つと(読み)ツト

デジタル大辞泉 「つと」の意味・読み・例文・類語

つ‐と

[副]
ある動作をすばやく、または、いきなりするさま。さっと。急に。不意に。「つと立ち止まる」
瀬川は―席を立って降りると」〈荷風腕くらべ
動かないである状態を続けるさま。じっと。
面影に―添ひておぼさるるにも」〈桐壺
いちだんと力をこめるさま。ぐっと。
「例はことにし固めなどもせぬを―鎖して人の音もせず」〈・少女〉
[類語]がばとがばっとむっくとむっくりむくりすっくしゃんとしゃっきりついとすいとすっとさっとぱっとふとふっと不意にわかふいとひょっこり打ち付けぶっつけ出し抜け突然唐突短兵急急遽きゅうきょ忽然こつぜん俄然突如いきなりついついついひょっとひょいはた思わず思わず知らず思いがけずはしなくはしなくも図らず図らずもやにわに時ならずたちま卒然突発的発作的反射的やぶから棒青天の霹靂へきれき寝耳に水はた身軽い身軽軽軽かるがる軽快かろやか簡捷かんしょうはしこいすばしこい素早い手早い敏速敏活迅速敏捷びんしょう手ばしこい手早速やか速い足早早足小走り機敏一瀉いっしゃ千里急ピッチ矢の如しはかばかしい目にも留まらぬひらりひょいひょいぴょんぴょんぴょんてきぱきしゃきしゃききびきびずんずんクイックスピーディーハイペースちゃちゃとちゃちゃっとさっさとっととつっとすたすた

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「つと」の意味・読み・例文・類語

つ‐と

  1. 〘 副詞 〙
  2. 動かないで、ある状態をずっと続けるさまを表わす語。じっと。
    1. [初出の実例]「誰と聞えし人の子ぞ。もし心ならで参り来ずとも、つと思ひとりてなむあるべき」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
  3. 勢いよくすばやいさまを表わす語。さっと。ふと。急に。つっと。
    1. [初出の実例]「むつかり給ふを、宮きこしめして、女ぎみをつとかきよせて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)
  4. すきまなく密着したさまを表わす語。ぴたっと。ぴったりと。ひたと。
    1. [初出の実例]「御胸つとふたがりて、つゆまどろまれず、明かしかねさせたまふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のつとの言及

【髪形】より

…貞享(1684‐88)のころに髱刺(たぼさし)というものが生まれ,これによって技巧的な髱が結われ,優美なカーブを描く洗練された髱として,セキレイの長い尾の形をした〈せきれい髱〉,カモメの舞い飛ぶ姿からとった〈かもめ髱〉などの名で呼ばれた。関西では髱を〈つと〉と呼んだ。髷は前期からの兵庫髷をはじめとして島田髷系統,笄(こうがい)髷系統が発達した。…

【包み】より

…〈包む〉という語は〈苞(つと)〉と語源を同じくするが,〈苞〉とはわらなどを束ねてその両端を縛り,中間部で物をくるむもの(藁苞(わらづと))であり,後には贈物や土産品の意味(家苞(いえづと))にも使われるようになった。また心理的方面においては〈包む〉は〈慎しむ〉に通じて〈隠す〉〈秘める〉〈はばかる〉といった意味合いを含み,ことに儀礼的局面におけるさまざまな〈包み〉の技法の心理的背景となってきた。…

【土産】より

…旅先や外出先でその土地の産物を求めて帰り,家族や餞別(せんべつ)をくれた者などに配る品,また人を訪問する際に持参するいわゆる手みやげをもいう。古くはつと(苞)と称し,〈家づと〉〈都のつと〉などと用いた。つとは納豆を包んだりするわらづとなどにその名をとどめているように,元は持ち運びに便利な包物のことを指した。…

※「つと」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android