(読み)タン

デジタル大辞泉 「丹」の意味・読み・例文・類語

たん【丹】

硫黄水銀の化合した赤土辰砂しんしゃ。また、その色。に。
黄色みを帯びた赤色顔料日本画に用いる。鉛の酸化物で、人工的に製造される。鉛丹。黄丹。
薬。特に、道家における長寿・不老不死の薬。
「―を練り、真を修し、天地とともに寿いのちながしとぞ」〈読・弓張月・続〉
[類語]真っ赤赤色せきしょく紅色こうしょくくれないべに真紅しんく鮮紅せんこう緋色しゅあけあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないレッドスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

に【丹】

《「」と同語原》
赤い色。丹色。「塗りの鳥居」
赤い色の顔料に用いる赤土。
丹生にふさと昔時むかしの人、此の山のすなごを取りて―にてき」〈豊後国風土記
[類語](1真っ赤赤色せきしょく紅色こうしょくくれないべに真紅しんく鮮紅せんこう緋色しゅあけあかね薔薇ばら小豆あずき臙脂えんじ暗紅あんこう唐紅からくれないレッドスカーレットバーミリオンマゼンタローズワインレッド

たん【丹】[漢字項目]

常用漢字] [音]タン(呉)(漢) [訓]に あかい
鉱物の一。辰砂しんしゃ。「丹砂たんさ・たんしゃ
赤色の顔料。赤い色。に。「丹朱丹青丹頂
丹砂を配合した不老不死の仙薬。「丹薬仙丹練丹術
練り上げた薬。「反魂はんごん万金まんきん
まごころ。「丹精丹念
丹波たんば国、または丹後たんご国。「丹州
[名のり]あかし・あきら・に・まこと
[難読]雲丹うに甲比丹カピタン切支丹キリシタン牡丹餅ぼたもち

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「丹」の意味・読み・例文・類語

たん【丹】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 硫黄と水銀の化合した赤土。辰砂(しんしゃ)。また、その色。に。
      1. [初出の実例]「にかへぬりの下行〈略〉四貫文たん十褁代」(出典:高野山文書‐嘉吉三年(1443)五月二八日・山王院一御殿造営勘録状)
      2. [その他の文献]〔書経‐禹貢〕
    2. 鉛に硫黄・硝石を加えて、焼いて製したもの。鉛の酸化物で鉛丹ともいう。黄色を帯びた赤色で、絵の具としまた、薬用とする。和泉国堺で産する長吉丹は上等とされた。
      1. [初出の実例]「合綵色物壱拾参種〈略〉塔分陸種〈朱砂六十二両一分 胡粉二百八十両一分 黄卅五両二分 丹二百八両〉」(出典法隆寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
      2. 「丹(タン)で塗った提灯が幾つも掛けてあります」(出典:真景累ケ淵(1869頃)〈三遊亭円朝〉八六)
    3. 薬のこと。多く、不老不死の薬をさしていう。
      1. [初出の実例]「換白何死、含丹在親」(出典:菅家文草(900頃)一・仲春釈奠、聴講孝経、同賦資事父事君)
      2. 「丹(タン)を煉(ねり)、真を修し、天地とともに寿(いのちなが)しとぞ」(出典:読本・椿説弓張月(1807‐11)続)
      3. [その他の文献]〔徐陵‐答周処士書〕
  2. [ 2 ] 丹波国(たんばのくに)、丹後国(たんごのくに)の略。
  3. [ 3 ] 〘 造語要素 〙 丸薬・練薬の名前につける語。「万金丹」など。
    1. [初出の実例]「紫霊丹 一名長生丹一名反魂丹」(出典:二十巻本和名抄(934頃)一二)
    2. [その他の文献]〔晉書‐葛洪伝〕

丹の補助注記

( [ 一 ]及び[ 三 ]について ) 道家では水銀に不老長生の効果があると信じられ、「経進地仙丹」「伏虎丹」「養生丹」といった神仙薬が作られた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「丹」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 4画

[字音] タン
[字訓] に・あか

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
丹井(たんせい)に丹(に)のある形。丹は朱砂の状態で出土し、深い井戸を掘って採取する。〔説文〕五下に「巴越の赤石なり。丹井にるに象る。丶は丹の形に象る」という。〔史記、貨殖伝〕に、蜀の寡婦の清が、丹穴を得て豪富をえたことをしるしている。〔書、禹貢〕に、州に丹を産することがみえる。金文の〔庚(こうえいゆう)〕に「丹一(かん)」を賜うことがみえ、聖器に塗るのに用いた。甲骨文の大版のものには、その刻字の中に丹朱を加えており、今も鮮明な色が残されている。〔抱朴子、仙薬〕には、丹を仙薬とする法をしるしている。丹には腐敗を防ぐ力があり、古く葬具にも用いられ、殷墓からは、器が腐敗し、その朱色が土に残された花土の類が出土する。

