随分(読み)ズイブン

デジタル大辞泉 「随分」の意味・読み・例文・類語

ずい‐ぶん【随分】

[形動][文][ナリ]
ふさわしい程度を超えているさま。また、いちじるしいさま。並でないさま。過分。相当。「随分御見舞をいただきました」「貯金随分な額になった」
人に対する態度言動が度を過ぎているさま。非常識。「そんなことを言うなんて随分な奴だ」
[副]
いちじるしいさま。多く、予想外だとか不本意だとかいう気持ちをこめて用いる。非常に。だいぶ。かなり。「年の割には随分(と)けて見える」「随分(と)大げさなことをいう人だ」
その人の能力・身分・立場などにふさわしいさま。また、事態がある状況にふさわしくなっていくさま。分相応に。それなりに。「しっかり勉強すれば、成績随分(と)よくなるものだ」
「将来立派な者にさえなれば、―照子婿むこにもしてやる」〈谷崎悪魔
その人の置かれている状況の中で最善を尽くすさま。できるだけ。なるべく。「随分(と)養生してください」「随分(と)努力してみましょう」
(別れの挨拶などで用いる、古い言い方)せいぜい。
「もう御別れになるかもしれません。―御機嫌よう」〈漱石坊っちゃん
[名]その人の能力・身分・立場などにふさわしいこと。
「我は此の宗に帰すれども、人はまた彼の宗に志す。共に―のやくあるべし」〈神皇正統記嵯峨
[類語]1比較的割と割に割りかし割方割合結構大幅かなり相当なかなか大分だいぶ・だいぶん大層すこぶいやにやけにえらい馬鹿ばか余程余っ程

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「随分」の意味・読み・例文・類語

ずい‐ぶん【随分】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 分限に応じていること。身分相応なこと。
    1. [初出の実例]「生事任情甘素食、官銜随分忝閑曹」(出典:田氏家集(892頃)中・身無繋累)
    2. 「三条らも、すいふんに栄えて、かへり申しはつかうまつらむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
    3. 「出家随分の功徳とは、今に始めたることにはあらねども」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一一)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 ( 「と」「に」を伴って用いることもある )
    1. (不十分ではあるが)そのものの立場でできるかぎりのことをするさま。ぎりぎりの線まで。極力。せいぜい。精一杯。
      1. [初出の実例]「二位中将の所望候しを、入道随分執り申しか共、遂に御承引なくして」(出典:平家物語(13C前)三)
      2. 「親のきらふ女房にずいぶんと孝行尽し、親には不孝尽しや」(出典:浄瑠璃・心中宵庚申(1722)下)
    2. 程度や優れていることなどが相当であるさま、ひとかたでないさまをいう。はなはだ。大いに。非常に。かなり。
      1. [初出の実例]「忠宗・景宗も、随分血気の勇者にて、抜群の者なりしか共」(出典:平治物語(1220頃か)下)
      2. 「Zuibunni(ズイブンニ) トトノエマラセウズ〈訳〉私が十分に用意しましょう、または、十分よく取り計らいましょう」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      3. 「『おめへン所のかかさんは縫ちゃア呉めへ。』『ずいぶん縫ふのさ。サア、出しなせへ』」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
      4. 「兎も角、随分(ズヰブン)と不自由な事だらう」(出典:都の友へ、S生より(1907)〈国木田独歩〉)
    3. ( 下に打消・禁止の語を伴って ) 決して。必ず。なかなか。容易には。
      1. [初出の実例]「『初た所へいて、ねむったらば、さんざんであらふ』と云。『ずいぶんねむりまらすまひ』と云」(出典:天理本狂言・啼尼(室町末‐近世初))
      2. 「治まりたる御代にいても乱をわすれず、づい分油断なく武芸はげみ」(出典:黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)下)
  3. [ 3 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. 程度が相当なさま、すぐれているさま。→随分の人
    2. 非道であるさま。はなはだしく非難すべきさま。近代、多く女性の間に用いられる語。
      1. [初出の実例]「夫人も髄分だわねえ。だけれども、何だって其様な事を、阿嬢様に伺へなんて仰有るだらう?」(出典:魔風恋風(1903)〈小杉天外〉後)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「随分」の読み・字形・画数・意味

【随分】ずいぶん

相応に。思うまま。宋・李清照〔鷓鴣天〕詞 如(し)かず、隨ふに 東籬なるに(そむ)くこと(なか)れ

字通「随」の項目を見る

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