大人・乙名(読み)おとな

精選版 日本国語大辞典 「大人・乙名」の意味・読み・例文・類語

おとな【大人・乙名】

〘名〙
[一] かしら。おもだった者。
一族、集団のおもだった者。年長者。宿老。
平家(13C前)二「資賢卿はふるい人、おとなにておはしき」
② 中世後期以降の村落の代表者。惣村の形成に伴って生まれた、宮座を中心とする村落の自治組織の指導者層で、その数は村によって異なり、数人から数十人に及ぶ。
大乗院寺社雑事記‐延徳四年(1492)二月二三日「今日郷民(ヲトナ)共召具参申」
③ 中世後期、座(ざ)の代表者。
※大乗院寺社雑事記‐文正二年(1467)二月二四日「当門跡方真莚座〈略〉堅可致其沙汰之由、ヲトナ三人致請文了」
女房のかしら。おもだった女房。物事をとりしきる(ことのできる)女房。また、主婦。
※枕(10C終)一五八「さやうの事は、所のおとななどになりぬれば」
譜代長老家老年寄、宿老など。
※梵舜本沙石集(1283)八「侍ひ共百人計り座に着たるに、〈略〉をとなより上にむずとつく」
※仮名草子・浮世物語(1665頃)二「家老(オトナ)出頭・奉行人などの利慾に陥り」
⑥ 肥前国長崎で町役人をいう。一町に一人おき、長崎奉行に属して町内百般の事をつかさどった。町年寄。〔日葡辞書(1603‐04)〕
⑦ 江戸時代、松前藩主に統轄されたアイヌ首長に与えた名。
召使の長。奴婢の長。作男や下男のかしら。
俳諧・新花摘(1784)「丈羽が家のおとななるもの来りて」
[二] 成人式(男は元服、女は裳着)を終えた男女一般をいう。
① 成人式を終えた者。成人。
書紀(720)天武即位前(北野本訓)「壮(ヲトナ)に及りて雄抜(をを)しく神武(たけ)し」
② 成長した一人前の男女。特に小児に対比していうことが多い。
※枕(10C終)一〇七「産れたるちごのおとなになる程」
③ (比喩的に) 物の考え方や態度などが成熟していること。また、成人としてふさわしいさまであること。
※自由と規律(1949)〈池田潔〉その生活「他人が怠けるのに自分が励んでは損と思う風もない。考え方が大人なのである」
[語誌]語源に関し諸説があるが判然としない。「観智院本名義抄」に「長」に「オトナツク」という訓があり、人として長じたようすをさすものと思われる。「書言字考節用集」では漢籍にある「家長・傅御・監奴・老長」などの用字に「おとな」と訓みをつけるなど、(一)の勢力は長く続いたが、近代以降では(二)の意として専ら用いられ、(一)の用法は方言などに存続することとなった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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