(読み)サイ

デジタル大辞泉 「才」の意味・読み・例文・類語

さい【才】

[名]
《古くは「ざい」とも》
㋐生まれつきもっている知能の働き。才能。才知。才気。「におぼれる」「に走る」
学問。学。才識。ざえ。
尺貫法容積の単位。しゃくの10分の1。約1.8ミリリットル。
木材体積の単位。1寸(約3.03センチ)角で、建具家具用材では長さ6尺(約1.8メートル)、建築用材では長さ12尺(約3.6メートル)の体積を1才とする。
石材や船の積み荷の体積の単位。1才は1立方尺(約0.0278立方メートル)。
じゅうたんなど織物の大きさを表す単位。1才は1平方フイート(約92平方センチ)。
[接尾]助数詞。「歳」に当てて、年齢を数えるのに用いる。「四、五
[類語]能力力量才能才覚文才才気手筋手際手腕手並み腕前技量

さい【才】[漢字項目]

[音]サイ(漢) ザイ(呉)
学習漢字]2年
持ち前の能力。「才覚才人才知才能異才英才鬼才秀才商才多才天才非才文才凡才
[名のり]かた・たえ・とし・もち

ざえ【才】

学問。教養。特に、漢学。
「弁も、いと―かしこき博士にて」〈・桐壺〉
芸能・技芸・音楽などの才能。
きん弾かせ給ふ事なむ、一の―にて」〈・絵合〉
ざえおのこ」の略。
「―ども声よろしからむなど選びて物せられよ」〈宇津保嵯峨院

かど【才】

《「かど」と同語源》
才気。才能。気のきくこと。
容貌かたちをかしう、心ばせ―ありて、みな優れたりける」〈夕霧
見どころ。風趣
「―あるいはほ石を立て並べて」〈栄花・駒競べの行幸

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精選版 日本国語大辞典 「才」の意味・読み・例文・類語

さい【才】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. [ 一 ] ( 古くは「ざい」とも )
      1. 生まれつきもっているすぐれた能力、資質。頭のはたらき。才能。才知。知能。また、そうした能力、資質のそなわった人。
        1. [初出の実例]「才愚只合嫌傷錦、慮短何為理乱縄」(出典:菅家文草(900頃)三・行春詞)
        2. 「才、身に足り、栄、分に余りて、時の花と匂ひしかば」(出典:海道記(1223頃)池田より菊川)
        3. [その他の文献]〔論語‐泰伯〕
      2. 学問。才識。学。また、それにすぐれている人。とくに、中古ごろは、漢詩、漢文の知識や学力などを意味した。ざえ。
        1. [初出の実例]「事はてて、まかづる博士・さいの人どもを召して、又々、文作らせ給ふ」(出典:青表紙一本源氏(1001‐14頃)乙女)
    2. [ 二 ] ものを数える単位。
      1. 容積の単位。尺貫法で、「勺」の十分の一。約一・八ミリリットルにあたる。抄(しょう)。〔書言字考節用集(1717)〕
      2. 和船の積石数をいう。𦨞(かわら)の長さ、肩幅、深さの三寸法を掛け合わせて一〇で割ったもの。この計算を肩廻し、または肩廻し算法といい、江戸中期以後、弁才船の普及とともに広く使われ、なかば公式化していた。大工才。
      3. 木材の体積の単位。一寸(約三・〇三センチメートル)角で、長さ一間(約一・八メートル)、すなわち、六〇立方寸のものを「一才」とする。〔地方凡例録(1794)〕
      4. 織物の単位。一平方フィート(約九二平方センチメートル)のものを「一才」とする。
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 俗に、年齢をあらわす「歳」の代わりに使用される。→

ざえ【才】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 持って生まれた素質、能力。才能。
    1. [初出の実例]「〈本〉女子(をみなご)の左衣(サエ)は 〈末〉霜月師走の かい壊(こぼ)ち」(出典:神楽歌(9C後)早歌)
  3. 漢詩文を読んだり、作ったりする能力。また、漢籍や仏典に関する学識。転じて、学問、教養。
    1. [初出の実例]「あとにはとひなども、ちりのことをなむあやまたざなるざへよくならへ」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
    2. 「弁も、いとさえかしこき博士にて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
  4. 書、歌、音楽などの芸事についての技術や能力。芸能、芸術、技能の才能があること。
    1. [初出の実例]「『仲頼の朝臣、何のざえか侍る』『山伏のざへなん侍る』」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)
    2. 「琴ひかせ給事なん、一のさえにて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
  5. ざえ(才)の男」の略。
    1. [初出の実例]「ざえども、声よろしからんなど、選びて物せられよ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)

才の語誌

漢語の「才」の呉音「ザイ」の転じたもの。中古では、よりもの意味で使われることが多かった。主として、漢語の「学」に相当する、習うことによって身につけた学識や芸術性についていい、漢語の「才」に相当する語は、日本では、「たましい」が用いられた。


かど【才】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 才能。才覚。気のきくこと。
    1. [初出の実例]「幼(わか)くして聰(さと)く穎(すぐ)れ、才(カト)敏くして識(さとり)多し」(出典:日本書紀(720)仁賢即位前(図書寮本訓))
    2. 「しづ心もなくおぼえければ、あるがなかにかどあるわらはして、かく聞えたてまつる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
  3. おもむき。持ち味。
    1. [初出の実例]「あやしき草木を掘り植へ、かどある巖石を立て並べて」(出典:栄花物語(1028‐92頃)駒競の行幸)

