名誉(読み)めいよ

精選版 日本国語大辞典 「名誉」の意味・読み・例文・類語

めい‐よ【名誉】

[1] 〘名〙
① (形動) 人の才能や特定の技能などに関するすぐれた評判。よい評判を得ていること。また、そのさま。
江談抄(1111頃)五「才芸名誉殆過於中古之人
太平記(14C後)八「西国名誉(メイヨ)の打物の上手と、北国無双の馬上の達者と」 〔史記‐呂不韋伝〕
② (形動) 事の善悪にかかわりなく、評判の高いこと。程度のはなはだしいこと。また、そのさま。
※平治(1220頃か)中「かくれなき強盗、名誉の大剛の者にて候」
※太平記(14C後)八「三塔名誉(メイヨ)悪僧あり」
③ (━する) 評判になること。名声を博すること。また、そのようなはたらき。
※宇治拾遺(1221頃)一五「それより後の千金と云こと名誉せり」
※正徹物語(1448‐50頃)下「其より前もいか程か哥を読みしかども、名誉せらるる事は、四十以後成りし也」
④ 個人、または集団の人格に対して、社会的に承認された価値。また、それに対する自覚。体面。面目
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「貿易の道に於て名誉の〈所謂愛顧信用をいふ〉貴きこと、万金の資本にも敵し難し」
地位や職名を表わす語に冠して用い、その人に敬意を表し、また、その功労をたたえるために贈られる称号とする。「名誉市民」「名誉教授」など。
⑥ (形動) 世にまれなこと。奇特なこと。不思議なこと。また、そのさま。めいよう。めんよ。めんよう。
※仮名草子・浮世物語(1665頃)二「古(いにしへ)篠田の杜には名誉(メイヨ)の狐ありて、往来の人を化すと言へり」
[2] 〘副〙 (⑥から転じて) 事態がよく理解できなくて、いぶかるさまを表わす語。どういうわけか。不思議に。奇妙に。めいよう。
※三体詩幻雲抄(1527)「是も名誉胡乱な事を云ほどに不信ぞ」
浮世草子好色一代男(1682)六「(ざ)配にきやかに床しめやかに、名誉(メイヨ)、おもひを残させ」

めい‐よう【名誉】

(「めいよ(名誉)」の変化した語)
[1] 〘名〙 (形動) =めいよ(名誉)(一)⑥
御伽草子御曹子島渡(室町時代物語集所収)(室町末)「いつれもめいやうのふねなるか、〈略〉あめふれども、ぬれもせず」
[2] 〘副〙 =めいよ(名誉)(二)
咄本・喜美賀楽寿(1777)下女「あの御客さんハ、めいよう悪いくせな。いつでも長ばなしをなさります」
[補注]のちに「めんよう」となり、「面妖」の字を当てることもある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「名誉」の意味・読み・例文・類語

めい‐よ【名誉】

[名・形動]
能力や行為について、すぐれた評価を得ていること。また、そのさま。「名誉ある地位」「名誉な賞」
社会的に認められている、その個人または集団の人格的価値。体面。面目。「名誉を回復する」「名誉を傷つける」「名誉挽回
身分や職名を表す語に付けて、その人の功労をたたえて贈る称号とするもの。「名誉会長」
有名であること。評判が高いこと。また、そのさま。よいことにも悪いことにもいう。
「かくれなき強盗―の大剛の者にて候」〈古活字本平治・中〉
珍しいこと。また、そのさま。不思議。
「駿河の二郎は、―なことの、夏冬なしにふんどし嫌ひ」〈浮・諸国ばなし・一〉
[副]どういうわけか。不思議に。
「ここにて―悪心変はりて」〈浮・置土産・一〉
[補説]作品名別項。→名誉
[類語](1ほま誇り栄誉光栄栄光光輝栄冠栄名声誉名声名聞美名盛名令名英名勇名雷名威名英名佳名驍名ぎょうめい高名嬌名好評有名著名名うて面目めんぼく名利余栄家名いさお勲功巨歩偉功殊勲誉望盛名雷名功名功成り名遂げる死に花死に花を咲かせる/(2名聞めいぶん面目体面面子メンツ一分いちぶん沽券こけん声価信用信望しん信頼信任人望定評評判暖簾のれん覚え名望声望徳望人気魅力受け見栄みえ面皮世間体体裁肩身

めい‐よう【名誉】

《「めいよ(名誉)」の音変化。のちに「面妖」とも当てて書く》
[名・形動ナリ]めいよ(名誉)5」に同じ。
「いづれも―の船なるが」〈伽・御曹子島渡〉
[副]めいよ(名誉)」に同じ。
「―、今の通は下戸げこさ」〈洒・通言総籬

めいよ【名誉】[戯曲]

《原題、〈ドイツ〉Die Ehreズーダーマンの戯曲。1889年、ベルリンにて自由劇場が初演、大成功をおさめた出世作。

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普及版 字通 「名誉」の読み・字形・画数・意味

【名誉】めいよ

ほまれ。〔史記、張耳陳余伝論賛〕名譽高しと雖も、んなりと雖も、由(よ)る、殆(ほとん)ど(呉の)太伯・陵の季子と異なり。

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