民主党(イタリア)(読み)みんしゅとう(英語表記)Partito Democratico イタリア語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「民主党(イタリア)」の意味・わかりやすい解説

民主党(イタリア)
みんしゅとう
Partito Democratico イタリア語

2007年結成、旧イタリア共産党穏健派とキリスト教勢力左派を主要な起源としたイタリアの中道左派の有力政党。略称PD。2013年総選挙以降、政権を支える最大政党となるが、2018年の総選挙で敗北を喫した。

 1994年の総選挙を契機に、第二共和制における政治勢力は左右二つの陣営へと収斂(しゅうれん)していった。中道左派は、中道右派と比べて政党数が多く、内紛が絶えないという問題に苦しんでいた。その打開のため、2007年に入ると合同に向けた動きが本格化し、同年10月に正式に民主党が成立した。10月の党首選は300万人以上が参加した開放的予備選挙(オープン・プライマリー)で実施され、ローマ市長のベルトローニWalter Veltroni(1955― )が4分の3の得票で初代党首に選出される。党大会で採用された党章は、赤(社会主義、社民主義)、白(カトリック)、緑(環境、社会的リベラル)と、合流した主要勢力を反映していた。

 その後2008年の総選挙での大敗を受け、党内の派閥対立は急進化した。2009年初頭ベルトローニは辞任し、副党首であったフランチェスキーニDario Franceschini(1958― )が中継ぎとして新党首に選出され、さらに10月には党大会で旧共産党系のベルサーニPier Luigi Bersani(1951― )が新党首に選出された。急進的な緊縮政策を進めるモンティMario Monti(1943― )政権への協力などむずかしい選択を迫られ、2013年の総選挙に向けた中道左派の統一首相候補選出のプライマリーでは、当時フィレンツェ市長のレンツィMatteo Renzi(1975― )に同一党内から公然と反旗を翻された。

 2013年の総選挙では中道左派として議会第一勢力の座を確保したものの、五つ星運動の躍進など衝撃的な結果に直面する。首相候補ベルサーニは組閣失敗など混乱の責任をとり、党首辞任に追い込まれる。かわって、中道右派ともつながりがある旧キリスト教民主党系のレッタEnrico Letta(1966― )が同党から首相の座についた。党のリーダーシップは、エピファーニGuglielmo Epifani(1950―2021)の暫定党首の後、2013年11月プライマリーで圧勝して党首となったレンツィの手に握られる。彼は強化された党内基盤を背景に政権掌握に動き、2014年2月首相に就任する。党首と首相を兼任したレンツィは選挙法改正や憲法改正など大規模な改革を強力に実施しようとしたが、2016年春の地方選挙の敗北、12月の憲法改正国民投票での否決の結果を受けて首相の座を退いた。彼は党内の手綱を握り続け2017年党首選で再選されたものの、その強硬姿勢にベルサーニなど左派は反発し、新党の民主革新運動を結成して離党するなど党勢は低落した。2018年の総選挙では大敗し、中道左派は第三勢力に落ち込んだ。

[伊藤 武 2018年6月19日]

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