リキュール(英語表記)〈フランス〉liqueur

精選版 日本国語大辞典 「リキュール」の意味・読み・例文・類語

リキュール

〘名〙 (liqueur)⸨リキウル⸩ 蒸留酒などに香味料、砂糖、色素を加えてつくった酒。香りが強く、甘味があり美しい色をしている。ベルモットキュラソーペパーミント、クレーム‐ド‐ビヨレなど。リキュー酒。
※日本貿易新聞‐元治元年(1864)七月二三日「葡萄酒、焼酒、砕酒、仏蘭西産リキウル糠漿其外諸品精々入念吟味仕差上申候」

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デジタル大辞泉 「リキュール」の意味・読み・例文・類語

リキュール(〈フランス〉liqueur)

アルコール蒸留酒に、糖分・果実エキス・香料などを加えた混成酒。フランスが本場。キュラソーペパーミントベルモットなどがあり、ディジェスチフカクテルの材料とする。
[類語]酒類さけるい酒類しゅるい般若湯アルコール御酒お神酒銘酒美酒原酒地酒忘憂の物醸造酒蒸留酒混成酒合成酒日本酒清酒濁酒どぶろく濁り酒生酒新酒古酒樽酒純米酒灘の生一本本醸造酒吟醸酒大吟醸冷や卸し屠蘇とそ甘露酒卵酒白酒甘酒焼酎泡盛ビール葡萄酒ワインウイスキーブランデーウオツカラムテキーラジン焼酎果実酒梅酒薬酒やくしゅみりん白酒しろざけ紹興酒ラオチューマオタイチューカクテルサワージントニックジンフィーズカイピリーニャマティーニ

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リキュール」の意味・わかりやすい解説

リキュール
りきゅーる
liqueur

リキュールの語源はラテン語のリクオルliquor(液体)からきており、これが古代フランス語のlicurとなり、現在のliqueurに変化したものである。

[原 昌道]

分類・定義

醸造酒や蒸留酒または純アルコール液に香料、色素を加えて香味づけをし、果実、種子、草根木皮などの風味と糖類の甘味を加えた特有の芳香がある、アルコール分の強い、甘い酒である。ただ、わが国の酒税法でいうリキュール類とは、製成された酒類と糖類、香味料、色素を原料とし、アルコール分が15%以上、エキス分が2%以上のものである。ただし、清酒、合成清酒、焼酎(しょうちゅう)、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類、発泡酒に該当するものは除かれる。

 フランスでは普通物ordinaires、上物fines、極上物surfinesとに分け、極上物にcrèmesとelixirsとがある。この区分はアルコール度数と糖分量による。たとえば上物は24.5%のアルコール分、40~50%の糖分を必要とし、極上物はアルコール分26.5%、糖分45~50%で香りも強くなっている。イギリス、アメリカではリキュールをコーディアルcordialという。これはラテン語コルディアーリスcordiālis(医薬)からきている。なお、アメリカのリキュールは、最終製品に2.5%以上の砂糖またはブドウ糖を含有していることと、合成香料、イミテーション香料は使用してはならないことになっている。

[原 昌道]

歴史

古代にはバラ水のような香水をつくる技術があったが、飲み物としてはヨーロッパの修道院で創製されたものが多く、初めは医薬として薬草を用いたものである。13世紀にはオレンジの花、レモン、バラなどからリキュールがつくられた。14世紀にヨーロッパでペストが大流行した際には、植物性の香油や強壮剤を用いたリキュールは宝物のような薬であった。その後イタリアを経て16世紀ころからフランスの宮廷を中心にもてはやされ、一方では薬酒として寺院などで製造された。19世紀には今日のリキュール産業の基礎ができあがり、多くの著名なリキュールが生み出された。20世紀にはアメリカを中心としてカクテルの飲用が高まり、リキュールは新しい飲み方をされるようになり今日に至っている。一方、中国ではリキュールは薬酒として古くからつくられており、漢方の古典といわれる『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』(西暦紀元前後)に、薬を酒に浸して飲むことが記されている。また1596年に出された『本草綱目』のなかには、69種の薬酒が載っている。わが国でも薬酒の歴史は古く、平安時代に宮中で用いられた屠蘇(とそ)酒が初めだといわれる。この酒は中国からきたもので、後漢(ごかん)の名医華陀(かだ)の創作である。

