ジオパーク(英語表記)geopark

翻訳|geopark

デジタル大辞泉 「ジオパーク」の意味・読み・例文・類語

ジオパーク(geopark)

《geology(地質学)+park(公園)からの造語》科学的・文化的に貴重な地質遺産を含む自然公園。地域の地史地質現象を示す地質遺産を保全し、地球科学や環境問題の教育・普及活動を行うとともに、観光資源として地域の活性化を目指し、また、地質災害に対する理解や防災への取り組みにも貢献するものとして期待されている。2004年、ユネスコの支援により世界ジオパークネットワークが発足。日本でも平成20年(2008)に日本ジオパーク委員会が設立され、国内のジオパーク認定、および世界ジオパークへの加盟申請などを行っている。
[補説]国内のジオパーク認定地一覧(46地域、令和5年現在)
世界ジオパーク
洞爺湖有珠山(北海道)
アポイ岳(北海道)
糸魚川(新潟)
白山手取川(石川)
伊豆半島(静岡)
山陰海岸(京都・兵庫・鳥取)
隠岐(島根)
室戸(高知)
島原半島(長崎)
阿蘇(熊本)

日本ジオパーク
白滝(北海道)
十勝岳(北海道)
とかち鹿追(北海道)
三笠(北海道)
下北(青森)
三陸(青森・岩手・宮城)
栗駒山麓(宮城)
八峰白神(秋田)
男鹿半島・大潟(秋田)
ゆざわ(秋田)
鳥海山飛鳥(山形・秋田)
佐渡(新潟)
苗場山麓(新潟・長野)
磐梯山(福島)
筑波山地域(茨城)
浅間山北麓(群馬)
下仁田(群馬)
秩父(埼玉)
銚子(千葉)
伊豆大島(東京)
箱根(神奈川)
南アルプス(長野)
立山黒部(富山)
恐竜渓谷ふくい勝山(福井)
南紀熊野(和歌山)
島根半島宍道湖中海(島根)
(山口)
Mine秋吉台(山口)
四国西予(愛媛)
土佐清水(高知)
五島列島〈下五島エリア〉(長崎)
おおいた姫島(大分)
おおいた豊後大野(大分)
霧島(宮崎・鹿児島)
桜島錦江湾(鹿児島)
三島村・鬼界カルデラ(鹿児島)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジオパーク」の意味・わかりやすい解説

ジオパーク
じおぱーく
geopark

地球科学分野で重要な、地球の諸現象や変遷の歴史をとどめた固有の地層や地形を有し、生態学や文化的に貴重な遺産も含んだ地域のこと。ジオパークは地質学(geology)と公園(park)を組み合わせた造語で、「大地の公園」「大地の遺産」「地質遺産」などとも表現される。2001年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)で世界各国のジオパーク推進活動の支援が決定したことを受け、2004年に世界ジオパークネットワークGlobal Geoparks Network(略称GGN)が設立された。各国から加盟申請されたジオパークのなかからGGNが世界ジオパークを認定する。

 ジオパークの活動の一つは自然や環境の保全であるが、地球科学や環境問題、防災などといったさまざまな観点から、自然遺産を教育や観光に活用することを重視している。そのため、認定を受けた地域では環境の保全活動とあわせ、観察のための通路・案内板の設置や、講習を受けたガイドの育成などを行う。地元高校で「ジオパーク学」の授業を始めた地域もあり、ジオツーリズム(地球のあらゆるものを楽しみながら学ぶ)を通じた持続可能な地域づくりが進められる。2018年4月の時点でGGNが認定している世界ジオパークは、38か国、140地域(うち、日本は9地域)である。

 日本では、日本ジオパーク委員会が、世界ジオパークの前段階にあたる日本ジオパークの認定と、日本ジオパークのなかから世界ジオパークへ加盟申請する地域の選定を行う。ジオパークを目ざす地域は、まずその活動を支援するために2007年(平成19)に設立されたNPO法人日本ジオパークネットワークJapanese Geoparks Network(略称JGN)に参加し、日本ジオパークに認定されるための審査を受ける。日本ジオパークに認定された地域は、JGNの支援を受けながら国際的な活動を行い、世界ジオパークへの加盟を目ざす。

