(読み)トウ(その他表記)winter

翻訳|winter

デジタル大辞泉 「冬」の意味・読み・例文・類語

とう【冬】[漢字項目]

[音]トウ(呉)(漢) [訓]ふゆ
学習漢字]2年
トウふゆ。「冬季冬至越冬旧冬厳冬初冬晩冬立冬
〈ふゆ〉「冬空初冬真冬
[名のり]かず・とし
難読忍冬すいかずら冬瓜とうがん

ふゆ【冬】

四季の第四。の間で、日本では12月から2月までをいう。暦の上では立冬から立春の前日まで(陰暦では10月から12月まで)をいい、天文学では冬至から春分まで。寒く、夜が長い。 冬》「―すでに路標にまがふ墓一基/草田男
[補説]作品名別項。→
[類語]冬場冬季冬期

ふゆ【冬】[書名]

中村真一郎による連作長編小説「四季」の第4作。昭和59年(1984)刊行。
《原題、〈イタリアL'Invernoアルチンボルドの絵画。板に油彩。縦67センチ、横50.5センチ。「四季」と総称される寄せ絵の連作の一。さまざまな木の根や枝などで構成される。ウィーン、美術史美術館所蔵。

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精選版 日本国語大辞典 「冬」の意味・読み・例文・類語

ふゆ【冬】

  1. 〘 名詞 〙 四季の一つ。現在では一二月から翌年の二月まで、旧暦では一〇月から一二月をいう。天文学的には冬至から春分の前日まで、二十四節気では立冬から立春の前日までをいう。四季のうちで最も寒い。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「天そそり 高き立山 布由(フユ)奈都(なつ)と 分くこともなく しろたへに 雪は降り置きて」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇〇三)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「冬」の意味・わかりやすい解説


ふゆ
winter

1年を春夏秋冬の四季に分けたときの第四の季節。秋と春の間にあるが、期間は次のようなとり方がある。

(1)天文学的には太陽黄経が270度の冬至(とうじ)から、これが0度となる春分の前日まで。

(2)気象学上は、北半球では現行暦の12~2月を、また、南半球では6~8月を冬という。

(3)俳句の季語などに使われる冬は立冬(11月8日ごろ)から立春(2月4日ごろ)の前日までをいい、初冬(立冬から大雪(たいせつ)の前日、12月7日ごろまで)、仲冬(大雪から小寒の前日、1月5日ごろまで)、晩冬(小寒から立春の前日、2月3日ごろまで)の三冬(冬全体)に分けていわれることもある。

 冬は、語源的に「冷(ひ)ゆ」が転訛(てんか)して「ふゆ」になったとされている。

[根本順吉・青木 孝]

気象

一年中でもっとも寒い季節で、もっとも気温が下がるのは1月末から2月の初めにかけてである。二十四節気でいうと、それは大寒(1月20日ごろ)から立春のころまでに相当する。低温であることのほか、日本の冬を特徴づける季節的特徴は次のとおり。

(1)日の出の時間が遅く、日の入りの時間は早く、昼の時間が短い。

(2)南中時の太陽高度が低く、日影がもっとも長くなる。

(3)天候は大陸上の寒帯気団に支配され、北西の季節風が卓越する。

(4)この季節風によって、日本海側は雪や雨の日が多く陰湿な天気が続くが、太平洋側では乾燥した晴天が続く。

(5)日本海側の雪は1~2月に多く、太平洋側の雪は2~3月に多い。後者は冬型の気圧配置が弱まり、日本南岸を低気圧が東進するような場合に降る。

(6)都市では多くの人が暖房などの熱を放出するので、冬季の気温は人為的に上昇する傾向があり、郊外と都心とでは数℃の気温差が現れるのも珍しくはない。

[根本順吉・青木 孝]

