順応(視覚)(読み)じゅんのう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

順応(視覚)
じゅんのう

目の網膜が受ける輝度や色度の変化に対応して視覚系の性質がなじむ過程、およびなじんだ状態をいう。両者を区別する場合は、前者を順応過程、後者を順応状態という。輝度順応は複雑で、昼間とか、よく照明された場所のように、周囲が明るい(1平方メートル当り3カンデラ以上)場合は、網膜の中の錐状体(すいじょうたい)視細胞だけが働く明順応の状態になって、明暗変化も色質もはっきり見ることができる。しかし、月夜とか、照明光を消した場所のように周囲が暗い(1平方メートル当り0.03カンデラ以下)場合には、網膜の中の桿状体(かんじょうたい)視細胞だけが働く暗順応の状態になって、色質の見分けができず、明暗変化が大まかにしかわからない視力の悪い状態になる。順応過程の時間は、方向によって差があり、暗から明への変化では1分以内と短いが、明から暗への変化では5~30分もかかる。このことは、映画館へ入ったときにしばらく何も見えないこと、館から出たときにはまぶしいけれども視覚がすぐ回復するという経験からよくわかる。周囲の輝度が上記の中間の場合には、薄明視といって、錐状体、桿状体の両視細胞が働く視覚状態になり、ここでは赤と青の見え方が大きく変わる。赤は暗くなるとすぐ見えなくなるが、青は暗くなっても見えるという現象がおこる。これをプルキンエ現象という。

 色(いろ)順応は主要照明の色に目がなじむことで、たとえば赤っぽい光の照明に対しては、赤の色覚が緑・青の色覚よりも強く抑制されて、全体としてバランスのとれた色覚になる。このために白い紙は昼光でも白く見え、電球光(黄みを帯びている)で見ても白く感じることになる。カラー写真では色順応がないために、たとえばデーライトタイプのフィルムで電球照明の場所や物を撮影するときには、青色の色温度変換フィルターをカメラレンズの前にかける必要がある。

[東 尭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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