至極(読み)シゴク

デジタル大辞泉 「至極」の意味・読み・例文・類語

し‐ごく【至極】

[名・形動]
極限極致に達していること。この上ないこと。また、そのさま。
「―の貧生で、…按摩をして凌いで居る者がある」〈福沢福翁自伝
「女道衆道の―をあらはす要文」〈浮・禁短気・二・目録〉
きわめて道理にかなっていること。また、そのさま。至当
「兄を殺そうとした自分が、かえって犬に食われて死ぬ。これより―な天罰はない」〈芥川偸盗
「これでごきげんの直るやうにと、―なる事を申し出だせば」〈浮・親仁形気・一〉
他人の意見などをもっともだと思って、それに従うこと。納得。
「母が言葉をひとつも忘れなといへば、娘も是を―して」〈浮・織留・二〉
[副]その状態・程度が、これ以上はないというところまでいっているさま。きわめて。まったく。「至極便利である」「至極ごもっとも」
[接尾]形容動詞語幹や状態性名詞に付いて、この上なく…である、まったく…だ、などの意を表す。千万せんばん。「残念至極」「迷惑至極だ」
[類語]2勿論元より当然もっとも無論まさに当たり前ご無理ごもっと言うまでもない言わずもがな言をたない論をたないもありなん無理もない無理からぬ自然至当自明歴然歴歴一目瞭然瞭然灼然しゃくぜん明らか明明白白定か明快はっきり明瞭画然顕然まさしく必至疑いなく然るべきすべからく言うに及ばず言えば更なり言うもおろか論無し推して知るべし隠れもない紛れもない理の当然必然妥当自明の理それもそのはずもっともっとも至極もっとも千万うべなるかなむべなるかな合点唯唯諾諾首肯うべなう賛成賛同果たして果たせるかな更にも言わずのみならず言わずと知れた違いないくっきり諸手もろてを挙げる千万とても非常大層大変極めて至ってはなはすこぶごくいとも実にまことに大いにいたく・ひどく・恐ろしくすごくものすごく滅法めっぽうさんざっぱらさんざんさんざこってりめためた異常極度桁外れ桁違い並み外れ格段著しい甚だしいすごいものすごい計り知れない恐ろしいひどいえらい途方もない途轍とてつもないこの上ない筆舌ひつぜつに尽くしがたい言語げんごに絶する言語ごんごに絶する並並ならぬ一方ひとかたならずめちゃくちゃめちゃめっちゃ底抜け恐るべきこよなく殊の外ひときわ特段度外れ法外べらぼうとんでもない類がない比類ない無上よっぽど度が過ぎる行き過ぎどえらい飛び切り段違い圧倒的かけ離れる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「至極」の意味・読み・例文・類語

し‐ごく【至極】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. ( 形動 ) 最上のこと。この上ないこと。また、そのさま。至上。他の語に付いて接尾語のように用いられることもある。
      1. [初出の実例]「又説 愛無子、至極大聖尚有子之心、况乎世間蒼生誰不子乎」(出典:万葉集(8C後)五・八〇二・序文)
      2. 「ソノヒト コレワ ラウゼキ xigocuna(シゴクナ) ヤツヂャト ユウテ」(出典:天草本伊曾保(1593)イソポの生涯の事)
      3. [その他の文献]〔荘子‐逍遙遊〕
    2. ( ━する ) 最後にたどりついたところ。最上の境地。また、そこに到達すること。頂点に達すること。
      1. [初出の実例]「立榊八卦於供御料田之条、無双重科也。此等依至極、寄事於大門法眼歟」(出典:兼仲卿記弘安六年冬巻裏文書‐弘安二年(1279)八月・大神宮使・祭主使連署注進状)
      2. 「その物その物の物まねばかりをし分けたるを、しごくと心得て、姿を忘るるゆへに、左右なく幽玄の堺に入らず」(出典:花鏡(1424)幽玄之入事)
    3. ( ━する ) 最終的な決定をすること。決着
      1. [初出の実例]「於公家御沙汰者、令至極之上者、争不恨申哉」(出典:園太暦‐康永三年(1344)七月二四日)
    4. それ以上は譲れないという限界。ぎりぎりの線。この上ない決意。
      1. [初出の実例]「たとひ一命にかへても爰は出さぬ至極(シコク)なり」(出典:浮世草子武道伝来記(1687)一)
    5. 感きわまること。感動が頂点に達すること。
      1. [初出の実例]「至極(シゴク)のなみだにしづめば」(出典:浮世草子・俗つれづれ(1695)二)
    6. ( 形動 ) きわめてもっともなこと。理にかなっていること。また、そのさま。至当。
      1. [初出の実例]「世之介是を聞もあへず、死出立(しにでたち)にてかけこみしを、おのおの懸合(かけあはせ)義理をつめ、至極(シゴク)にあつかひ」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)六)
    7. ( ━する ) もっともだと思って了承すること。納得すること。
      1. [初出の実例]「君の思し召し立つ処、道理尤も至極(しコク)せり」(出典:源平盛衰記(14C前)六)
      2. 「『母が言葉をひとつも忘れな』といへば、娘も是を至極(シゴク)して」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)二)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙
    1. この上なく。きわめて。非常に。いたって。まったく。完全に。
      1. [初出の実例]「食後の菓子まで、至極せめくひて」(出典:梵舜本沙石集(1283)三)
      2. 「我党にゃア至極(シゴク)便利だ」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一二)
    2. かならず。きまって。
      1. [初出の実例]「此上者面をは不国之由雖申之、於所行者至極国方に相随者哉」(出典:政基公旅引付‐文亀三年(1503)七月三〇日)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「至極」の読み・字形・画数・意味

【至極】しきよく

はて。〔荘子、逍遥遊〕天のたるは其れ正色なるか。其のくして至極する無ければか。其の下をるや、亦た是(かく)の(ごと)きのみ。

字通「至」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

仕事納

〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...

仕事納の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android