デジタル大辞泉 「黒」の意味・読み・例文・類語
くろ【黒】
2 黒い碁石。また、それを持つほう。先手。「
3 犯罪などの容疑が濃いこと。「状況証拠では
4 「黒字2」の略。
[類語]黒色・漆黒・真っ黒・真っ黒い・か黒い・黒い・黒黒・黒ずむ・どす黒い・浅黒い・色黒・真っ黒け・黒っぽい・黒み・墨色・墨・赤黒い・青黒い・黒む・純黒・
色名としては「あか(赤)」と同じく複合語として用いられることが多い。赤が明るさについていうことから派生したように、「くらし(暗)」と同源で、本来は暗い状態を表わす語から発したと考えられる。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
色名の一つ。日本工業規格(JIS)では,10種の有彩色,5種の無彩色の計15色名を基本色名として定めているが,黒は無彩色の基本色名の一つである。無彩色だから明度(色の3属性の一つで,色の明るさを表す)によって規定され,黒は明度0である。
くろい意を表す漢字は黒のほかに玄があり,古くはむしろこちらのほうが多く使われた。玄の字は黒い糸を束ねた形で,かすかで見にくいところから天の色とされ,また北方の色とされた。四神の一つ玄武は北方の神で亀または亀と蛇の組合せで表される。玄武は黒帝ともいう。一般に黒は白の対色である場合と白黒未分の原初の状態の色を指す場合とを分けて考える必要がある。後者はすべての創造の根源の色であり(これを白とすることもある),その意味でインドのビシュヌ神(創造の根源的エネルギーの化身),エジプトからギリシア,中世に至る母神(イシス,キュベレ,〈黒い聖母〉など),ヒンドゥー教のカーリー神,イスラムの聖地メッカの神殿カーバ(および,そこにはめこまれた〈聖なる黒石〉)などの黒色が理解される。しかしまた,黒は地下の色であって,そこから再生,豊饒を意味する色となり,それゆえに母神などと結びついたともいえる。一般に地下は冥府として地上と対立し,その意味で黒は生に対する死,光に対する闇,善に対する悪として理解される。まず黒が死ないし喪(も)の色であることは世界に普遍的な現象で(ただし中国など白の場合もある),死の国と関係する諸神(エジプトのオシリス,アヌビスなど)に黒を身色とするものが多い。黒は現世の悦楽を断つという意味で禁欲の色であり,キリスト教,イスラムなどの聖職者の黒衣や仏僧の墨染めの衣がこれを示す。さらに進んで,黒を光に対する闇,善に対する悪を象徴する色とすることも一般的で,黒は悪神・悪霊の身色となる。なおインドの4階級(カースト)を象徴する4色(白,赤,黄,黒)のうち,黒は第4のシュードラ(隷属民階級)の色である。
執筆者:柳 宗玄
古代日本語の色名のうち,抽象的概念を表す記号(色彩の名称とは,本来こういうものであるが)として用いられた語は〈アカ〉〈クロ〉〈シロ〉〈アヲ〉の4種に限られ,これ以外の色名はすべて染料(草木染に使われる〈ムラサキ〉〈ハネズ〉〈ハナダ〉〈アヰ〉など)か顔料(鉱物性着色剤である〈ニ〉〈ソホ〉など)かに由来する,というのが今日の定説になっている。クロは,日が〈く(暮)れる〉ないし〈くら(暗)し〉と語源を同じくし,ちょうどアカが〈夜があ(明)ける〉ないし〈あか(明)し〉と同語源であるのに対比される。古代日本人にとっては,黒は,白に対立する概念であるよりは,むしろ赤に対立する概念であった。〈あかき心〉の反対が〈くろき心〉であり,黒と赤とを一組のものとして受け取る色彩感覚が最も原初的であったと考えられる。その後,黒と白とが対比される時代を迎えるが,それは,あかい夜明けによって森羅万象が〈しる(著,効,験)く〉〈しら(識,知)れる〉ようになるという意味上の拡大をおこなった結果とみることも可能であるが,決定的要因としては,やはり先進文明国の中国から輸入された陰陽五行思想に深く学んだ結果とみるのが最も穏当であろう。いずれにせよ,記紀万葉に現れるかぎりでは,色名の種類はきわめて少なく,国語学の定説どおり,前記4種を基本色名にして,それ以外は染料,顔料の名称を借用したものに限られると考えてよさそうである。
もっとも,近年この定説に対して異議がさしはさまれるようになっている。大野晋は論文《日本語の色名の起源》において,平安末期成立の漢和字書である《類聚名義抄(るいじゆうみようぎしよう)》に表記されたアクセント・清濁の記号を検討するかぎり,クロ(黒)とクラシ(暗)との語源が同一であるとする推定には障害が生ずる,と疑い,クロの語源もまた〈クリ(涅)〉すなわち黒泥(黒色の顔料)に由来するのではないかとの提説をおこなっている。
いっぽう,クロと陰陽五行とのかかわりはどうなっているかという問題が残るが,五行の5番目に配当された水気は,色において黒,方位において北,季節において冬,十二支では亥,子,丑の3支,十干では壬,癸を表しており,したがって,クロによって象徴される意味は〈冬,北,夜,暗黒〉ということになる。水は暗い低処に集まるが,しかし,そこは物の生命が妊(はら)まれ萌(きざ)すところの暗い胎内でもある。記紀の冒頭を飾る〈開闢(かいびやく)神話〉が中国の陰陽五行思想を忠実に踏襲したことは周知のことであるが,東を神霊の国と考えたり西を死者の国と考えたりするのと同じように,北を暗黒ではあるが〈物事の始まり〉の胎動する国と考えるのは,原始民族の抱く素朴な信仰心理にも合致するといえる。