[訓義]
1. に、あか、あかくぬる。
2. まごころ。

[古辞書の訓]
和名抄〕丹 邇(に)〔名義抄〕丹 アカシ/渥丹 アツクツケタルニ/丹 ニヌリ・イロドル/牡丹フカミクサ 〔字鏡集〕丹 ニ・アカシ

[部首]
〔説文〕に(わく)・(とう)の二字を属する。(青)系統のものは、丹から派生した字。

[語系]
丹tan、旃()tjianは声近く、旃はいわゆる絳帛。軍門にこれを用い、また軍使に用いた。

[熟語]
丹堊・丹・丹帷・丹羽・丹烏・丹雲・丹楹・丹英・丹栄丹穎丹掖・丹液・丹鉛・丹艶・丹霞・丹崖丹壑・丹干・丹丹款・丹巌・丹・丹旗丹曦・丹丘丹邱・丹魚・丹棘・丹経・丹・丹闕・丹穴・丹血・丹訣・丹瞼・丹絃・丹甲・丹紅・丹虹・丹鴻・丹悃・丹懇・丹沙・丹砂・丹彩・丹剤・丹冊・丹芝・丹脂・丹・丹漆・丹室・丹赭・丹若・丹朱・丹書・丹詔・丹裳・丹霄・丹心・丹忱・丹脣・丹寸・丹青・丹誠・丹井・丹赤・丹粟・丹台・丹・丹竹・丹柱・丹衷・丹頂・丹・丹鼎・丹篆・丹田・丹土・丹洞・丹毒・丹・丹筆・丹府・丹楓・丹粉・丹陛・丹碧・丹房・丹鳳・丹薬・丹葉・丹溜・丹侶・丹輪・丹・丹楼・丹
[下接語]
渥丹・霞丹・金丹・朱丹・神丹・青丹・赤丹・仙丹・飛丹・碧丹・服丹・牡丹・流丹・丹・錬丹

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「丹」の意味・わかりやすい解説

丹 (たん)
dān

中国,道教でいう不老長生を得るための薬。晋の葛洪の《抱朴子》では,不老長生を得るには,金丹を服薬することが最も肝要であるとする。金丹の金はその火で焼いても土に埋めても不朽である点が重んじられ,丹の最高のものは九転の丹で,焼けば焼くほど,霊妙に変化する点が重んじられ,この九転の丹を服用すると3日で仙人になれると説く。また丹華,神符,神丹,還丹,餌丹,錬丹,柔丹,伏丹,寒丹の九丹が説かれ,寒丹を1匙ずつ100日服用すれば仙人になり,仙童仙女がそば仕えをし,翼を用いずに軽やかに空を飛行できるとする。丹の材料は,たとえば,九光丹では,丹砂,雄黄,白礜(はくよ),曾青,茲石等であり,丹を作る際には人里離れた名山に行き,斎戒沐浴して身辺を清潔にせねばならないとされる。丹を作る方法としては,務成子丹法等,多くの方法が説かれる。後世,紫陽真人張伯端(987-1082)の金丹道系の道教では,この丹を服用する方法のほかに,人間の身体の中の気の運用により,内部に金丹を作り不老長生を得る内丹の法が主張された。
仙薬 →練丹術
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【絵具】より

…後世になると,水銀に硫黄を反応させて種々の色調の朱を作っている。赤色には他に酸化鉄を主成分とする朱土や岱赭(たいしや)などがあり,明るいオレンジ色の丹(たん)も古くから知られた。丹は四三酸化鉛を主成分とする。…

【赤】より

…当然,遠古の日本列島住民においても同断である。最古の史料《魏志倭人伝》に〈倭地温暖,冬夏食生菜,皆徒跣,有屋室,父母兄弟臥息異処,以朱丹塗其身体,如中国用粉也〉とみえ,倭人が朱(水銀系の赤色顔料)で身体装飾をしていたらしいのを知る。この水銀朱は縄文後期にあらわれ,弥生時代や古墳時代にはかなり広くおこなわれた。…

※「丹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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