国家(読み)こっか

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

国家(プラトンの対話篇)
こっか
polteiギリシア語

ギリシアの哲学者プラトンの中期対話篇(へん)の一つで、全10巻の大作。正しさとは何であるかを問い、魂における正しさが人を幸福にすることを論じた。しかし、魂における正しさそのものを観(み)るのは容易ではなく、まず国家における正しさを観るのが便宜であるとし、国家のあり方のさまざまな型に応じて同数の魂の型があるとしたので、国制論にもなっている(本書の題名はここからくる)。最善の正しい国制から名誉支配制(ティーモクラティアー)を経て、寡頭制(オリガルキアー)、民衆制(デーモクラティアー)、僭主(せんしゅ)制(テュラニス)に至るまで順次に、より悪い国制へと頽落(たいらく)していく国制の移行の経緯と原因――それは同時に人間のあり方の型の頽落の経緯と原因でもある――の解明はみごとであり、正しさが何であり、人間における悪がどこから、どのように生じてきたかというプラトン哲学最大の関心に答えるものである。国家を構成する支配者、戦士、生産者の3部分と、魂を構成する理性的部分(ロギスティコン)、気概的部分(テュモエイデス)、欲情的部分(エピテュメーティコン)の3部分の類比の説は、その説明のために導入された模型である。
 国家における――したがってまた、人間の魂における――正しさを実現するための唯一の方途が哲人王の理想である。その説明のためになされた哲学者とは何であるかの論は、そこに含まれる線分の比喩(ひゆ)、洞窟(どうくつ)の比喩、善のイデアの説とともに、中期プラトン哲学のイデア論を代表するものとして名高い。
 初期対話篇の手法に倣った問答法による正しさの論究(第1巻)、魂と国家の類比による最善の型と頽落諸型の論(第2~4巻、第8~9巻)、哲学者論(第5~7巻)、詩人追放論と死後のミュトスを含む第10巻からなる全巻の構成の統一を観(み)るのは容易ではない。しかし、『法律』篇と並んで、他の対話篇を量において圧倒する、この大冊に盛られた壮大な構想は、壮年期プラトンの哲学の理念の結晶であり、それがこの著作に、プラトン対話篇のなかで初期と後期を結ぶ要石(かなめいし)としての独一の位置を与えている。[加藤信朗]
『藤沢令夫訳『国家』上下(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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