[原 昌道]

作り方

リキュールに特有の香味成分をつける方法として次の三つがある。

(1)浸出法 香味物質をアルコールやブランデーに浸漬(しんし)し、香味成分を抽出する。果実や草本系の原料は主としてこの方法を用いる。

(2)蒸留法 浸出法で得られる浸出液を蒸留し、香味成分をアルコールとともに留液中に留出させる。

(3)エッセンス法 天然または合成の精油、そのほかの香味成分をエッセンスの形に調製したもの。

 調合は、このようにしてつくられた香味液に、アルコール、ブランデー、ラムなどの酒類や、糖類などの呈味物質や色素、水などを加え、短期間熟成して、清澄、濾過(ろか)、瓶詰にする。酒類としてはジン、キルシュ、ウォツカ、ワイン、ウイスキーなども用いられる。

[原 昌道]

種類と特色

リキュールは種類が非常に多く、成分もまちまちであるが、一般にアルコール分は25~50%、エキス分は25~50%で、甘くて、特有の香りがある。リキュールを原料別に分けると、果実系(サクランボなどの果実を使用する)、果皮系(柑橘(かんきつ)類の果皮を使用する)、種子系(キャラウェーの実などを使用する)、草本系(各種の芳香植物の根、茎、葉、つぼみを原料にする)、花系(花の香味をつける)、乳化系(乳化製品を使用する)などに分かれ、その種類は多く、また香料物質の配合では各社独自の方法がなされている。

[原 昌道]

飲み方

リキュールは一般にアルコール分と糖分が強いので、ストレートで飲むよりは、食前酒として食欲増進用に、食後酒として清味用に少量飲まれる。そのほか、カクテル、製菓用にも使われる。梅酒はホームリキュールとして家庭で広く飲用されており、薬味酒は滋養強壮剤として飲まれている。

[原 昌道]


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改訂新版 世界大百科事典 「リキュール」の意味・わかりやすい解説

リキュール
liqueur[フランス]

醸造酒や蒸留酒を基酒とし,これに草根木皮などの生薬類や果実,花その他の香味料,および着色料,糖類などを配合してつくる酒。日本の酒税法では,〈酒類と糖類,その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類で,エキス分が2度以上のもの〉と規定されており,100ml中に2g以上の不揮発性成分を含む甘味の再製酒を指す。

 リキュールの語は,〈液化されたもの〉を意味するラテン語liquorに由来し,英語で蒸留酒をさすリカーと同語源である。イギリスではリキュールのことをコーディアルcordialとも呼ぶ。リキュールは古代ギリシアのヒッポクラテスらが蒸留水に他の材料を加えて味と香りをつけたものに始まるとされる。今でいえばソフトドリンクのような,こうした混合飲料は,13世紀ころアラビア人の錬金術師たちによってアルコールをベースにするものになったという。やがてそれはヨーロッパに伝わり宮廷,修道院などでつくられるようになったが,その発展進歩はとくに薬酒の開発に力を注いだ修道院に負うところが大きかった。リキュールの双璧とされるベネディクティンシャルトルーズは,それぞれ16,17世紀初頭にフランスの修道院で創製されている。日本でも古くからこの種の酒があった。正月のとそや重陽の菊酒などは平安期から行われ,江戸時代には白酒やみりんのほか,清酒や焼酎に果実,薬草その他を浸漬(しんし)して,多くの種類がつくられた。《本朝食鑑》(1695)には忍冬(にんどう)酒以下,16種が挙げられており,その中にはマムシ酒も見られる。

