ジョンソン(Boris Johnson)(読み)じょんそん(英語表記)Boris Johnson

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ジョンソン(Boris Johnson)
じょんそん
Boris Johnson
(1964― )

イギリスの政治家。1964年、ニューヨークで生まれる。父スタンレーStanley Johnson(1940― )はイギリス保守党欧州議会議員を務めた政治家、母(1979年にスタンレーと離婚)は画家。弟のジョーJo Johnson(1971― )も下院議員を務めた。名門私立学校のイートン校を卒業した後、オックスフォード大学で古典学を学んだ。保守的な『デイリー・テレグラフ』紙のブリュッセル特派員として、EUに批判的な記事を数多く執筆し、注目を集め、また公営放送BBCの風刺番組の出演者として国民的な知名度を獲得する。『スペクテイター』誌の編集長を経て、2001年下院議員に初当選する。2期目途中の2008年、ロンドン市長選に出馬して当選するが、2015年、総選挙で下院議員に復帰する。

 2016年6月に行われたEU残留の是非をめぐる国民投票では、イギリス独立党のファラージNigel Farage(1964― )とともに、離脱派キャンペーンの中心的人物となった。キャメロン首相の辞意表明後に行われた保守党党首選への出馬を見送り、メイ政権で外務大臣を務めたが、メイがEUと結んだ離脱協定案を、イギリスの主権を過度に制約するものだと批判して辞任した。2019年7月、メイが合意案に対する議会の支持を得られず辞任したあと、後任の首相に就任する。

 「EUとの合意なしの離脱も辞さず」と主張する一方、議会を5週間にわたって閉会すると表明して国論を二分する論争となった。これに対して、最高裁判所は議会閉会を違法だと判断した。EUとの新たな離脱案に合意したジョンソンは、自らを国民投票で離脱(ブレグジット)を支持した「一般の人々」の代弁者と位置づける一方、国会議員や裁判官のような「エリート」が民意の実現を妨げているというポピュリズム的なレトリックに訴え、世論の支持を集めた。2019年12月総選挙で、保守党は国民投票でEU離脱を支持した有権者の票を集めて大勝し、2020年1月にイギリスはEUから離脱した。同年2月に始まった新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行では、リバタリアン(自由至上主義者)的な立場から厳格な行動規制に消極的な態度をとり、初動の遅れから多くの犠牲者を出したため、厳しい批判にさらされた。

 毀誉褒貶(きよほうへん)に満ちた政治家と評される。

[池本大輔 2022年3月23日]

 ロックダウン中の2020年5月に首相官邸でパーティを開くなど、さまざまな不祥事から保守党内の支持を失い、2022年7月に党首を辞任、9月に首相を退任した。

[編集部]

『池本大輔著「イギリス:強硬離脱の原因とその帰結」(『混迷する欧州と国際秩序』所収・2020・日本国際問題研究所)』『池本大輔著「英国:変化を加速させた新型コロナ危機」(植田隆子編著『新型コロナ危機と欧州:EU・加盟10カ国と英国の対応』所収・2021・文眞堂)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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