(読み)ソ

デジタル大辞泉 「素」の意味・読み・例文・類語

そ【素】[漢字項目]

[音](漢) (呉) [訓]もと もとより
学習漢字]5年
〈ソ〉
染めてない絹。白絹。「素絹縑素けんそ
白い。白。「素衣素雪緇素しそ
生地のままで手を加えてない。飾りけがない。「素材素質素朴簡素質素
物事を成り立たせるもと。根本になるもの。「素因素地素粒子元素色素毒素要素
もとからの。ふだんの。「素行素志素養平素
伴うべきものがない。「素餐そさん素封家
簡単な。「素読素描
元素の名に用いる語。「塩素酸素水素炭素
〈ス〉
地のままで何もつけていない。「素足素顔素手素肌素面すめん
地位など何も持っていない。「素町人素浪人
[名のり]しろ・すなお・もと
難読素湯さゆ素面しらふ素人しろうと素麺そうめん素見ひやか

す【素】

[名]
装わないで生地きじのままであること。また、他のものが加わらないでそのものだけであること。「化粧せずのままで店に出る」
日本の音楽・舞踊演劇などの演出用語。芝居用の音楽を芝居から離して演奏会風に演奏したり、長唄囃子はやしを入れないで三味線だけの伴奏で演奏したり、舞踊を特別の扮装ふんそうをしないで演じたりすること。「で踊る」「浄瑠璃を語る」
[接頭]
形容詞に付いて、非常に、ひどく、の意を表す。「ばしこい」「早い」
名詞などに付く。
㋐平凡な、みすぼらしい、などの意を表す。「浪人」「町人」
㋑ただそれだけの、ありのままの、純粋な、などの意を表す。「顔」「足」「うどん」

す【素/蘇】[漢字項目]

〈素〉⇒
〈蘇〉⇒

そ【素】

染めてない絹。白絹。
数学で、二つの数・式の一方がそれぞれ他で整除できない関係にあること。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「素」の意味・読み・例文・類語

す【素】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 他の要素がつけ加わらない、ありのままのさまをいう。そのままであること。他の語と複合して、「素肌」「素手」「素足」「素顔」「素焼」などと用いることもある。
      1. [初出の実例]「何によらずかざりつくろひのなきを、すのままなど云、素の字也」(出典:志不可起(1727))
      2. 「素(ス)で貸しては、踏まれる事が、みすみす見えてあるわいの」(出典:歌舞伎・三千世界商往来(1772)口幕)
    2. 邦楽用語。本式の演出に対する略式の演出。芝居用の音楽を芝居から離して純演奏会風に演奏したり、鳴物入りの長唄を三味線だけの伴奏で演奏したり、伴奏入りの声曲を無伴奏でうたったりすること。→素語り素謡(すうたい)素唄
    3. 日本舞踊で、特別な扮装(ふんそう)をせず、黒の紋付に袴(はかま)、または着流しで踊ること。素踊り。
  2. [ 2 ] 〘 接頭語 〙 名詞などの上に付けて用いる。
    1. 多く人を表わす語に付いて、平凡である、みすぼらしいなど軽べつの意を添える。「素町人」「素浪人」など。
      1. [初出の実例]「す奴め邪魔ひろぐか。そこ退て勝負させい」(出典:浄瑠璃・新うすゆき物語(1741)下)
    2. ただ、それだけである、他の要素が加わらない意を添える。「素一分」「素一本」など。
    3. 状態や様子を示す語の上に付けて、そのさまを強調する意を添える。「素寒貧」「素早い」「素頓狂」など。

そ【素】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 彩色を施してない生地。しろぎぬ。生絹。
    1. [初出の実例]「時による・素を引事も浦の網」(出典:雑俳・軽口頓作(1709))
    2. [その他の文献]〔古詩‐為焦仲卿妻作詩〕
  3. 白色。白。
    1. [初出の実例]「素片還慙芳意素、紅房温対酔顔紅」(出典:菅家文草(900頃)一・翫秋花)
    2. [その他の文献]〔詩経‐召南〕
  4. かざりけのないこと。いつわりのないこと。また、素直なこと。
  5. もって生まれたもの。本質的なもの。どだい。したじ。たち。
    1. [初出の実例]「女教の素あるを暁り、育児の法をも知るに足るべし」(出典:華族の海外留学を奨励し給へる勅諭‐明治四年(1871)一〇月二二日)
    2. [その他の文献]〔呂氏春秋‐審分覧〕
  6. 平生。つね。日常。平素。
    1. [初出の実例]「客星変異之時上奏、先年若其事黙止者、此時可遂歟、於旨趣者、偏在叡慮、但政道之反素、是其肝心也」(出典:玉葉和歌集‐寿永二年(1183)六月九日)
  7. 数学で、数または整式の関係の一つ。いくつかの数または整式のどの二つの最大公約数も1のとき、それらの数または整式は互いに素であるという。