[編集部 2018年4月18日]

日本にある世界ジオパーク

(カッコ内の数字は世界ジオパークに認定された年)
(1)洞爺湖有珠山ジオパーク(とうやこうすざんじおぱーく)(北海道、2009) 火山により変動する大地と人間の共生がテーマ。

(2)糸魚川ジオパーク(いといがわじおぱーく)(新潟県、2009) 静岡構造線と日本最古の翡翠(ひすい)文化がある。

(3)島原半島ジオパーク(長崎県、2009) 430万年前から続く火山活動が生み出した、火山と人間の共生がテーマ。

(4)山陰海岸ジオパーク(京都府・兵庫県・鳥取県、2010) 2500万年前にさかのぼる地形・地質の博物館といわれる。

(5)室戸ジオパーク(高知県、2011) 白亜紀から続く地質・地形と珍しい植物がみられる。

(6)隠岐ジオパーク(おきじおぱーく)(島根県、2013) 日本海形成の痕跡(こんせき)を凝縮して体感できる。

(7)阿蘇ジオパーク(あそじおぱーく)(熊本県、2014) 阿蘇カルデラを中心とする火山大地の成り立ちと、人とのかかわりについて理解を深めることがテーマ。

(8)アポイ岳ジオパーク(北海道、2015) 地殻変動によって現れた橄欖(かんらん)岩が形づくるアポイ岳を中心とする、大地と自然と人々をつなぐ物語がテーマ。

(9)伊豆半島ジオパーク(静岡県、2018) 本州で唯一フィリピン海プレートの上に位置する伊豆半島。テーマは「南からきた火山の贈り物」。

[編集部 2018年4月18日]

日本ジオパークの認定地域

(認定順、2018年4月時点で上記の9地域も含め43地域)
(1)南アルプス(中央構造線エリア)ジオパーク(長野県、2008)
(2)恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク(福井県、2009)
(3)白滝ジオパーク(北海道、2010)
(4)伊豆大島ジオパーク(東京都、2010)
(5)霧島ジオパーク(宮崎県・鹿児島県、2010)
(6)男鹿(おが)半島・大潟(おおがた)ジオパーク(秋田県、2011)
(7)磐梯山(ばんだいさん)ジオパーク(福島県、2011)
(8)下仁田(しもにた)ジオパーク(群馬県、2011)
(9)秩父(ちちぶ)ジオパーク(埼玉県、2011)
(10)白山手取川(はくさんてどりがわ)ジオパーク(石川県、2011)
(11)ゆざわジオパーク(秋田県、2012)
(12)箱根ジオパーク(神奈川県、2012)
(13)八峰白神(はっぽうしらかみ)ジオパーク(秋田県、2012)
(14)銚子(ちょうし)ジオパーク(千葉県、2012)
(15)三笠ジオパーク(北海道、2013)
(16)三陸ジオパーク(青森県・岩手県・宮城県、2013)
(17)佐渡ジオパーク(新潟県、2013)
(18)四国西予(せいよ)ジオパーク(愛媛県、2013)
(19)おおいた姫島ジオパーク(大分県、2013)
(20)おおいた豊後大野(ぶんごおおの)ジオパーク(大分県、2013)
(21)桜島・錦江湾(きんこうわん)ジオパーク(鹿児島県、2013)
(22)とかち鹿追(しかおい)ジオパーク(北海道、2013)
(23)立山黒部ジオパーク(富山県、2014)
(24)南紀熊野ジオパーク(和歌山県、2014)
(25)天草ジオパーク(熊本県、2014)
(26)苗場山麓(なえばさんろく)ジオパーク(新潟県・長野県、2014)
(27)栗駒山麓(くりこまさんろく)ジオパーク(宮城県、2015)
(28)Mine秋吉台ジオパーク(山口県、2015)
(29)三島村・鬼界(きかい)カルデラジオパーク(鹿児島県、2015)
(30)下北ジオパーク(青森県、2016)
(31)筑波山地域ジオパーク(茨城県、2016)
(32)浅間山北麓ジオパーク(群馬県、2016)
(33)鳥海山・飛島ジオパーク(山形県・秋田県、2016)
(34)島根半島・宍道湖中海(しんじこなかうみ)ジオパーク(島根県、2017)
[編集部 2018年4月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジオパーク」の意味・わかりやすい解説

