曲学阿世(読み)キョクガクアセイ

デジタル大辞泉 「曲学阿世」の意味・読み・例文・類語

きょくがく‐あせい【曲学×阿世】

《「史記」儒林伝から》学問上の真理をまげて、世間権力者の気に入るような言動をすること。「曲学阿世の徒」
[類語]びへつらうびるへつらうおもねる取り入るごますり阿諛あゆおためごかし卑屈取り巻くこびを売る胡麻ごまをする鼻息をうかがう太鼓を叩く機嫌を取る尻尾を振る歓心を買う色目を使う秋波を送る気を引く気を持たせる調子を合わせる追従ついしょうおべっかおべんちゃら諂巧てんこう諂阿てんあ諂曲てんごく諂笑てんしょう諂媚てんび諂諛てんゆ阿付迎合へいへいへいこらぺこぺこ味噌を意を迎える学匪勿体臭い勿体ぶる気取る澄ます格式張る見栄を張る虚勢を張る体裁振る背伸び御大層らしい大層らしい仰仰しい誇大大袈裟おおげさオーバー大層事事ことごとしい大仰おおぎょう針小棒大尾鰭おひれを付ける思わせ振りしなを作る大人振る見せ掛け見せ掛ける行い澄ます取り澄ます飾り気虚栄自意識過剰お高くとまるお高い芝居がかる猫かぶり猫をかぶるもっともらしい

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精選版 日本国語大辞典 「曲学阿世」の意味・読み・例文・類語

きょくがく‐あせい【曲学阿世】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「史記‐儒林伝」の「轅固曰、公孫子務正学以言無曲学以阿一レ世」から ) 曲学をもって時勢や権力者にこびへつらい、世間の人々に気に入られるような言動をすること。
    1. [初出の実例]「例の曲学阿世の故智によりて、ふたたび時にあふべき事をこひねがふ姦計に出しとぞみえたる」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)下)

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四字熟語を知る辞典 「曲学阿世」の解説

曲学阿世

道理に背いた学問によって、時勢・権力などにこびへつらい、世間の人々に気に入られるような言動をすること。

[使用例] 政治は時々ずるい者が出て来て、手前勝手に学者の言葉を援用したことがあったゆえに、我々は極度に曲学阿世を憎むように教えられているが、それはただ曲げたりおもねったりすることが悪かっただけである[柳田国男国語の将来|1935]

[使用例] その詩は宮沢賢治という詩人の代表的な作品で、農民の耐乏生活をよく理解した修道的な美しさの光っている絶唱であったということです。二日に四合というのを、三合と書きかえるのは、曲学阿世の徒のすることです[井伏鱒二*黒い雨|1965~66]

[解説] 漢代の歴史書「史記」に出てくることばで、えんという学者が後輩こうそんこうを諭した発言の中にあります。
 「正しい学問に励み、世の中に発言してくれ。学を曲げて世におもねるな」
 最後の部分が「曲学阿世」です。つまり、「学問の目的を曲げて、世の中に迎合するな」といましめたのです。
 このことばを語る際、よししげるのエピソードは外せません。
 終戦後の一九五〇年、当時の吉田首相は西側諸国とだけ講和条約を結ぶ「単独講和」を急いでいました。ところが、東大総長のなんばらしげるは、交戦国すべてとの「全面講和」を主張しました。吉田は党の会合南原のことを「曲学阿世の徒(=やつ)」と批判しました。
 他人を公然と罵倒すべきではありません。ただ、吉田の場合、当時の人々にも難しいことばを使い、煙にまいていた面があります。労働運動家のことを「ていやから」(=けしからぬ連中)と、やはり難しく批判したこともあります。

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