由無い(読み)ヨシナイ

デジタル大辞泉 「由無い」の意味・読み・例文・類語

よし‐な・い【由無い】

[形][文]よしな・し[ク]
そうするいわれがない。理由がない。「―・い言い分を繰り返す」
そのかいがない。つまらない。くだらない。「―・い長話
「―・い人に組みしたのが運のつきだと」〈谷崎・盲目物語〉
なすべき方法がない。しかたがない。やむをえない。「―・くあきらめる」
「とみの事にて預め知らするに―・かりしが」〈鴎外舞姫
不都合だ。よくない。
「みづからも立ちさまよふにつけても―・きことの出で来るに」〈和泉式部日記
縁もゆかりもない。関係がない。
「あらぬ―・き者の名のりしてきたるも」〈・二五〉
[類語](1偽り法螺そら嘘っぱち嘘八百虚偽偽善まことしやか二枚舌はったり虚言虚辞そら言そら音もっともらしいでたらめ出任せ出放題荒唐無稽事実無根根も葉もないいわれない/(3末梢的二次的二義的副次的瑣末さまつ枝葉枝葉末節些事さじ細事小事細かい細細しい煩瑣はんさ瑣瑣ささ区区ちょっとした取るに足りないたわいない何でもない愚にもつかぬ益体も無いらちも無い高が知れる些些ささ些細ささいささやかわずか幾ばくたかがいささかほんの有るか無きかちょっと一縷いちる一抹些少さしょう末節無駄事雑事微微つまらない無意味下らない問題外部分的派生的卑小眇眇びょうびょうトリビアル

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精選版 日本国語大辞典 「由無い」の意味・読み・例文・類語

よし‐な・い【由無】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]よしな・し 〘 形容詞ク活用 〙
  2. そうする理由がない。いわれがない。根拠がない。
    1. [初出の実例]「やんごとなきまづの人々おはすといふ事は、よしなき事なり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  3. 手掛かりがない。手段・方法がない。しかたがない。すべない。
    1. [初出の実例]「時に、弟、已に鈎を海の中に失ひて訪獲(とふらひもとむ)るに因(ヨシ)(な)し」(出典:日本書紀(720)神代下(兼方本訓))
  4. 無関係である。ゆかりがない。縁がない。
    1. [初出の実例]「忍びやかに門たたけば、胸少しつぶれて、人出して問はするに、あらぬよしなき者の名のりして来たるも」(出典:枕草子(10C終)二五)
  5. 風情がない。また、家柄身分教養などがない。
    1. [初出の実例]「扇など、みめにはおどろおどろしく輝やかさで、よしなからぬさまにしたり」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一一日)
  6. そのかいがない。むだ骨折りである。
    1. [初出の実例]「愚かなる人は、ようなきありきはよしなかりけりとて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  7. しなくてもよい。いわなくてもよい。つまらない。
    1. [初出の実例]「げにはよしなきことをもいひつる物かな」(出典:古今著聞集(1254)二〇)
    2. 「由ない長物語りを申し候ふほどに、舟が着きて候」(出典:謡曲・隅田川(1432頃))
  8. よくない。よこしまである。また、いかがわしい。
    1. [初出の実例]「よからぬ人々文おこせ、又身づからもたちさまよふにつけても、よしなき事の出で来るに」(出典:和泉式部日記(11C前))

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