合点(読み)ガッテン

デジタル大辞泉 「合点」の意味・読み・例文・類語

がっ‐てん【合点】

[名](スル)
同意すること。うなずくこと。承知がてん。「おっと合点
くびに力を入れ、しっかり―しつつ」〈宮本伸子
理解すること。納得すること。得心。がてん。「一向に合点がいかない」
和歌連歌俳諧などを批評して、そのよいと思うものの肩につける「〽」「○」「・」などの印。また、その印をつけること。
回状などを見終わり了承の意を表すために、自分の名前の肩に印をつけること。
考え。心づもり。所存
「ただ今より真人間になって孝行尽くす―なれども」〈浄・油地獄
[類語](1勿論元より当然もっとも無論まさに当たり前ご無理ごもっと言うまでもない言わずもがな言をたない論をたないもありなん無理もない無理からぬ自然至当自明歴然歴歴一目瞭然瞭然灼然しゃくぜん明らか明白明明白白定か明快はっきり明瞭画然顕然まさしく必至疑いなく然るべきすべからく言うに及ばず言えば更なり言うもおろか論無し推して知るべし隠れもない紛れもない理の当然必然妥当自明の理それもそのはずもっともっとも至極もっとも千万うべなるかなむべなるかな唯唯諾諾首肯うべなう賛成賛同果たして果たせるかな更にも言わず至極のみならず言わずと知れた違いないくっきり諸手もろてを挙げる

が‐てん【合点】

[名](スル)《「がってん」の音変化》承知すること。事情などがわかること。納得。「ひとり合点
「一向に―仕らず」〈芥川・尾形了斎覚え書〉
[類語]物分かり聞き分けわきまえわきまえる分別ふんべつ分かり分かる理解知る把握飲み込み承知認識学ぶ了知存知聞知了解自覚納得早分かり早飲み込み早合点話せる得心

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「合点」の意味・読み・例文・類語

がっ‐てん【合点】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 和歌、連歌、俳諧などを批評する際に、よしとするものに点をつけること。また、その点。通常は右句頭に鉤点、判者二人以上のときは左鉤点、º点、・点などを用いる。
    1. [初出の実例]「定家朝臣のもとへ点をこひにやりたりければ、合点して、褒美の詞など書付侍とて」(出典:古今著聞集(1254)五)
  3. 人名を書き並べた文書などに鉤型の線で印(しるし)をつけること。とくに回状、廻文(めぐらしぶみ)などを見終わり、承知の意を示すために自分の名前の上につけた鉤型の線。
    1. [初出の実例]「早任合点計行」(出典:玉葉和歌集‐文治二年(1186)四月六日)
  4. ( ━する ) 相手の言い分などを承知すること。なるほどと納得すること。また、承知してうなずくこと。首肯(しゅこう)。がてん。
    1. [初出の実例]「もっともしかるべきよし、がってん申されけるうへは、子細におよばず」(出典:保元物語(1220頃か)上)
    2. 「五匁づつ二人ながら、おれが所へよこしやれ。がってんだと、飛ぶがごとくに行」(出典:咄本・譚嚢(1777)三人一座)
  5. ( ━する ) 事情をよく知っていること。また、事情を理解すること。がてん。
    1. [初出の実例]「天狗といふものは、めいよ人の心におもふ事を其ままに合点(カッテン)をする物ぞかし」(出典:浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)四)
  6. そうした心づもりでいること。覚悟していること。がてん。
    1. [初出の実例]「それこそよきがってん。あすは少々御見物しかるべし」(出典:仮名草子・元の木阿彌(1680)上)

が‐てん【合点】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「がってん(合点)」の変化した語 )
  2. ( ━する ) 相手の言い分、事情などを理解すること。承知すること。がってん。
    1. [初出の実例]「物のへんずると申す事は、目前にあって、がてんのまいらぬふしぎなことでござるぞ」(出典:虎明本狂言・成上り(室町末‐近世初))
  3. 覚悟すること。そうした心づもりでいること。がってん。
    1. [初出の実例]「もしほ草かき文の取やり うき契世間へしるる合点にて」(出典:俳諧・独吟一日千句(1675)第三)
    2. 「ぜひ当年は請け出して、女房に持るるがてん持(もつ)約束と」(出典:浄瑠璃博多小女郎波枕(1718)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「合点」の意味・わかりやすい解説

合点 (がってん)

古文書学上の用語。物事を確認し照合したしるしとして,文書の語や句の横に斜めに引いた線のこと。書状を受け取った人が,急いで返事を書くときには,勘返状といって,その書状の返事をしようとする所に合点を付し(これを勘を付けるともいう),その行間に小さく返事を書く。案文(あんもん)のうちで証拠書類として重要なものは,しかるべき人が正文と対照して,確認したしるしに〈校正了〉というような言葉を入れて,重要な個所に合点を加え,さらに裏に花押をすえる場合がある。これを校正裏封案文といい,正文と同等の効力をもつ。重要な道具や文書の出し入れを記した道具(文書)出納日記などには,合点を付し,その日付を記して出し入れを確認している。算用状や土地台帳など数字に関する文書では,それを確認し,または案文を作成する際,照合のしるしとして合点を付す。これらの場合には朱で合点が行われることもある。特殊なものとしては,合戦手負注文の人名に合点が加えられるが,それは奉行が確認したことを示す。中世の寺院で事務を司どった年預(ねんよ)などは選挙で選ばれるが,選挙人は投票をする人の名前に合点を付し,その数が多い人が当選となる。これを合点状という。《貞丈雑記》には,〈廻状などに点をかくるも合点也〉とみえるが,文殿や使庁の廻文,寺院の請定(しようじよう)や廻請(かいじよう)で了解の意味をあらわすには〈奉(うけたまわる)〉という字を入れる。これらの文書の人名の上に合点が加えられているのは,指定の日時に参着したことを示す。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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