忽ち(読み)タチマチ

デジタル大辞泉 「忽ち」の意味・読み・例文・類語

たちまち【×忽ち】

[副]《「立ち待ち」の意からか》
非常に短い時間のうち動作が行われるさま。すぐ。即刻。「うわさ忽ち広がる」「飲めば忽ち効く薬」「忽ちのうちに売り尽くす」
思いがけなく、ある事態が発生するさま。にわかに。急に。「空が忽ち曇って雨が降り出した」
多く「たちまちに」の形で)現に。確かに。まさに。
閻魔王の所にゐて至るに、―に一人のやむごとなき僧まします」〈今昔・六・一一〉
[類語]急激急速ハイピッチ急テンポ即刻即座即時即席即製同時言下直後直ちに早速すぐすぐさまとっさに俄かふいとひょっこり打ち付けぶっつけ出し抜け突然唐突短兵急急遽きゅうきょ不意忽然こつぜん俄然突如いきなりふとふっとついついついついとつとひょっとひょいはた思わず思わず知らず思いがけずはしなくはしなくも図らず図らずもやにわに時ならず卒然突発的発作的反射的やぶから棒青天の霹靂へきれき寝耳に水折り返しすかさず立ちどころに途端右から左瞬く間あっという間時を移さず間髪をれずリアルタイム束の間時の間刹那一時いっとき一時ひととき半時寸陰短時間一時一時的かりそめ短日月短時日一朝一朝一夕寸刻寸時寸秒片時かたとき瞬時瞬間一瞬数刻たまゆら須臾しゅゆ電光石火はかない迅速速やか刻刻刻一刻時時刻刻次第次第に矢継ぎ早

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精選版 日本国語大辞典 「忽ち」の意味・読み・例文・類語

たち‐まち【忽・乍・儵】

  1. 〘 副詞 〙 ( 古くは多く「に」を伴って用いる )
  2. 動作がきわめて短い時間に行なわれるさまを示す。またたく間に。すぐ。
    1. [初出の実例]「立ち走り 叫び袖振り 臥(こ)いまろび 足ずりしつつ 頓(たちまちに) 心消失せぬ 若かりし 膚も皺(しわ)みぬ 黒かりし 髪も白けぬ」(出典万葉集(8C後)九・一七四〇)
    2. 「又たちまちの我心のみだれにまかせて、あながちなる心をつかひてのち心安くしもはあらざらむものから」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
    3. 「はからざる病を受けて、忽にこの世を去らんとする時にこそ」(出典:徒然草(1331頃)四九)
  3. ある動作や状態が、予期しないで突然起こるさまを示す。にわかに。急に。ふと。
    1. [初出の実例]「普光寺僧栖玄徳〈略〉奄然(タチマチニ)坐化せり」(出典:天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃))
    2. 「あやしき菰にて家の四方をくるみ廻せば、忽、常闇の世界とはなれりけり」(出典:春甫他宛一茶書簡‐文政三年(1820)一二月八日)
  4. 現実の様子をさし示す。実際に。現に。まさに。
    1. [初出の実例]「汝が身は既に不浄に成りにたり。我が身忽に不浄に非ずと云へども、思えば亦、不浄也」(出典:今昔物語集(1120頃か)六)

忽ちの語誌

( 1 )中古の和文資料では類義の「にはかに」の方が多く用いられているが、中世和漢混淆文になると逆に「たちまちに」の方が多くなる。
( 2 )意味は「にはかに」にはなく、「今昔物語集」以降の説話に限られるようである。

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