ざい【才】

  1. 〘 名詞 〙さい(才)[ 一 ][ 一 ]

みつ【才】

  1. 〘 名詞 〙 才。才徳。→みつなし(才無)

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普及版 字通 「才」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 3画

[字音] サイ・ザイ
[字訓] あり・わずか

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
標木として樹(た)てた榜示用の木の形。古い字形では、上部の一の部分が(さい)、すなわち祝詞などを収める器の形にしるされており、神聖の場所であることを表示する。〔説文〕六上に「艸木の初めなり」とし、草木初生の象であるとするが、(てつ)一下(草木初生の象)とは意象の異なる字である。もと神聖の場所を示し、それより存在するもの、また所在・時間を示す字となる。金文に「正に才(在)り」「宗に才(在)り」のようにいう。存在の最も根源的なものであるから、天地人三才、また材質・質料をいう。それで人の材能をも意味する。才は在の初文。在は才に士(鉞(まさかり)の刃部の形、士の身分象徴)を加えてこれを聖化する形で、占有・支配の意をも含むものであろう。才を呪飾として戈に加えた形は(さい)。声の字には神聖のことに関するものが多い。さらにを加えて哉(さい)となり、「哉(はじ)む」とよむ。金文には才を在、を哉の義に用いている。

[訓義]
1. あり。時間的・場所的、また「王に才(あ)り」「上に才り」「乃(なんぢ)の服(職事)に才り」のように身分・職事などにもいう。
2. 先天的にあるもの、はじめから存在する、天地人三才、さい、さえ、人の才能・材質。
3. 才能のはたらき、その力、その人。
4. 哉・載と通じ、はじめ。
5. 財・纔と通じ、わずか。
6. 裁と通じ、はかる。
7. 国語で、ざえ。また、升目、勺の十分の一。歳の略字として用いる。

[古辞書の訓]
名義抄〕才 タカフ(ラ)〔字鏡集〕才 ヒサク・タカラ

[部首]
〔説文〕〔玉〕ともに部首とするが、部に属する字がない。在は才の繁文とすべき字で、士はその意符、すなわち会意字である。また存も才と子の会意。才の榜示によって守られるその地の生活者をいう。これらの会意字は、才部に属すべき字である。

[声系]
〔説文〕に才声として材・財・・在など九字を収め、また声の字十字、在声の字一字を収める。才声の字に材質の意をもつものが多く、声の字に、その初制の儀礼に関するものが多い。

[語系]
才・材・財dzは同声。材・財は才より演化した字で、才の声義を承ける。哉tzは西周の金文に「哉()生(さいせいは)」のように用い、「哉(はじ)めて(月の光)を生ず」の意で、第一週の「初吉」に次ぐ第二週をいう。また裁・纔dzもみな同声。みな「わずかに」の義に用いる字である。

[熟語]
才穎・才媛・才華・才格・才学・才幹・才気・才器・才技・才義・才業・才具・才慧・才芸・才・才傑・才賢・才彦・才悟・才語・才行・才高・才策・才士・才子・才思・才識・才質・才秀・才淑・才術・才俊・才儁・才女・才将・才捷・才章・才情・才色・才臣・才人・才尽・才数・才性・才絶・才藻・才短・才地・才智・才調・才哲・才度・才童・才徳・才能・才伐・才美・才筆・才品・才敏・才物・才分・才弁・才望・才名・才明・才茂・才雄・才・才誉・才理・才略・才流・才量・才力・才劣・才郎
[下接語]
愛才・悪才・異才・偉才・逸才・軼才・英才・叡才・穎才・下才・画才・雅才・才・学才・奸才・官才・幹才・漢才・奇才・鬼才・器才・機才・狂才・群才・芸才・兼才・賢才・口才・宏才・洪才・高才・三才・詩才・儒才・秀才・俊才・儁才・駿才・如才・小才・称才・商才・上才・人才・世才・盛才・絶才・仙才・浅才・薦才・善才・俗才・多才・大才・卓才・達才・短才・中才・通才・程才・適才・天才・奴才・頓才・鈍才・佞才・能才・覇才・非才・才・美才・微才・敏才・不才・負才・文才・弁才・凡才・無才・明才・茂才・雄才・洋才・抑才・吏才・良才・量才・礼才・麗才・斂才・露才・論才

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

百科事典マイペディア 「才」の意味・わかりやすい解説

才【さい】

(1)尺貫法の体積の単位。1才=1/10勺=1/100合(ごう)=1.804ml。(2)船の積荷や石材の体積の単位。1才=1/10石=1立方尺=0.02783m3。(3)木材の体積の単位。1寸角で2間または1間の長さに相当する材積をいう。1才=1/100尺じめ=120立方寸または1/200尺じめ=60立方寸。
→関連項目材積

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【石】より

…1平方尺×2間の尺〆(しやくじめ)に代わり,大正以降尺貫法廃止まで使われた。分量単位は才(さい)(=1/10000石)である。(3)積量の単位。…

【材積】より

…なお,一定面積当りの森林の幹材積の合計は林分材積または蓄積とよばれている。 材積の単位は現在の日本ではm3が用いられているが,古くは石(こく)(10立方尺=0.278m3)が広く用いられ,ほかに1尺角,長さ12尺(2間)の角材を尺締(しやくじめ)(または尺〆(しやくじめ)),1寸角,長さ6尺の角材を才(さい)とよぶなどの単位があった。ただし尺締,才の長さは地方によって一定していない。…

※「才」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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