たく‐さん【沢山】
[1] 〘名〙 (形動)
※
平家(13C前)八「宿々に十石づつの米ををかる。たくさんなるによって、
施行にひきけるとぞ聞えし」
② 十分なこと。また、十分でそれ以上はいらないさま。
※
翁問答(1650)上「愚痴不肖は世界にみちみちて沢山
(タクサン)なり」
※
滑稽本・
浮世風呂(1809‐13)二「夫でも御惣領がお独ござらッしゃれば沢山
(タクサン)でございます」
③ 必要以上に多すぎること。転じて、大事にしないこと。また、そのさま。
粗略。ぞんざい。
※
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「
竹の子を根引にしてたくさんにもてあつかう事、惜しき事ぢゃ」
[2] 〘語素〙 (
名詞に付いて、
多く「…だくさん」の形で) それが十分であったり、十分すぎたりするさまを表わす。「盛りだくさん」「子だくさん」など。
※玉塵抄(1563)六「のしのしとけたかう材木にあかせて物だくさんにつくった家の心ぞ」
[
補注]「さは
やま」を「沢山」と書いて音読したものと考える説がある。「さは」は古くから「天の下に国はしも沢にあれども」〔
万葉‐三六〕のように用いられ、「やま」と同様に数の多いことを表わす。しかし、「さはやま」の例が見られるのは、
近世に入ってからであるため、「さはやま」はむしろ「沢山」を訓読したものという
可能性も考えられる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「沢山」の意味・読み・例文・類語
さわ‐やま〔さは‐〕【沢山/▽多山】
[形動ナリ]《「沢山」の訓読み。江戸時代、多く女性が用いた語》数や程度のはなはだしいさま。たくさん。たいへん。
「―にかろき奉公人に、大壁六平といへる男あり」〈浮・武道伝来記・四〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例