偶さか(読み)タマサカ

デジタル大辞泉 「偶さか」の意味・読み・例文・類語

たま‐さか【偶さか/適さか】

[副](「に」を伴っても用いる)
思いがけないさま。偶然であるさま。たまたま。「―めぐりあった好機」「―に旧友と出会う」「―の来客
機会が数少ないさま。まれに。たまに。「―郷里に帰ることもある」「―の休日
[形動ナリ]
まれであるさま。
「通ふ人もいと―なり」〈手習
めったにないと思われるさま。ひょっとしてそうなるさま。万一
「もし天竺てんぢくに―に持て渡りなば」〈竹取
[類語]偶然たまたまひょっこり臨時随時不時不定期折に触れて当座時には時として往往時時ときどき時折折折時たま間間折節散発間欠周期的とかく時にたまややもすればともすると得てしてなにかにつけ何かと言えばもし仮にたとえもしかよしんばたといよしやもしも万一万一ばんいち万が一万万一もしやもしかしたらもしかするとひょっとするとひょっとしたらひょっとしてあるいはもしかしてどうかすると下手すると一つ間違えばあわよくばまかり間違うよもやまさか万万ばんばん夢かうつつ図らずもはしなくはしなくも思いがけず思いも寄らない思いのほか心外突然唐突案に相違する意表を突く意表予想外意想外ゆくりなくまぐれひょんなひょっとゆくりなし我にもなく期せずして悪くすると事と次第による事によるともしくははたまたないしかも知れない思わず思わず知らず我知らず知らず知らず折もあろうに折悪しく慮外存外望外

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「偶さか」の意味・読み・例文・類語

たま‐さか【偶・適】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )
  2. 思いがけないさま。偶然であるさま。
    1. [初出の実例]「玉坂(たまさかに)吾が見し人を如何にあらむ縁(よし)をもちてかまた一目見む」(出典万葉集(8C後)一一・二三九六)
    2. 「邂逅(タマサカニ)児有る家に次(やど)り、遂に是の子を得たり。〈興福寺本訓釈 上音解反下后反 二合太万左加爾〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
  3. まれであるさま。その場合とか機会が数少ないさま。
    1. [初出の実例]「よき帯などたまさかにありけるなども、皆大将殿に奉り給ふ」(出典:落窪物語(10C後)四)
    2. 「偶(タマ)さかの来客も冷へた茶一杯で追返され」(出典:くれの廿八日(1898)〈内田魯庵〉一)
  4. めったにないさま。あまり期待できないが、ひょっとしてそうなるさま。多く、「に」「にも」を伴って副詞的に用いられる。
    1. [初出の実例]「若し天竺(てんぢく)にたまさかにもて渡りなば」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. 「たまさかにも、おぼし召しかはらぬやう侍らば〈略〉必ず、かずまへさせ給へ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)

偶さかの語誌

( 1 )奈良時代の用例の意と解されるが、平安時代になるとこの意は「たまたま」が担い、「たまさか」は時間的に長い間隔があることを意味する、あるいは仮定条件句とともに用いられての意を表わすようになった。
( 2 )女性の手になる作品、たとえば「蜻蛉日記」では「たまさか」は使用されているが「たまたま」は現われない。また、他の女流作品でも「たまたま」は僅少である。一方、男性の手になる「方丈記」や「徒然草」には「たまさか」は見られないという事実から「たまさか」は女性的な用語であったと思われる。→「たまたま(偶)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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