探・捜(読み)さぐり

精選版 日本国語大辞典 「探・捜」の意味・読み・例文・類語

さぐり【探・捜】

〘名〙 (動詞「さぐる(探)」の連用形の名詞化)
① さぐること。様子をうかがうこと。〔延宝八年合類節用集(1680)〕
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉六「『あなたの方が姉さんよ』と藤尾は向ふで入れる捜索(サグリ)の綱をぷつりと切って、逆さまに投げ帰した」
② 特に、敵情をさぐること。また、その者。間者。しのび。探偵。
寺院役職・職衆を決めるための籤。さぐりとるところからいう。
※東大寺続要録(1281‐1300頃)仏法篇「問者々当座之探」
④ 弓の弦の矢筈(やはず)をかける位置。弽(ゆがけ)ごしにさぐってかけるところからいう。苧(お)で鏑巻(かぶらまき)にして、露(つゆ)または中関(なかせき)ともいう。探りの定。
※名語記(1275)八「弓の絃のさぐり如何。探也。捜也。夜などもかれをさぐりて程をしればさくり也」
⑤ 腰刀や打刀の鞘にある反角(かえりづの)の別称。
※咄本・無事志有意(1798)脇差「鍔(つば)は鯰(なまづ)瓢箪(ひゃうたん)、小柄(こつか)は猫に小判(こじり)に月があるから兎がさぐりに有そふな物じゃが」
⑥ 医療の具。創傷や腫れ物の深さをさぐってみるのに用いるもの。消息子。ゾンデ
印判の胴の部分で、人さし指で押える、くぼんだ部分。
擬餌をつけた糸を船尾から海中に投じ、魚群探査を行なうこと、またはその道具のこと。航走しながら鰹などをさがす。訛って「しゃぶり」ともいう。

さぐ・る【探・捜】

〘他ラ五(四)〙
① 目で確認できないものの実体や、その様子、ありかなどを、手足などの感触や音の調子などで求める。あなぐる。
万葉(8C後)一二・二九一四「愛(うつく)しと思ふ我妹を夢に見て起きて探(さぐる)に無きがさぶしさ」
※暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉四「上着のポケットを一つ一つ索(サグ)って」
② さがす。たずね求める。探求する。
※観智院本三宝絵(984)下「九歳にして広智が所にゆきぬ。誓て観音経をさぐりえたり」
③ 人の心や相手の動きなどをひそかに調べる。探知する。
※名語記(1275)八「さぐる如何〈略〉但心のさぐる探る也」
※雁(1911‐13)〈森鴎外〉三「其女の身の上を探(サグ)って見ようともしなかった」
④ 籤(くじ)をとる。特に、寺院で、籤により役職や職衆を決める。
大乗院寺社雑事記‐文明二年(1470)七月二〇日「両若君被探之処、取当鷹司方。此条神慮也」
⑤ 人に知られていない隠れた景勝の地をさがし、その美しい風景を楽しむ。
※いさなとり(1891)〈幸田露伴〉三「梨の花見にまかるの、桃の花を探(サグ)るのと風雅めかすは」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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