否や(読み)イナヤ

デジタル大辞泉の解説

いな‐や【否や】

[名]《名詞「いな」に係助詞「や」の付いた「健在なりや否や」などの「否や」の一語化》
不承知。異議。「この段階になれば否やはない」
承知か不承知かということ。諾否。「否やの返事を聞く」
[副]「…やいなや」「…がいなや」などの形で用いる。
…とすぐに。…と同時に。「かばんを置くや否や、外に飛び出した」
問いかけの意を表す。…かどうか。どうだろうか。「頼みの雨は降るや否や
[感]《「や」は間投助詞》
拒否の気持ちを表すのに用いる語。いやいや。いやもう。
「思へども思はずとのみ言ふなれば―思はじ思ふかひなし」〈古今・雑体〉
驚き、嘆きの気持ちを表すのに用いる語。いやこれは。これはこれは。
「―、ここに男のけはひこそすれ」〈狭衣・三〉

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大辞林 第三版の解説

いなや【否や】

( 名 )
の用法の転〕
不承知。異議。 「今さら-は言わせない」
諾否。 「 -を問う」
( 感 )
拒否や否定の気持ちを表す語。いやいや。 「思へども思はずとのみ言ふなれば-思はじ思ふかひなし/古今 雑体
意外な事態に驚いて、受け入れ難い気持ちで発する語。これはどうしたことだ。何とまあ。 「 -、かくは思はざりつ/今昔 23

いなや【否や】

( 連語 )

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

いな‐や【否や】

[1] 〘感動〙 (「や」は詠嘆)
① 相手のことば、動作などを拒否する気持を表わすときに発することば。いやいや。いいや。いやもう。
※古今(905‐914)雑体・一〇三九「思へどもおもはずとのみいふなればいなやおもはじ思ふかひなし〈よみ人しらず〉」
② 驚いたり嘆いたりする気持を強く表わすときに発することば。いや。いやこれは。これはまた。これはこれは。
落窪(10C後)一「いなや、この落窪の君のあなたにのたまふことに従はず」
[2] 〘副〙 (「や」は疑問)
① (「…やいなや」の形で用いる。漢文訓読語法として発生したもの) 問いかける気持を表わす。どうであろうか。そうであるかないか。そうするかしないか。
※書紀(720)欽明一三年一〇月(北野本訓)「西蕃(にしのとなり)の献れる仏の相貌端厳(きらきら)し。全ら未だ曾て有らず。礼ふ可きや以不(イナヤ)
② (「…といなや」「…やいなや」の形で) 同時に、または引きつづいて、ことが行なわれるさまを表わす。…と同時に。…とすぐに。ただちに。
※虎寛本狂言・惣八(室町末‐近世初)「来るやいなや〈略〉何やらむつかしい料理を云付られたが」
[3] 〘名〙 ((一)の用法が転じたもの)
① 承諾しないこと。承知しないこと。辞退。異議。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)四「外お出入の衆が残らずお受をいたしましたに、わたくしばかり、いなやを申しましては」
② 承諾か不承諾かという確かな返答。諾否。
※和英語林集成(初版)(1867)「Inaya(イナヤ) ヲ キク」
[語誌](1)(二)①は、平安時代初期には「…かどうか」と、相手に問いかける表現として用いられ、中世以降も、定型化した文語的表現として生き続けた。「ロドリゲス日本大文典」(1604‐08)には、「書き言葉における荘重な質問」に「甚だ多く用いられる」とある。
(2)口頭語で「や」が疑問を表わさなくなったため、江戸時代中期ごろの口語では疑問の意は消失し、(二)②の意味に転じて用いられるようになった。

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