 リキュールの製法は大別して浸漬法,蒸留法,エッセンス法の3種になる。浸漬法は生薬,果実,果皮,花などを基酒に浸漬して,その香味や色素を浸出させるもので,浸漬温度,期間が品質を左右する。梅酒などの果実リキュールその他の日本のものは大部分がこれである。蒸留法は基酒と配合材料をいっしょに蒸留機に入れて蒸留するもので,良質のリキュールはおおむねこの方法でつくられる。エッセンス法は基酒にエッセンス,色素などを調合してつくるもので,製法は簡単だが,高級品はないといってよい。ただし,実際には以上3種の方法を適宜組み合わせてつくられることが多い。リキュールの分類は原料面から行うことも多いが,ここでは次のように区分した。

(1)ハーブ(香草)系 各種の芳香植物を配合するもので,薬酒として,修道院などでつくられてきたものが多い。ベネディクティンとシャルトルーズのほか,アブサンキュンメルペパーミントアイリッシュミストドランビュイ,カンパリなどが知られる。アイリッシュミストはアイリッシュウィスキーを基酒とし,香草類やはちみつを加えたもの,ドランビュイも同じタイプでスコッチウィスキーを基酒とする。いずれもアルコール分40%。カンパリはイタリア産のビタースの一種で,苦味と甘味をもつ深紅色の酒である。

(2)果実・果皮系 核果類を使うものではサクランボ,アンズ,モモをブランデーに浸漬してつくるチェリーブランデーアプリコットブランデーピーチブランデーなどのほか,スローと呼ぶスモモをジンに浸漬してつくるスロージンがある。また,マラスキーノはマラスカ種のブラックチェリーを原料としてつくった蒸留酒にハーブ類や糖分を加えたものである。漿果(しようか)類を使うものには,それぞれキイチゴ,イチゴを配したフランボアーズ,フレーズなどがある。かんきつ類ではマンダリンオレンジをブランデーなどに浸漬したマンダリン,ビターオレンジの果皮を使うキュラソーが知られている。このほかにもまだ多くの種類があるが,その大半は次のクレーム系にも属するものである。

(3)クレーム系 クレームcrémeの語は,フランスでは高級品のリキュールをいったが,現在では糖分が多く,クリームのようにどろりとしたリキュールに冠することが多い。ブランデーまたはキルシュにカカオその他を配したクレーム・ド・カカオ,コーヒーの香味のあるクレーム・ド・モカなどのコーヒーリキュール,スミレの花の色と香りをもつクレーム・ド・ビヨレ,ハッカの味のするクレーム・ド・マント(ペパーミント)などのほか,パイナップルやバナナなどのトロピカルフルーツを使うもの,あるいはクレーム・ド・ペコーなどのように紅茶を使ったものもある。いずれもアルコール分25~30%,糖分40~50%できわめて甘く,カクテルに多用される。

(4)その他 オランダ産のアドボカートはブランデーと卵黄を主材料とする黄色の酒,スウェーデン産のカロリックパンチはアラックにレモンその他を配して,黄色を呈する。ゴールトワッサーは金粉の入った酒で,金が万病にきくという俗信に基づいて16世紀末ころダンチヒで創製されたという。糖分を多くし,その比重で金粉を浮かせている。日本産の緑茶リキュールなどもある。
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百科事典マイペディア 「リキュール」の意味・わかりやすい解説

リキュール

醸造酒や蒸留酒に生薬類や果実・花などの香味料,糖類,色素を加えて作った酒。ウイキョウニガヨモギ,ハッカ,レモン,チョウジなどの果実・種子・葉・根の乾燥したものをアルコールにつけて香味成分を浸出させたり,さらにこれを蒸留したものを用いるが,下級品には人造香味料を用いる。食前・食後の飲料として,またカクテルにも用いられる。キュラソーアブサンペパーミントマラスキーノベルモットなどがある。
→関連項目アニゼットカクテルカンパリクレーム・ド・カカオクレーム・ド・カシスクレーム・ド・フランボワーズビタース薬酒

