切れる(読み)キレル

デジタル大辞泉 「切れる」の意味・読み・例文・類語

き・れる【切れる】

[動ラ下一][文]き・る[ラ下二]
力が加わって、ひと続きのもの、つながっているものなどが分かれる。「ひもが―・れる」「緊張の糸が―・れる」
傷ついたり、裂け目ができたりする。「ひびが―・れる」「手の―・れるようなさつ

㋐破れ崩れる。「堤防が―・れる」
㋑こすれてへる。すりきれる。「着物の裾が―・れる」「靴下が―・れる」
つながっていた関係がなくなる。「縁が―・れる」「彼女とはもう―・れた」

㋐今まで続いていたものが、途中やあるところでなくなる。「音信が―・れる」「電話が―・れる」「―・れた雲間から光がさす」
㋑並び続いているものがとだえる。「町並みが―・れる」「人通りが―・れる」

㋐売れたり使いきったりして今まであった物がなくなる。「品物が―・れている」「油が―・れる」
㋑それが有効である一定の時間・期間が終わりになる。「期限が―・れる」「車検が―・れる」「麻酔が―・れる」
㋒ある基準以下になる。不足する。「元値が―・れる」「目方が―・れる」
突然おこりだす。逆上する。かっとなる。「彼はすぐに―・れるから怖い」
振り落としたり、したたらせたりした結果、水分がなくなる。「洗った野菜の水気が―・れる」
進む方向が横へそれる。左右いずれかへ曲がる。「道が左へ―・れる」「打球が―・れる」
10 トランプ・カルタなどのふだがよくまじり合う。
11 囲碁で、石がつながらない状態になる。
12
㋐刃物の切れ味が鋭い。「よく―・れる刀」
㋑見事な効果を示す。「技が―・れる」
㋒頭の働きが速く、物事をてきぱきと処理する能力にすぐれる。「頭が―・れる」「―・れる男」
13 (「息がきれる」の形で)激しい運動などのあと、せわしく苦しそうに呼吸する。
14 (「しびれがきれる」の形で)
㋐足がしびれる。
㋑待ちくたびれる。
15 (動詞の連用形に付いて、多く打消しの語を伴って用いる)
㋐最後までしとおすことができる。「こらえ―・れずに泣き出す」「逃げ―・れないと観念する」
㋑すっかり…することができる。「食べ―・れないほどのごちそう」
16 物事のきまりがつく。
「よき事もわろき事も其時ことは―・るるなり」〈愚管抄・五〉
17 勢力をもつ。幅が利く。
「わしゃあこではえらう―・れるがな」〈滑・膝栗毛・五〉
18 気前よく振る舞う。金離れがよい。
「是でもはづむ所では随分―・れて見せるよ」〈滑・浮世床・初〉
[下接句]油が切れる息が切れる堪忍袋のが切れるしびれが切れる手が切れる元が切れる
[類語](1)(2破れるやぶける裂けるほころびる擦り切れる千切ちぎれる張り裂ける破裂するパンクする/(7堪忍袋の緒が切れる腹の虫が治まらない腹に据えかねる喧嘩早い喧嘩っぱや癇癪かんしゃく癇癖癇性ヒステリック虫気怒り腹立ち憤り怒気瞋恚しんい憤怒ふんど・ふんぬ憤懣ふんまん鬱憤うっぷん義憤痛憤悲憤憤激憤慨ふんがい立腹激怒逆鱗げきりん憤ろしい腹立たしい業腹ちゅうっ腹やけっ腹悲憤慷慨短気気短短慮せっかち性急気早気が短い気忙しい直情径行逆上高ぶるのぼせる激するかっとなるいきり立つはやり立つのぼせ上がる血迷う血走る怒りっぽいぷっつん堪え難いたまらない忍び難いやりきれない激昂激発エキサイトかっか席を蹴る怒り心頭に発するけんか腰ちゃぶ台返し瞬間湯沸かし器

