めいた言動をする。
- [初出の実例]「其上彼者かぶいたる武辺なれば、敵弱きには勝利を得る事も之有るべし」(出典:末森記(1598))
- ④ 歌舞伎踊りを演ずる。
- [初出の実例]「かふき女名字号二出来島一、隼人召連被レ下けるが、去月比、引連令二上洛一、衣装已下きらびやかにしてかふきける」(出典:当代記(1615頃か)四)
- ⑤ 茶の風味を味わって、その品種を飲み分ける。かぶきちゃを行なう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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