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食の医学館 「リキュール」の解説

リキュール

リキュールはスピリッツをベースに、さまざまな素材の香味成分や糖分などを加えて、味をととのえた酒の総称です。いまでは、おもにカクテルの材料として知られるリキュールですが、もとをたどればそのはじまりは、錬金術師が生命力の回復を求めてつくりだした薬酒。リキュールという名前の語源も、ラテン語で「溶け込ませる」を意味する「リケファセレ」で、錬金術師が薬草や香草の成分を溶け込ませたことに由来しています。
 こうしたルーツをもつだけに、現在販売されているリキュールにも、薬酒的な性格をもつものが少なくありません。軍医が健胃強壮剤としてつくりだしたアンゴスチュラビターズをはじめ、130種以上の薬草を原料とし、修道士が病人の治療に用いていたシャルトルーズ、頭痛や乗り物酔いに効くといわれるペパーミント、産前産後の体力回復や増血によいとされるデュボネ、胃腸の働きを活発にするカンパリなどなど。
 地域的にみると、ラテン系の国では味や香りを重視したものが多く、ドイツや東欧のものに薬効を求める傾向が強くみられるようです。
 これらのリキュールに薬同様の効果を求めるのはまちがいですが、食前酒として少量を楽しんだり、その由来や効用を知っていれば、口にする楽しみも増すことでしょう。

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飲み物がわかる辞典 「リキュール」の解説

リキュール【liqueur(フランス)】


蒸留酒に果実、果皮、薬草、花などを用いて香味成分を添加した混成酒。甘味料や着色成分を加えることが多い。キュラソーカンパリアマレット梅酒など。カクテルや洋菓子の材料としてもよく用いる。酒税法上の品目としては、酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類でエキス分2度以上のものをいい、一般的な意味でのリキュールの他、缶チューハイや「新ジャンル」といわれるビール風飲料の多くがこれに該当する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リキュール」の意味・わかりやすい解説

リキュール
liqueur

精製した飲料アルコールに砂糖やシロップ,着色料,果実,薬草,香草,スパイスの抽出成分を混ぜ合せて造った一種の混成酒。酒税法上は,「酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの」とされていて特にアルコール分の制限はなく,エキス分が2度に達しないものはおもにスピリッツ類に分類される。香気が強く,甘味があるため,食事の味覚を悪くするので食後に用いるのがよいとされている。カクテルの材料としても用いられる。ヨーロッパで多く造られ,ベルモット,アブサン,キュラソーなどが有名である。東洋では薬酒として用いられる程度であったが,日本では近年,洋酒の需要がふえるにつれてリキュールの生産や輸入がふえている。 1989年の消費量は8万 9000klとなっている。

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とっさの日本語便利帳 「リキュール」の解説

リキュール

蒸留酒に薬草、果実などの香味成分を配合し、甘味、着色料などを添加。カクテルベースや洋菓子の香り付けなどに使われ、カンパリ、グラン・マルニエ、カルーアなどが有名。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

栄養・生化学辞典 「リキュール」の解説

リキュール

 酒と糖,香料などを混ぜたアルコール濃度の高い酒.

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世界大百科事典(旧版)内のリキュールの言及

【酒】より

… 日本の酒税法では,酒は〈アルコール分1度(容量比で1%)以上の飲料〉と定義され,液体に限らず糖類でアルコールなどの分子をくるんだ粉末状のものも酒とみなされるが,みそ,しょうゆのようにアルコールを1%以上含むものであっても嗜好(しこう)飲料として供しえないものは酒から除外されている。
【酒の種類】
 酒は,製造法のうえから醸造酒,蒸留酒,混成酒の3種に分類されるが,日本の酒税法では清酒,合成清酒,焼酎,みりん,ビール,果実酒類,ウィスキー類,スピリッツ類,リキュール類,雑酒の10種類に分類される。なお酒税法上の種類名を製品に表示することが義務付けられている。…

【薬酒】より

…毒とされた薬酒の中にはマンドラゴラ酒(マンドラゴラ)などもあり,適切に用いれば深い眠りや痛感の麻痺をもたらすが,使い方を誤れば死に至ると信じられた。今日,これらの薬酒はリキュールに含められ,原料アルコールに加えた各種の植物の香りや味を楽しむ嗜好品としても普及している。リキュール【荒俣 宏】。…

※「リキュール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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