気取る(読み)キドル

デジタル大辞泉 「気取る」の意味・読み・例文・類語

き‐ど・る【気取る】

[動ラ五(四)]
体裁をつくろい、もったいぶったり、とりすましたりする。「人前で―・る」「―・った話し方」「―・らない人柄
(「…をきどる」の形で)そのものになった気で、それらしい振る舞いをする。「秀才を―・る」
それと感づく。けどる。
「要介がどうか床をいそぐやうすゆゑ、女中―・るこころなり」〈洒・二蒲団〉
心を配って、用意しておく。
「ここに一本あるから、肴も少し―・ってくんな」〈伎・四谷怪談
[類語]勿体ぶる澄ます格式ばるしゃれる見栄を張る虚勢を張る気を持たせる体裁振る背伸び勿体臭い御大層らしい大層らしい仰仰しい誇大大袈裟おおげさオーバー大層事事ことごとしい大仰おおぎょう針小棒大尾鰭おひれを付ける思わせ振りしなを作る大人振る見せ掛け見せ掛ける行い澄ます取り澄ます飾り気虚栄自意識過剰お高くとまるお高い芝居がかる猫かぶり猫をかぶるもっともらしいびるへつらおもねる取り入る胡麻ごますり阿諛あゆおためごかし卑屈へつら取り巻くこびを売る胡麻ごまをする鼻息をうかがう太鼓を叩く機嫌を取る尻尾を振る歓心を買う色目を使う秋波を送る気を引く気を持たせる調子を合わせる追従ついしょうおべっかおべんちゃら諂巧てんこう諂阿てんあ諂曲てんごく諂笑てんしょう諂媚てんび諂諛てんゆ阿付迎合へいへいへいこらぺこぺこ曲学阿世味噌を意を迎える

け‐ど・る【気取る】

[動ラ五(四)]《古く「けとる」とも》
多く「けどられる」の形で用いる)その場の雰囲気相手のようすなどから、事情を感じ取る。感づく。「二人関係を―・られないように振る舞う」
魂を奪う。正気でない状態にする。
「ものも言はず、息もし侍らず。何か物に―・られにける人にこそ」〈手習

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「気取る」の意味・読み・例文・類語

き‐ど・る【気取】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. それと感づく。察知する。推しはかって思う。解する。けどる。
      1. [初出の実例]「ソレそこをきどらねヱでやみ雲ぬしが出てあるいちゃア」(出典:洒落本・通人三国師(1781)発端)
    2. 心を配る。用意しておく。
      1. [初出の実例]「酒といふところをきどろふではないか」(出典:咄本・鯛の味噌津(1779)色男)
    3. 気持をむけている様子をする。思わせぶりをする。
      1. [初出の実例]「帰り際に尻目で鳥渡後の方、少し娘へ気とるべし」(出典:洒落本・根柄異軒之伝(1780)色事伝授)
    4. 様子をまねてふるまう。
      1. [初出の実例]「日本では御祭りや何かにゃア赤い玉を書た旗を樹(たて)るから夫にきどって大きく赤玉を拵へて」(出典西洋道中膝栗毛(1874‐76)〈総生寛〉一三)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 体裁を飾る。もったいぶる。おつにすます。
    1. [初出の実例]「これに反して気取りたる若紳士などは新婚旅行といひて、西洋風に」(出典:東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉下)

け‐ど・る【気取】

  1. 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙 ( 古くは「けとる」か )
  2. 正気を失わせる。魂をうばう。
    1. (イ) 物の怪(け)などが魂をうばう。
      1. [初出の実例]「いといたくわかびたる人にて、物にけとられぬるなめり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
    2. (ロ) 魅力、美しさなどが心をうばう。魅了する。
      1. [初出の実例]「などこの名だたるかたちのみこ、大将にけどられたる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)
  3. 相手の気配や周囲の様子などから、表には現われていない本心、内意を察知する。感づく。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
    1. [初出の実例]「鶯にけどらるるなよ不性垣」(出典:俳諧・七番日記‐文化一一年(1814)二月)
  4. 気取(きど)る。
    1. [初出の実例]「よいじぶん・さんごじゅ提てけどる妻」(出典:雑俳・桜狩(1743))

かど・る【気取】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「けどる(気取)」の変化した語 )
  2. 魂をうばう。けどる。
    1. [初出の実例]「鬼魔のために、かとらる如何」(出典:名語記(1275)九)
  3. 様子を見てそれと感じさとる。感づく。察知する。けどる。
    1. [初出の実例]「いやいや、かとられて生害にあはんは却ってふ覚なるべし」(出典:信長記(1622)一五上)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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