デジタル大辞泉
「巻」の意味・読み・例文・類語
まき【巻(き)】
[名]
1 巻くこと。また、巻いた程度。「ぜんまいの巻きが弱い」
2 書画の巻物。また、その区分。冊子になったものの区分にもいう。「源氏物語の若菜の巻きを読む」
3 俳諧の付合を長く続けたもの。また、その書き物。
4 「茅巻」を略していう女房詞。
[接尾]助数詞。
1 巻いた回数を数えるのに用いる。「二巻き巻く」
2 巻き物や書物の数を数えるのに用いる。
「すべて千歌、二十―、名づけて古今和歌集といふ」〈古今・仮名序〉
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まき【巻】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「まく(巻)」の連用形の名詞化 ) 巻くこと、また巻いた状態のものをいう。
- ① 巻くこと。巻きかたや、巻いた程度を表わす。「巻きが強い」など。多くは他の語と熟して用いる。「左まき」「簀(す)まき」など。
- ② 書画などの巻物。巻物の一軸ごとをさしていう。後には、冊子の形態をとっていても、「上の巻」「下の巻」などと呼ぶように、書物の区分についていう。
- [初出の実例]「語は穴穂天皇の紀(みマキ)に在り」(出典:日本書紀(720)雄略即位前(前田本訓))
- 「左、猶数一つある果てに、須磨のまき出で来たるに、中納言の御心騒ぎにけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
- ③ 連歌・俳諧で、歌仙(三十六句)、世吉(四十四句)、百韻などの連句一巻のこと。
- [初出の実例]「彦根より巻など参候よし珍重」(出典:許六宛芭蕉書簡‐元祿六年(1693)正月一二日)
- ④ 粽(ちまき)をいう女房詞。
- [初出の実例]「山くにのまきまいる」(出典:御湯殿上日記‐文明九年(1477)五月四日)
- ⑤ 「まきぞめ(巻染)」の略。〔随筆・貞丈雑記(1784頃)〕
- ⑥ 「おだまきむし(苧環蒸)」の略。
- [初出の実例]「蕎麦(そば)は結構、巻(マキ)かあられか天麩羅(てんぷら)か」(出典:歌舞伎・初霞空住吉(かっぽれ)(1886))
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙 巻いたものを数えるのに用いる。
- ① 巻いて一区切りとした状態のものを数えるのに用いる。
- [初出の実例]「紙ひとまき、御硯(すずり)の蓋(ふた)に取りおろして奉れば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)野分)
- ② 特に書物を数えるのに用いる。のちには巻物仕立てでないものにもいう。
- [初出の実例]「すべて千うた、はたまき、名づけて古今和歌集といふ」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
- ③ 巻いた回数を数えるのに用いる。「二まき巻く」
かんクヮン【巻】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① 巻き物。巻き軸。巻子本(かんすぼん)。
- [初出の実例]「経巻を開て見奉るに〈略〉文字一も不在ず。此を見て恠て、亦、他の巻を開て見奉るに、只前の巻の如し」(出典:今昔物語集(1120頃か)七)
- [その他の文献]〔韓愈‐与陳給事書〕
- ② ( 古くは書物は巻き物になっていたところから ) 書籍。本。また、書籍の一冊のまとまり。→巻を追う。
- [初出の実例]「手不レ執レ巻、常読二此経一、口無二言声一、遍誦二衆典一」(出典:ささめごと(1463‐64頃)下)
- [その他の文献]〔宋書‐隠逸伝・陶潜〕
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 書籍、巻き物の数をかぞえるのに用いる。