しかし,同じく中国思想を直輸入した律令国家体制が整備されるに伴って,天皇,貴族,官人,庶民,奴婢(ぬひ)の着用する衣服の色が法令により厳格に規定されるに至り,クロ(もしくはクロに近い色)は最下層の階級を表す色彩と定められた。衣服令(えぶくりよう)をみると,〈制服。無位は,皆の縵の頭巾。黄の袍(ころも)。烏油(くろつくり)の腰帯。白き襪。皮の履。朝庭公事に,即ち服せよ。尋常(じんじよう)には,通(かよ)いて草鞋(わらぐつ)着(は)くこと得(え)む。家人(けにん)奴婢は,橡墨(つるばみすみぞめ)の衣(ころも)〉とある。〈家人奴婢,橡墨の衣〉とは,私賤民も奴婢もクヌギの実(どんぐり)を煎じた汁で染めた紺黒色の衣服を着用しなければならないの意である。衣服の色で位階や身分を表す考え方も,もと唐制の模倣であるにすぎないが,色彩に対する尊卑の差別意識が,奈良時代から平安時代中ごろにかけて広く支配的であったことを見失っては,日本人の色彩感覚を論じえない。ただ,おもしろいのは,養老令で紫(一~三位)→緋(四,五位)→緑(六,七位)→縹(はなだ)(八,初位)の順に尊重されていた色が,一条天皇の正暦1年(990)の新規定では黒(一~四位)→緋(五位)→緑(六,七位)→縹(八,初位)の順位に変わり,黒が首位に躍り出たことである。仏教の影響によるものかどうか明らかでないが,一方で,同時代人の紫式部は《源氏物語》柏木の巻で〈いで,あな心憂(こころう)。墨染こそ,なほ,いとうたて,目もくるゝ色なりけれ〉と記しており,黒をいやな色,美しくない色と見ているから,同じ色でも時と状況とに応じて主観的に感じとってさしつかえない時代が来ていたと解釈すればよいのだろう。もちろん,この時代以降黒が〈喪〉の色として受け取られたことも付け加える必要はあるが,それとてもかなり両義的に解釈されており,かえって清浄であるべき白のほうが忌み嫌われたりする場合もある。
近世封建遺制とともに残存する各種の民俗慣行のなかでも,黒と白とは,一組の文化記号的意味を担いながら,どちらが聖でどちらが俗なのか,混交したり逆転したりしている実例がきわめて多い。結局色によって浄不浄や吉凶があらかじめ定まっているとする考え方そのものが,今となっては愚かしい,という帰結になる。
→色 →白
執筆者:斎藤 正二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
まったく光のない状態が完全な黒であるとされているが、この状態ではなにも感じられない。実際には、わずかの光を一様に反射するものを黒として見ているといってよい。黒は、じみで、暗く、重々しい、沈んだ、やや静的といった印象がもたれる。また、どちらかといえば男性的で、はっきりした感じをもつ。黒からの連想は、タイヤ、モーニング、黒髪など、黒色であるものが多い。また、抽象的なものとしては、不安、死、不気味、陰気、孤独といったように、暗闇(くらやみ)などと結び付きやすいものが連想されている。罪、恐怖などといったものとも結び付きやすい。
黒に対しての好みは、成人においては比較的高い。一方、子供の場合には、嫌いな色としてよく指摘されている。黒の連想はあまり快適なものではないようであるが、実際に服などに使用するとその印象が変わってくる。立体的なもの、動きが入るもので黒の場合には、光の状況により微妙に変化して見える。このため実際に使用すると、ニュアンスのある色として感じられる。黒は白とともに無彩色の代表とも考えられるが、人間の目が、暗いほうの明るさの変化に敏感であるため、わずかな光の反射の違いが、黒を微妙に変化させる。したがって、シックな感じをもたせることが往々にしてある。
黒はまた重厚感を生じさせる。これは、色彩のなかでもっとも明度が低いことに対応している。黒は連想、象徴されるものが、暗闇などから感じるものと類似しているため、表に出ないで、陰でいろいろなことをする場合などの表現としても使われている。黒幕、黒衣(くろご)ということばなどその例であろう。ほかに、黒と白の両方を使い、黒白をはっきりさせるなどともいう。黒そのもののイメージと、実際に用いられたときがかなり異なるのも黒の特色であろう。
[相馬一郎]
…動物の場合は色を見ることのできる目をもつものは少ないといわれる。身近なものでネコやイヌやウシなど,白黒の世界に生きている。色覚色彩調節
〔色の科学〕
人間は幸いにして色を見ることができるので,色から得ている恩恵は非常に大きい。…
…これはさらにダンテの《神曲》によって,コウモリの翼をもつ魔王サタンの姿に定着された。錬金術のシンボルとしてはカラスとともに黒(原質)を示し,両性具有の寓意にも用いられた。これを吉兆とする習俗もないわけではなく,降下してくるコウモリにぶつかれば幸運に恵まれるといわれる。…
…
[飛鳥・奈良時代]
こうした染色技術の進展は,603年(推古11)に始まった冠位制の設定などを契機に,いっそうの発展をみたと考えられる。冠位制では,位によって異なる色相の絁(あしぎぬ)の冠を授けて身分の上下を示したが,この年制定の冠位十二階では紫,青,赤,黄,白,黒の6色が配されていた。また衣服の色も,冠と同じ色が用いられた。…
※「黒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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