捗捗しい(読み)ハカバカシイ

デジタル大辞泉 「捗捗しい」の意味・読み・例文・類語

はかばか‐し・い【捗しい/果しい】

[形][文]はかばか・し[シク]
物事が望ましい方向へ進むさま。順調に進むさま。多く打消しの語を伴って用いる。「工事の進みぐあいが―・くない」「回復が―・くない」
際立っている。はっきりしている。
「空の気色、―・しくも見えず」〈更級
頼りがいがある。しっかりしている。
「取り立てて―・しき後見しなければ」〈桐壺
身分や行動がきちんとしている。ちゃんとしている。
「都の内といへど、―・しき人の住みたるわたりにもあらず」〈玉鬘
表向きで堂々としているさま。れっきとしている。
「この魚、おのれら若かりし世までは、―・しき人の前へ出づること侍らざりき」〈徒然・一一九〉
ふてぶてしくて、したたかである。
「あら、―・しや、盗人よ」〈謡・烏帽子折
[派生]はかばかしげ[形動]はかばかしさ[名]
[類語](1円滑スムーズすいすいとんとん拍子着着順調快調好調淀みない淀みなく上首尾首尾良くとんとんすらすらみるみるずんずんぐんぐんどんどんはかどる身軽い身軽軽軽かるがる軽快かろやか簡捷かんしょうはしこいすばしこい素早い手早い敏速敏活迅速敏捷びんしょう手ばしこい手早速やか速い足早早足小走り機敏一瀉いっしゃ千里急ピッチ矢の如し目にも留まらぬひらりひょいひょいひょいぴょんぴょんぴょんてきぱきしゃきしゃききびきびクイックスピーディーハイペースさっとちゃちゃとちゃちゃっとさっさとっととついとつっとつとすいとすっとぱっとすたすた電光石火あっと言う間間髪をれず立ち所に即座即刻時を移さずすぐさま途端たちまち刻刻刻一刻時時刻刻次第次第に矢継ぎ早波に乗る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「捗捗しい」の意味・読み・例文・類語

はかばか‐し・い【捗捗・果果】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]はかばか〘 形容詞シク活用 〙 ( 目当て・当てどの意を表わす「はか」を重ねて形容詞化した語 )
  2. 物事が順調に進行するさま。うまくいくさま。
    1. (イ) 動作、処置などが機敏である。とどこおりがなく、しっかりしている。てきぱきと如才がない。
      1. [初出の実例]「一手つかうまつりしを、そもそもはかばかしうや侍りけんにだに覚え侍らず」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    2. (ロ) 思わしい状態である。また、思わしい状態に事が運ぶ。順調である。効果的である。首尾よい。
      1. [初出の実例]「かやうの御ありきには、随身がらこそはかばかしき事もあるべけれ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)
  3. しっかりしていて頼みになる。頼もしい。有能である。役にたつ。
    1. [初出の実例]「はかばかしき人もなく」(出典:落窪物語(10C後)一)
  4. 際立っている。目覚ましい。立派である。また、はっきりしている。明確である。
    1. [初出の実例]「少しはかはかしき物え奉らで死なば、いふかひなき物とおぼすべし」(出典:落窪物語(10C後)四)
  5. 重要である。表向きである。身分が高く、しっかりしている。また、私的生活に対して公である。正式だ。本格的だ。
    1. [初出の実例]「まつりごとの趣をしたため知らむ事は、はかばかしからず、あはつけきやうに覚えたれど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)行幸)
  6. したたかである。ずうずうしい。ふてぶてしい動作、態度などについて、相手に呼びかける時などにいう。
    1. [初出の実例]「あらはかばかしや盗人よ」(出典:謡曲・烏帽子折(1480頃))

捗捗しいの補助注記

「はかない」の「はか」と同じ語根をもち、意味上も「はかない」と対応する。

捗捗しいの派生語

はかばかし‐が・る
  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙

捗捗しいの派生語

はかばかし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

捗捗しいの派生語

はかばかし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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