出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
ウパニシャッドの思想家ウッダーラカ・アールニによれば,この宇宙ははじめ〈有sat〉のみであったが,それがみずからの意思で火を,火は水を,水は食物(=地)を創造した。〈有〉はその3者の中にアートマン(自我,本体)として入り,3者を混合して名称と形態(現象界)を開展した。熟睡時と死時には逆をたどって〈有〉に帰入するが,凡人はそれを知らないで世界の多様性に翻弄される。この〈有〉は一般にはブラフマン(梵)と称され,上述のごとく実はアートマンと同一である。なお,後世のベーダーンタ学派では,仏教の中観派の用法をまねて,ブラフマン(=アートマン)を勝義(真実)有,現象界のものを世俗有と言い分ける。仏教一般では,生死輪廻する主体としての〈有bhava〉を想定し,特に死後再生するまでの間を〈中有(中陰)〉という。またヒンドゥー教の聖典であるプラーナ文献でも,ウッダーラカ・アールニの〈有〉をうけて,天地開闢の始源的存在を〈有〉に帰している。
執筆者:宮元 啓一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…その思想はおもに《チャーンドーギヤ・ウパニシャッドChāndogya‐upaniṣad》の特に第6章に,わが子シュベータケートゥへの教えというかたちで伝えられている。それによれば,太初,宇宙は〈有(う)sat〉のみであったが,〈有〉は火・水・食物を創造し,その3者の中にアートマン(自我)として入りこみ,3者を混合して名称nāmaと形態rūpa(現象界)を開展したという。人が死ねば,この逆をたどって〈有〉に帰入するという。…
…紀元前5世紀ころインドに出たシャーキャムニ,すなわち釈迦(しやか)によって創唱された教えで,キリスト教,イスラムと並ぶ世界三大宗教の一つ。現在,(1)スリランカ,タイなどの東南アジア諸国,(2)中国,朝鮮,日本などの東アジア諸国,(3)チベット,モンゴルなどの内陸アジア諸地域,などを中心に約5億人の教徒を有するほか,アメリカやヨーロッパにも教徒や思想的共鳴者を得つつある。(1)は前3世紀に伝道されたスリランカを中心に広まった南伝仏教(南方仏教)で,パーリ語仏典を用いる上座部仏教,(2)はインド北西部から西域(中央アジア)を経て広まった北伝仏教で,漢訳仏典を基本とする大乗仏教,(3)は後期にネパールなどを経て伝わった大乗仏教で,チベット語訳の仏典を用いるなど,これらの諸地域の仏教は,歴史と伝統を異にし,教義や教団の形態もさまざまであるが,いずれもみな,教祖釈迦をブッダ(仏)として崇拝し,その教え(法)を聞き,禅定(ぜんじよう)などの実践修行によって悟りを得,解脱(げだつ)することを目標とする点では一致している。…
※「有」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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