喜・悦・歓・慶(読み)よろこぶ

精選版 日本国語大辞典 「喜・悦・歓・慶」の意味・読み・例文・類語

よろこ・ぶ【喜・悦・歓・慶】

(奈良時代には上二段活用であったが、平安時代以後は漢文訓読語として残ったほかは四段活用になった)
[1] 〘自バ上二〙
① うれしく思う。快く思う。心に喜悦を感じる。
※続日本紀‐神護景雲元年(767)八月一六日・宣命「侍ふ諸人等も共に見て、怪び喜(よろこビ)つつ在る間に」
※土井本周易抄(1477)四「自得るのみにあらず、人にも慶びらるると正義の心ぞ」
② 慶事や恩恵に対して感謝する。お礼のことばを述べる。
書紀(720)敏達一四年六月(前田本訓)「三の尼を以て、馬子宿禰(うまこのすくね)に還し付(さつ)く。馬子宿禰、受けて歓悦(ヨロコフ)
[2] 〘他バ上二〙
① 慶事として祝福する。祝いのことばを述べる。
※書紀(720)雄略九年七月(前田本訓)「伯孫、女、児(をのこご)(うまはり)せりと聞きて、往きて聟(むこ)の家を賀(ヨロコヒ)て、月(つく)夜に還りぬ」
② 快く受け入れる。
※成簣堂本論語抄(1475頃)雍也第六「孔子の道をよろこひざるにはあらず」
[3] 〘自バ五(四)〙
① (一)①に同じ。
※書紀(720)仁徳即位前(前田本訓)「上、驩心(ヨロコフこころ)有りて百姓(おほむたから)を使(つか)ふ。百姓欣然(ヨロコヒ)て天下安(やすらか)なり」
方丈記(1212)「芸はこれつたなけれども、人の耳をよろこばしめむとにはあらず」
② (一)②に同じ。
源氏(1001‐14頃)東屋「手一つ弾き取れば、師を立ち居拝みてよろこび、祿を取らすること、うづむばかりにて、もてさわぐ」
[4] 〘他バ五(四)〙
① (二)①に同じ。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「かひある御事を、見たてまつりよろこぶものから、かたつ方には、おぼつかなくかなしきことの、うちそひて絶えぬを」
② (出産を喜ぶ意から転じて) 出産する。子を産む。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※俳諧・炭俵(1694)下「算用に浮世を経る京ずまひ〈芭蕉〉 又沙汰なしにむすめ産(ヨロコブ)野坡〉」
[補注]連用形、終止形の用例は、上二段活用、四段活用の区別が明らかでないため、平安時代以降は、便宜上、四段活用として処理した。

よろこび【喜・悦・歓・慶】

〘名〙 (動詞「よろこぶ(喜)」の連用形の名詞化)
① 快く思うこと。心にうれしさを感じること。
※天理本金剛般若経集験記平安初期点(850頃)「精しき誠をもちて感(ヨロコヒ)を致すこと然(しか)ず」
※源氏(1001‐14頃)桐壺「かく有りがたき人に対面したるよろこび」
② よろこぶべきこと。慶賀すべきこと。慶事。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「御賀の程、よろこびくはへんとおぼしめして、にはかになさせ給つ」
③ 特に、叙位任官昇任などの慶事。
※宇津保(970‐999頃)沖つ白浪「中納言『おもはずに、かかるよろこびの侍るをなん』おとど『そがいとうれしきこと』など申し給ふ」
④ 出産という慶事。
※日葡辞書(1603‐04)「ヨロコブ、〈略〉コヲ ヨロコブ、または、Yorocobiuo(ヨロコビヲ) スル」
⑤ 人の慶事に対する祝賀。また、その祝辞
古今(905‐914)雑上・八七〇・詞書「にはかにかうぶりたまはりければ、よろこびいひつかはすとて、よみてつかはしける」
⑥ 与えられた慶事や好意などについてのお礼。また、その謝辞
蜻蛉(974頃)中「かしこに物してととのへん、さうずくしてこよ、とていでられぬ。よろこびにありきなどすれば、いとあはれにうれしき心ちす」
当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉四「お常をはじめ人々へ、感謝(ヨロコビ)しるしにとて遣はしつつ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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