尤も(読み)モットモ

デジタル大辞泉 「尤も」の意味・読み・例文・類語

もっとも【×尤も】

[名・形動]道理にかなっていること。なるほどその通りだと思われること。また、そのさま。当然。「尤もな言い分」「いやがるのも尤もなことだ」
[接]前の事柄を肯定しつつ、例外あるいは一部相反する内容補足するときに用いる。とはいうものの。なるほどそうだが。ただし。「旅行にはみんな参加する。尤も行かない人も二、三いるが」
[副]
いかにもなるほどと思われるさま。本当に。まったく。当然。
「事すでに重畳せり。罪科―逃れがたし」〈平家・一〉
(あとに打消しの語を伴って)少しも。全然。
「ふっつり心残らねば―足も踏み込まじ」〈浄・天の網島
[類語](当然自然至当当たり前無論もちろん元よりまさにご無理ごもっと言うまでもない言わずもがな言をたない論をたないも有りなん無理もない無理からぬ自明歴然歴歴一目瞭然瞭然灼然しゃくぜん明らか明白明明白白定か明快はっきり明瞭画然顕然まさしく必至疑いなく然るべきすべからく言うに及ばず言えば更なり言うもおろか論無し推して知るべし隠れもない紛れもない理の当然必然妥当自明の理それもそのはずもっともっとも至極もっとも千万うべなるかなむべなるかな合点唯唯諾諾首肯うべなう賛成賛同果たして果たせるかな更にも言わず至極のみならず言わずと知れた紛れもない違いないくっきり諸手を挙げる/(ただしただとは言えとは言うもののさはあれしかしだがところがけれどもけれどだけどだけれどもだってされどそれでもでもしかしながら然るに然れどもさりとてそれなのにそのくせ言い条かと言ってにもかかわらず

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精選版 日本国語大辞典 「尤も」の意味・読み・例文・類語

もっとも【尤・最】

  1. ( 「もとも」の変化したもの )
  2. [ 1 ] 〘 副詞 〙
    1. その事柄について疑問がなく、同感・肯定できるさま。本当に。いかにも。なるほど。
      1. [初出の実例]「此経を〈略〉廻向しさせ給こそ尤も可然事とおぼえ候へ」(出典:法華修法一百座聞書抄(1110)三月二七日)
      2. 「もっともしかるべしとて、一門五十余人、いでたちたり」(出典:曾我物語(南北朝頃)一)
    2. 程度のはなはだしいさま。
      1. (イ) 非常に。とりわけ。たいそう。他をこえて。他のすべてにまさって。
        1. [初出の実例]「譬へば虚空の最(モットモ)高くして比び无きがごとく」(出典:東大寺本大般涅槃経平安後期点(1050頃)五)
      2. (ロ) ( 否定文の場合 ) 少しも。全然。決して。
        1. [初出の実例]「をかしき事にもあるかな。もっともえしらざりけり。興あること申たり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  3. [ 2 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 ) その事柄がなんら疑問の余地のないこと。当然そうあるべきであること。あたりまえ。当然。
    1. [初出の実例]「数千人の大衆先陣より後陣まで、皆尤々とぞ同じける」(出典:平家物語(13C前)一)
    2. 「今夜の発向尤也」(出典:保元物語(1220頃か)上)
  4. [ 3 ] 〘 接続詞 〙 前の事柄を受けながらも、それに対立的・反対的な条件や補足をつけ加えることを示す。そうはいうものの。一方で。ただし。
    1. [初出の実例]「是程まで身をこらし浅ましき勤め、尤(モットモ)給銀は三百目五百目八百目までも段々取しが」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)五)

尤もの語誌

( 1 )院政期頃より慣用的に[ 一 ]挙例に見られる「しかるべし」を修飾する用法が増加して、「もっとも」一語で「もっともしかるべし」の意味を表わすようになる。中世後期には、[ 二 ]の挙例「保元物語」に見られるようなこの意味での「もっとも」を語幹とする形容動詞「もっともなり」が成立する。
( 2 )[ 一 ]副詞としての用法も、「いかにも…であるが」の意で後ろに逆接で続く文、フレーズに含まれるものが目立つようになり、近世になると[ 三 ]の逆接の接続詞としての例が見られるようになる。


もとも【尤・最】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 ) =もっとも(尤)[ 二 ]
    1. [初出の実例]「御らんぜんにもともなりけりなどいへど」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙
    1. もっとも(尤)[ 一 ]
      1. [初出の実例]「げにあはれに悲しき事なり。されど世間を見思には、もともこれあべき事なり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)玉の村菊)
    2. もっとも(尤)[ 一 ](イ)
      1. [初出の実例]「海(わた)の底沖を深めて生ふる藻の最(もとも)今こそ恋はすべなき」(出典:万葉集(8C後)一一・二七八一)
    3. もともと。本来
      1. [初出の実例]「もとも心ふかからぬ人にて、慣らはぬつれづれのわりなくおぼゆるに、はかなきことも目とどまりて」(出典:和泉式部日記(11C前))

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