白酒(しろざけ)(読み)しろざけ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「白酒(しろざけ)」の意味・わかりやすい解説

白酒(しろざけ)
しろざけ

白濁した濃い酒で、甘味が強い。もとは物見遊山にも携えたが、近世以降は3月3日の桃の節供雛祭(ひなまつり))に飲む酒として知られている。蒸し米、米麹(こめこうじ)を焼酎(しょうちゅう)とともに仕込み、約1か月熟成させたもろみをすりつぶしてつくる。アルコール分9%、エキス分45%で、甘くどろりとした酒。白酒同類のものとして筑前(ちくぜん)(福岡県)博多(はかた)産の練酒(ねりざけ)が有名で、室町中期の禅僧大極(だいきょく)の日記『碧山日録(へきざんにちろく)』応仁(おうにん)2年の条(1468)にすでにその記事がみえる。厳冬清酒に蒸し糯米(もちごめ)を加え、あるいは麹を加えて保存し、石臼(いしうす)でひいてつくった。濃く滑らかで甘く、これが江戸に伝えられると下戸(げこ)、婦女子に至るまで好んだという。「山川」「初霜(はつしも)」などの銘柄が知られ、歌舞伎(かぶき)にも「山川」白酒が登場している。神田(かんだ)鎌倉河岸(がし)(東京都千代田区)にあった酒店豊島屋(としまや)の白酒は有名で、例年2月末には「酒醤油(しょうゆ)相休申候」と大書して、白酒のみを商い、門前に市(いち)が立つほどのにぎわいを呈し、『江戸名所図会(ずえ)』にもその繁盛ぶりが描かれている。1000石を売り尽くしたという。雛祭は女子主人役をつとめる封建時代唯一祭りで、白酒の果たした役割は大きかったと思われる。1939年(昭和14)ころには年間100キロリットルくらいが日本全国で飲まれていた。

[秋山裕一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android