文学

春・秋に対して夏・冬の存在感はやや希薄だが、四季の季節的な区分が明確な日本の風土の特性から、冬も四季の一つとしてその一角を担い、勅撰(ちょくせん)集の部立(ぶだて)にも入っている。早く『万葉集(まんようしゅう)』から四季の意識はみられ、巻8や巻10に「冬雑歌(ぞうか)」や「冬相聞(そうもん)」に部類されており、景物としては、霰(あられ)、霜、嵐(あらし)などもわずかにあるが、雪が大部分を占め、また梅が数多く詠まれているのが注目される。『古今和歌集(こきんわかしゅう)』「冬」も、雪が中心で、時雨(しぐれ)、冬の山里、氷などがわずかにみられるが、さらに歳暮(せいぼ/さいぼ)という暦意識をもった歌材が加わっているところに特色がある。『後撰(ごせん)集』以後は景物も多様化し、時雨、霰、霜、氷、嵐などとともに水鳥が詠まれるようになり、雪ばかりといった感はなくなる。『古今六帖(ろくじょう)』「歳時(さいじ)」の冬の項目には、初冬、神無月(かんなづき)、霜月(しもつき)、神楽(かぐら)、師走(しわす)、仏名(ぶつみょう)、閏月(うるうづき)、歳(とし)の暮などの題が掲げられている。『堀河(ほりかわ)百首』にはこのほか、網代(あじろ)、鷹狩(たかがり)、炭竈(すみがま)、埋火(うずみび)、除夜など、また、『永久(えいきゅう)百首』には、霙(みぞれ)、初雪、野行幸(ののみゆき)、落葉(おちば)、五節(ごせち)、椎柴(しいしば)、薪(たきぎ)、衾(ふすま)、鴛鴦(おし)、貢調(みつぎもの)、仏名、旧年立春があげられ、冬の歌題はこれらにほぼ尽くされている。『源氏物語』「少女(おとめ)」の六条院の冬の町では、雪と松の垣、霜と菊の籬(まがき)との配合が考えられ、さらに柞原(ははそはら)や深山木(みやまぎ)が彩りを添えている。冬の中心的な歌材である雪は、荒涼として孤絶した風景を形づくるものとして、『後拾遺(ごしゅうい)集』(冬・和泉式部(いずみしきぶ))「さびしさに煙をだにも断たじとて柴折りくべる冬の山里」のように詠まれ、また、冬の花として、あるいは梅の花との紛れとして、『古今集』(冬・紀貫之(きのつらゆき))「雪降れば冬ごもりせる草も木も春に知られぬ花ぞ咲きける」などと詠まれる。冬の月は『万葉集』から詠物(えいぶつ)題としてみられるが、冬、とくに師走の月を「すさまじきもの」とする季節感、また、それに反発するものが、『篁(たかむら)物語』、『うつほ物語』「蔵開(くらびらき) 中」、『源氏物語』「朝顔」「総角(あげまき)」、『狭衣(さごろも)物語』巻2、『更級(さらしな)日記』などにみられ、王朝文学において独特な美意識を形成している。

 季題は冬。雪の花、風花(かざはな)、牡丹(ぼたん)雪、細(ささめ)雪、雪明り雪月夜といった陰影に富んだ季語が数多く生み出されている。

[小町谷照彦]

『根本順吉著『熱くなる地球――温暖化が意味する異常気象の不安』(1989・ネスコ、文芸春秋発売)』『内嶋善兵衛著『四季の農業気象台』(1990・農林統計協会)』『根本順吉著『世紀末の気象』(1992・筑摩書房)』『市川健夫著『日本の四季と暮らし』(1993・古今書院)』『根本順吉著『新版 たのしいお天気――冬のお天気』(1996・小峰書店)』『市川健夫監修、山下脩二著『日本列島の人びとのくらし――わたしたちの国土』(1997・小峰書店)』『黄色瑞華著『一茶歳時記』(1999・高文堂出版)』『平沼洋司著『気象歳時記』(1999・蝸牛社)』『山田圭一撮影『雲の四季』(1999・白水社)』『宮沢清治著『近・現代 日本気象災害史』(1999・イカロス出版)』『饗庭孝男著『文学の四季』(1999・新潮社)』『田中宣一著『三省堂年中行事事典』(1999・三省堂)』『日本気象協会編著『暦と天気のかかわりを探る』(2001・ポプラ社)』『気象庁監修『気象年鑑』各年版(気象業務支援センター)』『石井和子著『平安の気象予報士紫式部――「源氏物語」に隠された天気の科学』(講談社プラスアルファ新書)』