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精選版 日本国語大辞典 「切れる」の意味・読み・例文・類語

き・れる【切】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]き・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] つながっているもの、続いているものなどが分かれ離れる。また、断たれる。絶える。
    1. 一続きになっていたものが、分かれ離れる。
      1. [初出の実例]「いとかうばしき紙にきれたる髪を少しかいわがねてつつみたり」(出典:大和物語(947‐957頃)一〇三)
    2. 傷ついたり、裂け目ができたりする。
      1. [初出の実例]「岐礼(キレ)柴垣 焼けむ柴垣」(出典古事記(712)下・歌謡)
    3. 結びついていたものが離れる。また、つながっていた関係が断たれる。特に、関係のあった男女が離別する。
      1. [初出の実例]「ナカガ qiruru(キルル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「よくマア他(よそ)の人は情人(いろ)に切(キレ)たの止(やめ)たのと言て居られるものだ」(出典:人情本・英対暖語(1838)初)
    4. 音信、話、また、持ち続けていた気持などが絶える、または断たれる。
      1. [初出の実例]「衆中へ捨になにとて地獄に落ぞなれば、捨ども念がきれざる故也」(出典:六物図抄(1508))
    5. (命が)とだえる。死ぬ。
      1. [初出の実例]「家もなき山路もてこしやき食にきるる命をむすびとめずや」(出典:狂歌・古今夷曲集(1666)六)
    6. いき(息)が切れる
    7. 並び続いているものが、とだえる。また、囲碁で、石のつながりがつかなくなる。
      1. [初出の実例]「大抵平仮名だから、どこで切れて、どこで始まるのだか句読をつけるのに余っ程骨が折れる」(出典:坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉七)
    8. 使ったり売れたりして、物が尽きる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
      1. [初出の実例]「不漁だと云って、魚は切れる、誠にお麁末な事サ」(出典:歌舞伎・梅柳若葉加賀染(1819)四立)
    9. ある定められた時間が尽きる。期限になる。
      1. [初出の実例]「余り徐(ゆ)る徐るすると時間が切れるぜ」(出典:花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉下)
    10. ( こらえていた気持が途切れて ) 逆上する。多く、現代の若者が用いる。
  3. [ 二 ] ( 「事きれる」の形で用いられる )
    1. 物事が定まる。
      1. [初出の実例]「二つ三つさしあはせてあしき事の出きぬる上は、よき事もわろき事も其時ことは切(きる)るなり」(出典:愚管抄(1220)五)
    2. ( 物事の結末がつく意から ) 息が絶える。
      1. [初出の実例]「其の日の午の刻計(ばかり)に御こときれにけり」(出典:保元物語(1220頃か)中)
  4. [ 三 ]
    1. 刃物などで、力を加えて、物を分け離すことができる。鋭い切れ味をもつ。
      1. [初出の実例]「コノ カミソリワ qirenu(キレヌ)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    2. ( 転じて ) 物事をうまく処理できる。また、そういう頭脳手腕をもつ。
      1. [初出の実例]「qireta(キレタ) ヒト」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「碌な学問もなく事務の切れるといふ伎倆(うでまへ)でもないが」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵閨閥)
    3. 勢力をもつ。幅がきく。
      1. [初出の実例]「これから山田の妙見町にいっしょにとまって、古市をおごろかいな。わしゃあこではゑらふきれるがな」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)五)
    4. 金銭などを惜しみなく手放す。気前よく行なう。
      1. [初出の実例]「しんだいよしの粋大尽、心のきれたさばき手」(出典:浄瑠璃・賀古教信七墓廻(1714頃)三)
    5. まっすぐ進まないで、横へそれる。また、道などを進んで行って、右または左へ曲がる。
      1. [初出の実例]「ウマガ qiruru(キルル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
      2. 「舞ふ小羽根、よそへきるるな、それ、ゆくな」(出典:浄瑠璃・浦島年代記(1722)七世の鏡)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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