すっ【素】

  1. 〘 接頭語 〙 名詞・動詞・形容動詞の上に付いて、下にくる語の意味を強調する。東京語はじめ関東で多く用いられる俗な言い方。「すっとんきょう」「すっ影」「すっとぶ」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「素」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 10画

[字音]
[字訓] しろぎぬ・もと・もとより

[説文解字]
[金文]

[字形] 象形
糸を染めるとき、束の上部の結んだ部分が白く染め残される。その部分を素という。糸の上部は、その結んだところ。〔説文〕十三上に「白の緻(きめこま)かき(きぬ)なり。糸と垂とに從ふ。其の澤あるを取るなり」とするが、垂に従う字ではない。染め残されたところが本来の色であるので、すべて手を加えない以前の状態をいう。

[訓義]
1. しろ、しろぎぬ、むじ。
2. もと、もとのいろ、もとの状態。
3. もとより、まえから、あらかじめ、つね。
4. たち、本来の性質、まこと、ただしい、すなお。
5. むなしい、いたずら、何も加えない、無位。

[古辞書の訓]
名義抄〕素 キヌ・シロシ・カナフ・モトヨリ・ムナシ・ワヅラフ・ミサホナリ・スナホニ・キオツ 〔字鏡集〕素 キヌ・キオツ・キヨシ・ワヅラフ・ムナシ・モト・アヅカル・タダシ・カナフ・ミサホナリ・ヲキヌノ・スナホニ・シロシ・モトヨリ

[部首]
〔説文〕に(しやく)・(かん)など四字を属し、〔玉〕に彝(い)の字を加える。はのち綽綰(しやくわん)に作り、緩やかにする意。彝は鶏を羽交いに締めて鶏血をとる象形の字であるから、素の字形を含むものではない。素に従う字は、もと染色に関する字であった。

[語系]
素sa、索sheakは声近く、素は糸を染めるとき、その糸束の上部を結んで漬す。索はその結ぶところに横木をつけ、ねじて索縄とすることをいう。

[熟語]
素足・素堊・素衣・素帷・素意・素位・素一・素隠・素羽・素雲・素・素栄・素影・素謁・素艶・素王・素娥・素懐・素官・素冠・素館・素簡・素・素顔・素願・素几・素気・素肌・素旗・素輝・素・素仇・素旧・素業・素琴・素錦・素襟・素・素契・素景・素・素霓・素結・素月・素軒・素検・素絢・素絹・素・素臉・素故・素交・素光・素行・素侯・素構・素毫・素彩・素材・素・素札・素・素粲・素・素士・素糸・素志・素瓷・素歯・素肆・素地・素辞・素識・素室・素質・素車・素手・素修・素秋・素書・素粧・素裳・素尚・素情・素色・素食・素心・素身・素親・素人・素誠・素毳・素石・素昔・素雪・素節・素賤・素蟾・素饌・素・素膳・素・素族・素・素湍・素端・素朝・素波・素白・素魄・素髪・素幡・素描・素貧・素膚・素服・素幅・素冕・素封・素抱・素望・素樸・素木・素朴・素明・素面・素門・素約・素友・素誉・素養・素来・素里・素履・素流・素練・素廉・素論
[下接語]
華素・雅素・愨素・寒素・閑素・簡素・素・虚素・軽素・潔素・倹素・謙素・元素・後素・皓素・縞素・緇素・色素・質素・宿素・純素・素・情素・心素・尺素・太素・道素・徳素・貧素・平素・抱素・朴素・要素・養素

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「素」の意味・わかりやすい解説

素 (す)

日本の音楽や舞踊で用いることば。〈素〉の意味はもともと,飾り気がなく,それ自身ということで,音楽の面では〈素唄(すうた)〉〈素謡(すうたい)〉〈素浄瑠璃〉〈素語り〉〈素で演奏する〉などと用いられる。長唄に関していえば,芝居から離れた純演奏会様式のものを〈素唄〉といい,また囃子なしで,三味線の伴奏だけで奏することを〈素〉ともいう。能では伴奏なしにうたうことを〈素謡〉と称するし,浄瑠璃では,人形芝居や歌舞伎から離れ,演奏会様式で純粋に音楽を味わうものを〈素浄瑠璃〉,三味線の伴奏なしに浄瑠璃を語ることを〈素語り〉などと呼ぶ。また,舞踊では特別な衣装をつけず,普通の服装のままで踊ることを〈素踊〉という。
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