デジタル大辞泉
「居」の意味・読み・例文・類語
い〔ゐ〕【居】
《動詞「い(居)る」の連用形から》
1 居ること。そこにあること。「居間」「居場所」「長居」
2 座ること。座っていること。「立ち居振る舞い」
う【▽居/×坐】
[動ワ上二]《動詞「ゐ(居)る」(上一)の古形で終止形だけが残存するが、上二段活用と考えられる》すわる。いる。
「たまきはる我が山の上に立つ霞立つともうとも君がまにまに」〈万・一九一二〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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いるゐる【居】
- 〘 自動詞 ア行上一(ワ上一) 〙 動く物がある場所にとどまって存在する。また、低い状態になる。
- [ 一 ] 人や動物の場合。
- ① ある場所に存在する。
- [初出の実例]「琴がみに 来(き)謂屡(ヰル)影媛(かげひめ) 玉ならば 吾(あ)が欲(ほ)る玉の 鰒白珠(あはびしらたま)」(出典:日本書紀(720)武烈即位前・歌謡)
- 「ミヤコ ニ y(イ) マラスル ナラバ、マタ ウキメ ヲモ ミョウズレバ」(出典:天草本平家(1592)二)
- ② 低い姿勢をとる。腰をおろす。すわる。⇔立つ。
- [初出の実例]「立ちて為(ヰ)て 見れどもあやし」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇〇三)
- 「立つもはしたゐるもはしたにてゐ給へり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ③ (鳥、虫など飛ぶものが)ある物にじっとつかまる。とまる。
- [初出の実例]「かぐはし 花橘は 上枝(ほつえ)は 鳥韋(ヰ)枯らし 下枝(しづえ)は 人取り枯らし」(出典:古事記(712)中・歌謡)
- 「鳶(とび)ゐさせじとて縄をはられたりけるを」(出典:徒然草(1331頃)一〇)
- ④ ある地位につく。
- [初出の実例]「御女(むすめ)の女御、后にゐ給ひぬ」(出典:落窪物語(10C後)四)
- ⑤ ある場所に居を定める。住む。また、外出しないで家にとどまる。在宅する。
- [初出の実例]「京になんあやしき所にこのころ来てゐたりける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蜻蛉)
- ⑥ ある種類の人間が、抽象的な意味で存在する。ある。
- [初出の実例]「別に道に親密な人がゐるやうに思って、それを尊敬する人がある」(出典:寒山拾得(1916)〈森鴎外〉)
- ⑦ ある人にとって、親族・上司・部下などの社会的関係のもとで、ある人が存在する。
- [初出の実例]「自分には子供が居(ヰ)無いので」(出典:茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉十三年目)
- [ 二 ] 植物や無生物の場合。
- ① (かすみ、雲、ちりなど動くことのあるものが)動かないである。ある物の上にとまって存在する。⇔立つ。
- [初出の実例]「纏向(まきむく)の病足(あなし)の山に雲居(ゐ)つつ雨は降れどもぬれつつそ来し」(出典:万葉集(8C後)一二・三一二六)
- ② (舟などが)砂について動かないである。停泊する。泊まる。
- [初出の実例]「みさご居る渚(す)に居(ゐる)舟の漕ぎ出なばうら恋しけむ後は会ひぬとも」(出典:万葉集(8C後)一二・三二〇三)
- ③ (水草、氷などが)平らに生じる。
- [初出の実例]「池などある所も水草(みくさ)ゐ」(出典:枕草子(10C終)一七八)
- 「つららゐてみがける影の見ゆる哉まことにいまや玉川の水〈崇徳院〉」(出典:千載和歌集(1187)冬・四四二)
- ④ (ふくらみのあったものが)平らになる。
- [初出の実例]「たてばたつゐればまたゐる吹く風と波とは思ふどちにやあるらん」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月一五日)
- ⑤ ( 「腹が居る」の形で ) 怒りがおさまる。しずまる。→癒(い)る。
- [初出の実例]「梶原この詞に腹がゐて」(出典:平家物語(13C前)九)
- 「苦痛させねば腹がゐぬ」(出典:浄瑠璃・菅原伝授手習鑑(1746)二)
- ⑥ ( 「腹を居る」の形で他動詞のように用い ) 怒りをしずめる。
- [初出の実例]「兵庫で足を黒犬にくらはれたる、無念の腹を居んとて蹴た」(出典:咄本・醒睡笑(1628)一)
- [ 三 ] 補助動詞として用いられる。
- (イ) ( 動詞の連用形、または、それに助詞「て」を添えた形に付いて ) 動作、作用、状態の継続、進行を表わす。
- [初出の実例]「和泉国八木郷といふ所に逗留してこそゐたりけれ」(出典:平家物語(13C前)一二)
- 「物のかくれよりしばし見ゐたるに」(出典:徒然草(1331頃)三二)
- (ロ) ( 「…ずにいる」「…んでいる」「…ないでいる」の形で ) ある動作、作用が行なわれない状態の継続を表わす。
- [初出の実例]「丹次ばかり馬道に残って何ンにもせずにいるのさ」(出典:洒落本・中洲の花美(1789)小通の登楼)
居の語誌
( 1 )上代には、「ゐる」に当たる終止形に「う」があったと考えられる。→「う(坐)」の語誌。
( 2 )近世には、次のように「をり(をる)」と同じような活用をさせた例がある。「もししったきゃくがゐらば、をしうりせんと」〔洒落本・傾城買四十八手‐見ぬかれた手〕
( 3 )補助動詞の場合、近世上方語では主語が有情物の場合は「ている」、非情物の場合は「てある」が付く傾向が強い。一方、近世後期以降の江戸語では主語の有情・非情にかかわらず「ている」が付き、「てある」はもっぱら他動詞に付けられるようになり、現在に至っている。
きょ【居】
- 〘 名詞 〙
- ① 腰をおろすところ。すわる場所。
- [初出の実例]「男女居(キョ)を同ふするは甚だ恠(あやし)むべしと」(出典:花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉五)
- [その他の文献]〔史記‐五帝本紀〕
- ② すまい。すみか。住居。居所。
- [初出の実例]「其人常の生なし、其家常の居なし」(出典:海道記(1223頃)木瀬川より竹の下)
- 「一家は東京に居を構えた」(出典:菊枕(1953)〈松本清張〉一)
- [その他の文献]〔書経‐胤征〕
いゐ【居】
- 〘 名詞 〙 ( 動詞「いる(居)」の連用形の名詞化 ) 居ること。座ること。また、その座席。「家居」「里居」「長居」などのように、多くは他の語と熟して用いられる。
- [初出の実例]「ゐもさだまらず、ここかしこに立ちさまよひあそびたるも」(出典:能因本枕(10C終)四二)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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「居」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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