普及版 字通 「氏(漢字)」の読み・字形・画数・意味
氏
常用漢字 4画
[字訓] うじ
[説文解字]
[甲骨文]
[金文]
[字形] 象形
小さな把手のある刀の形。共のときに用いる肉切り用のナイフ。その共に与(あずか)るものが氏族員であったので、氏族の意となる。族は(えん)(はたあし)と矢に従い、矢は誓約に用い、氏族旗の下で誓約に加わる者の意。氏は祭祀、族は軍事、ともにその氏族儀礼に与るものをいう。〔説文〕十二下に「巴蜀、山岸の脅(むね)の(たい)(堆)、旁して(らくだ)せんと欲するを、名づけて氏と曰ふ。氏のるる聲、數百里に聞ゆ。象形」(段注本)とし、揚雄の〔解〕「くこと氏(したい)の(ごと)し」の句を引くが、それは氏の本義本訓とも思われず、氏族の意と全く関するところがない。氏の音は是と近く、段玉裁は是を氏の本字とするが、是は匙(さじ)の象形字。先端がスプーンの形である。氏族共の儀礼としては、祭に長老が牲肉を頒(わか)つのを宰(屋の形と、牲肉を切る曲刀の形)というように、共の肉を頒つ氏の方がふさわしい。氏の大なるものは厥(けつ)、いわゆる剞(きけつ)(ほりもの刀)のの初文で、これは彫刻などに用いる。古代の氏族は、王朝との関係において、職能的に組織されることが多く、〔周礼〕の官制には保氏・媒氏・射鳥氏・方相氏のように、氏を官名とするものが多い。その古礼を伝承する氏族の名であろう。
[訓義]
1. 牲肉・祭肉を分かつ小刀、祖祭・共のときに用いる。氏族の象徴。
2. うじ、氏族、家系の名。
3. 称類、たぐい、なかま。
4. 突出している崖。
5. 是と通じ、張氏を張是のようにいうことがある。
[古辞書の訓]
〔字鏡集〕氏 ウヂ
[部首]
〔説文〕に(けつ)(厥)をこの部に属し、次に部を列する。〔玉〕も同じ。を「木の本なり」とするが、は厥()の象形字で剞(きけつ)の象。または氏(小刀)を以て底を刮(けず)り平らかにする字で、刮はもとの形に従う字である。氏・厥はもと相似た形の器である。
[声系]
〔説文〕に氏声として・・紙・など十二字を収める。中に(ぎ)の声の字が多いのは、転化音であろう。
[語系]
氏・是zjieは同声。氏は共の肉を頒つナイフ。是は匙の初文でスプーン。本来の字義から、他の義に転用されている。
[熟語]
氏号▶・氏姓▶・氏族▶・氏冑▶・氏閥▶・氏譜▶
[下接語]
漢氏・舅氏・左氏・釈氏・姓氏・杜氏・母氏・名氏
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報