ジオパーク
Geopark

地球の活動の様子をとどめ地球科学的に重要な地質や地形をテーマにした,自然に親しむための公園。地質遺産と訳されることがある。火山,鍾乳洞(石灰洞),侵食地形などの地球科学的に重要な景観に対し,地球科学者を中心にさまざまな団体が,その保全,教育,観光利用に関する活動を行ないつつ,地域の持続可能な発展を目指す仕組みを構築することを目的とする。2004年に国際連合教育科学文化機関 UNESCOの支援のもと発足した世界ジオパークネットワーク GGNが,各国のジオパーク委員会による推薦地域を審査し,条件を備えた地域を世界ジオパークに認定している。認定を受けるにあたっては,(1) 地球科学者の協力を得て,地域の人々が地形や地質の遺産的価値を理解し保全すること,(2) 地域の子供たちや観光客に地質遺産の価値を伝える教育活動を行なうこと,(3) 地質遺産を楽しむことを目的とするジオツーリズムの推進により,地域の経済の持続的な発展を目指すことが求められる。日本国内では,認定機関として 2008年に日本ジオパーク委員会 JGCが発足した。また,JGCに認定された日本ジオパーク,および日本ジオパークを目指す地域協議会などにより,日本ジオパークネットワークが設立されている。2009年,JGCの推薦を受けた北海道の洞爺湖有珠山ジオパーク(→洞爺湖有珠山),新潟県の糸魚川ジオパーク(→糸魚川-静岡構造線),長崎県の島原半島ジオパーク(→島原半島)が日本初の世界ジオパークに認定された。

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知恵蔵 「ジオパーク」の解説

ジオパーク

ユネスコが支援するプロジェクトで、保存できる重要な地質遺産をもち、地質現象のみならず考古学的・生態学的・歴史文化的な価値もあるサイトを含む地域を、社会・経済発展を促進させながら地球科学や環境問題の教育に役立てることを目的とする活動。ユネスコが認証した地域をもとに、世界ジオパークネットワークがつくられている。ユネスコの世界遺産とは、地質遺産を保全して教育に資することでは似ているが、持続可能な開発を保証する点で異なる。いくつかの国際会議における要望を受けて、2004年2月にユネスコ本部が「ユネスコの支援を受けるためのジオパーク運営ガイドライン」を制定して、世界から申請されるジオパークの承認を始めた。07年現在、中国のジオパークが最も多くて18を数え、イギリスの7、ドイツの6、スペインの4、フランスの2などに加え、イタリア、オーストリア、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、ノルウェー、イラン、ブラジル、マレーシア、クロアチアなど53カ所が承認されている。日本でも、関心をもっている地方自治体は多く、最近になってジオパーク連絡協議会が設立され、本格的な活動が始まりつつある。関連して国内では「日本の地質百選」が選定され、出版物が刊行されている。

(斎藤靖二 神奈川県立生命の星・地球博物館館長 / 2008年)

ジオパーク

貴重な地層や地形を保存したうえ、観察路などを整え、ガイドなどが案内する仕組みを整えた地域を指す。「ジオ」は、地球に関係する接頭語。ユネスコ(国連教育科学文化機関)の支援で2004年に世界ジオパークネットワーク(事務局・パリ)が設立され、欧州や中国を中心に約50カ所が加盟している。加盟には、歴史、文化、生態系などへの広がりや運営組織の存在などの条件があり、日本では北海道・洞爺湖周辺や、山陰海岸などで加盟を目指す動きがある。世界遺産とは違って条約には基づかず、教育や観光、地域経済に積極的に生かす狙いがある点も異なる。

(高橋真理子 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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