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普及版 字通 「冬」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

(旧字)
5画

[字音] トウ
[字訓] ふゆ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
糸を結びとめた形。末端を終結する形で、(終)の初文。金文に「(霊終)」のように、終の意に用いる。〔馬王堆帛書、老子〕〔銀雀山漢墓竹簡、孫子兵法、勢〕などにも、に作る。〔説文〕十一下に「四時盡くるなり」とし、下部は氷の初形をそえた形とするが、卜文・金文は糸を結びとめた形である。

[訓義]
1. ふゆ。
2. 終の初文、おわり。

[古辞書の訓]
名義抄 フユ

[声系]
〔説文〕に声としてなど四字を収める。の初文。のち秋冬の字に用いて、別にが作られた。

[語系]
tum、tjiumは声近く、古くはを終の意に用いた。四季の名は卜文にみえず、冬を秋冬の意に用いるのは、後起の義である。

[熟語]
冬衣・冬栄・冬温・冬仮・冬花・冬学・冬・冬官・冬季・冬裘・冬禁・冬月・冬・冬冱・冬菜・冬索・冬霰・冬山・冬至・冬時・冬日・冬狩・冬岫・冬集・冬筍・冬醸・冬心・冬節・冬・冬蔵・冬蟄・冬・冬天・冬冬・冬風・冬服・冬眠・冬夜・冬嶺・冬令・冬・冬
[下接語]
越冬・寒冬・季冬・九冬・窮冬・御冬・厳冬・昨冬・三冬・残冬・初冬・杪冬・上冬・烝冬・盛冬・仲冬・丁冬・晩冬・孟冬・立冬・凌冬

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改訂新版 世界大百科事典 「冬」の意味・わかりやすい解説

冬 (ふゆ)
winter

中・高緯度地方で,1年の中で最も低温な季節をいう。古代中国では立冬(太陽の黄経が225°になる日)から立春(同315°)の前日までを冬と呼んだ。現在の分け方は西欧流のもので,北半球では冬至(同270°)から春分(同0°)の前日までをいう。慣習的には,北半球では12,1,2月,南半球では6,7,8月を冬とする。実際の天候推移に基づく自然季節の期間は場所により異なる。日本の冬は初冬(11月26日~12月25日),冬(12月26日~1月31日),晩冬(2月1日~2月28日)に細分される。
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百科事典マイペディア 「冬」の意味・わかりやすい解説

冬【ふゆ】

天文学では冬至(とうじ)(12月22日ころ)から春分(3月22日ころ)まで,二十四節気では立冬(11月7日ころ)から立春(2月4日ころ)の前日まで,習慣上は12〜2月をいう。

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日本文化いろは事典 「冬」の解説

「ふゆ」は「冷ゆ〔ひゆ〕」「振るう〔ふるう〕」「震う〔ふるう〕」や動物が出産するという意味の「殖ゆ〔ふゆ〕」などからきた言葉です。冬になると山の動物は冬ごもりし、大地からは緑が消えます。新しい生命の始まりとなる春までの充電期間となる季節です。

出典 シナジーマーティング(株)日本文化いろは事典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「冬」の解説

中村真一郎の小説。『四季』4部作の第4部。1984年刊行。第17回日本文学大賞(文芸部門)受賞。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【季節】より

… 季節の相違をきめる昼夜の時間の長短や気温の高低は,地球の太陽に対する相対的位置が1年の間に変化することにより生ずる。地球は太陽のまわりを1年かかって公転しているが,地球の自転軸が公転面に対して約23度30分傾いているため,北半球についてみれば,夏至には太陽高度が最も高くて,昼間の時間が最も長く,地表で受け取る太陽エネルギーの量も最大となるのに対し,冬至には反対に,昼間の時間が最も短く,太陽エネルギーも最小になる。春分と秋分には昼夜の時間は等しく,太陽エネルギーの量は夏至と冬至の中間になる(図1,図2)。…

※「冬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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