僅か(読み)ワズカ

デジタル大辞泉 「僅か」の意味・読み・例文・類語

わずか〔わづか〕【僅か/×纔か】

[形動][文][ナリ]
数量程度・価値・時間などがほんのすこしであるさま。副詞的にも用いる。「―な金の事でいがみ合う」「―な食料しかない」「―に制限重量をオーバーする」「ここから―10分の距離」
(多く「わずかに」の形で用いて)そうするのがやっとであるさま。かろうじて。「―に記憶している」「―に難を逃れた」
ささやかで粗末なさま。
「―なる腰折文つくることなど習ひ侍りしかば」〈帚木
[用法]わずか・かすか――「わずかな(かすかな)痛み」「わずかに(かすかに)息をしている」など、程度が少ない意では相通じて用いられる。◇「わずか」は数量・価値・時間など具体的な事柄について多く使う。「わずかなすき間」「わずかなことが原因で対立する」「乗り換え時間はわずか5分しかない」◇「かすか」は色・音・匂いなど感覚的な事柄について使うことが多い。「かすかに助けを呼ぶ声がする」「ほおにかすかな赤みがさす」「かすかに香水が匂う」◇「わずかな記憶」は断片的に残る記憶であり、「かすかな記憶」は、あいまいなはっきりしない記憶である。
[類語]少し少ないたったただたかだか僅僅きんきん少しく少少ちょっとちょいとちとちっとちょっぴりいささかいくらかいくぶんやや心持ち気持ち多少若干二三少数少量数えるほどしばらくなけなし低い手薄少なめ内輪軽少軽微微弱微微微少僅少きんしょう些少さしょう最少微量ちびちび一つまみ一握り一抹一息紙一重すずめの涙鼻の差残り少ないちょこっとちょこんとちょっこりちょびちょびちょびっとちょぼちょぼちょろりちょんびりちょんぼりちらり爪のあか小口ささやか寸毫すんごうプチほのかささやか幾ばくせいぜいたかが微塵みじん些細ささいまばらほんのあるかなきか一縷いちる心ばかり印ばかり形ばかり

はつ‐か【僅か】

[形動ナリ]物事一端がちらりと現れるさま。視覚聴覚に感じられる度合いの少ないさま。かすか。ほのか。
初雁の―に声を聞きしより中空なかぞらにのみ物を思ふかな」〈古今・恋一〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「僅か」の意味・読み・例文・類語

わずかわづか【僅・纔】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙
  2. 数量などの少ないさま。いささか。少しばかり。単独で副詞的にも用いる。〔新訳華厳経音義私記(794)〕
    1. [初出の実例]「わづかに聞きえたる事をば、我もとより知りたることのやうに」(出典:枕草子(10C終)二八)
  3. 程度、度合の少ないさま。副詞的に、辛うじて、やっとのことで。
    1. [初出の実例]「十種の衣の中に趣(ワツカニ)一衣を用ゐて嚢に作ること聴す」(出典:小川本願経四分律平安初期点(810頃))
    2. 「その一門亡びしかば、この比は、わづかにあるかなきかにぞ、まがよふめる」(出典:増鏡(1368‐76頃)二)
  4. さいさま。狭いさま。また、ささやかで粗末なさま。貧弱なさま。
    1. [初出の実例]「木の下のわづかなるに、葵のただ三筋ばかりあるを」(出典:更級日記(1059頃))
    2. 「わづかなる草の庵のうちに一人の僧あり」(出典:東関紀行(1242頃)前島より興津)
  5. 分量や程度を多く見積もっても問題とするに足りないさま。単独で副詞的にも用いる。せいぜい。たかが。
    1. [初出の実例]「たんごはわづかせう国とは申せども」(出典:説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)下)

僅かの語誌

( 1 )「はつか」とは、第二音節の清濁も異なり、意味も開きがあるので、派生関係はないと思われる。ハツカはハツ(初)やハツハツと同根で、物の先端がちらっと見えるといった、対象の不確定・不十分な認識を表わすのが本来の意。「名義抄」では「緬」字の訓としてハルカニ、ホノカニなどとともにハツカニが挙がっている。
( 2 )のちに、ハツカがワヅカの雅語的な表現と見られるようになるのは、ハツカが概ね和文に用いられ、ワヅカが和歌にほとんど用いられないなどの文体的な偏在が関与しているためか。→「はつか」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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