農作物の栽培にあたって,耕地の土壌の表面を被覆する資材のこと。またこのような被覆を行うことをマルチングmulchingといい,土壌浸食の防止,土壌水分の保持,地温の調節,雑草の抑制,土壌伝染性の病菌や泥はねからの汚染防止などを目的とする。被覆資材としては,古くから稲わら,麦わら,刈り取った牧草や野草,堆肥あるいは前作物の残渣(ざんさ)などが用いられ,敷草あるいは敷わらと呼ばれてきたが,近年はポリエチレンや塩化ビニルフィルムの利用が急速に増加している。乾燥地では中耕を浅く行って表層土を破砕し,土層下部との毛管水連絡を切断することによって,土壌水の蒸発を防ぐ方法がとられる。この場合には,表層の土壌自身がマルチの役割を果たすことになり,ソイルマルチsoil mulchという。
マルチは強い雨で耕土が押し流されるのを防止する効果が大きく,傾斜地の果樹園などでは,草生栽培法とともに土壌管理の重要な手段の一つとされている。土壌水分保持の効果は乾燥した土壌で,あるいは降雨の少ないときに大きく,果菜類やサトイモなどではとくにその効果が著しい。地温に対する効果は季節によりまた資材の種類によって異なる。秋から春にかけての低温期には,地温を高める効果の大きい透明フィルムを用いて生育を促進させ,夏の高温時には敷わらなどにより地温を低下させるのがよい。黒色フィルムは地温の上昇効果は小さいが光の透過量が制限されるため,雑草種子の発芽や生育を抑制する効果が大きい。近年は地温を上昇させるとともに,雑草の生育を抑制するという特定の波長の光のみを通過させるフィルムや,除草剤を塗布した透明フィルムが開発されている。マルチは露地で利用されるほか,ハウスやトンネルなど園芸施設内での利用も多い。
執筆者:松崎 昭夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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