- [初出の実例]「作者二十三人、詩惣九十首、合為二一巻一、名曰二凌雲新集一」(出典:凌雲集(814)序〈小野岑守〉)
- [その他の文献]〔法言‐学行〕
- ② 書籍の冊数や一冊の内の区分を示すのに用いる。
- ③ テープや映画のフィルムなどの数を数えるのに用いる。映画の一巻は普通一〇〇〇フィート(約三〇五メートル)。
- [初出の実例]「映画は伊太利物の人情劇で、極彩色全二巻(クヮン)」(出典:夢声半代記(1929)〈徳川夢声〉幻滅! ザマア見ろ)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「巻」の読み・字形・画数・意味
巻
常用漢字 9画
(旧字)卷
人名用漢字 8画
[字音] カン(クヮン)・ケン・コン
[字訓] まく・まがる
[説文解字]
[字形] 会意
(べん)+廾(きよう)+(はん)。篆文の字形は、(獣爪を含む獣皮)を廾(両手)での形にきこむ意。獣皮をく形で、一きの獣皮を卷という。〔説文〕九上に「(ひざ)曲るなり」とするがこの字の本義でなく、(はん)字条三上に「を摶(まろ)むるなり」とし、「讀みて書卷のくす」とするが、卷が書巻の字である。古くは重要な文書は皮に記した。のち簡札・紙を用いるが、なお巻を以て数える。
[訓義]
1. まく、まきもの、書巻。
2. まげる、まがる、かがめる、たばねる。
3. まきかためる、まるくつつみこむ。
4. と通じ、まく。と通じ、たすき。拳と通じ、こぶし。圏と通じ、かたまり。と通じ、まきあげた髪。惓と通じ、つつしむ。
5. と通じて用いる。
[古辞書の訓]
〔字鏡〕卷 マガレリ・シシム・ヒラ・メグラシ・ヲサム・マク・カガマル・マクル
[声系]
〔説文〕に卷()声として眷・(券)・・豢・(拳)・・劵・圈(圏)・・・など十九字を収める。おおむね巻曲・巻縛の義を承ける。は卷の初文とみてよい。
[語系]
卷・・惓giuanは同声。悃khun、款khuanと声義近く、拳拳・惓惓・悃悃・款款はみな忠謹の意をもつ形況の語である。
[熟語]
巻軸▶・巻首▶・巻第▶・巻端▶・巻帙▶・巻頭▶・巻尾▶・巻末▶・巻阿▶・巻雲▶・巻価▶・巻懐▶・巻起▶・巻曲▶・巻巻▶・巻甲▶・巻沙▶・巻子▶・巻綬▶・巻縮▶・巻舒▶・巻舌▶・巻然▶・巻束▶・巻土▶・巻髪▶・巻覆▶・巻襞▶・巻幔▶・巻婁▶・巻▶・巻臠▶・巻衣▶・巻冕▶・巻竜▶
[下接語]
圧巻・画巻・開巻・経巻・公巻・甲巻・黄巻・詩巻・軸巻・首巻・珠巻・収巻・書巻・舒巻・図巻・席巻・全巻・大巻・探巻・長巻・帳巻・通巻・展巻・廃巻・帆巻・万巻・付巻・武巻・封巻・鳳巻・幔巻・竜巻・連巻・彎巻
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巻
まき
新潟県の中北部、西蒲原郡(にしかんばらぐん)にあった旧町名(巻町(まち))。現在は、新潟市(にいがたし)の南西部(西(にし)区、西蒲(にしかん)区の一部)にあたる。旧巻町は1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)漆山(うるしやま)、峰岡(みねおか)、角田(かくだ)、浦浜(うらはま)、松野尾(まつのお)の5村と合併。2005年(平成17)新潟市に編入。旧町域は、弥彦(やひこ)山地北麓(ろく)を占め、西部は日本海に臨む。付近は古代高志深江(こしふかえ)国の国造(くにのみやつこ)が置かれた越国(こしのくに)の発祥地で、金仙(こんせん)寺裏山には菖蒲塚古墳(あやめづかこふん)(国史跡)がある。近世は、鎧潟(よろいがた)べりの長岡藩巻組の代官所が置かれ、西川舟運の河岸場(かしば)町、また六斎市場(ろくさいいちば)町として栄えた。近代は郡役所が置かれ、行政、文化、教育の中心として発展した。現在は諸官庁の出先機関や県立高校が4校あり、弥彦参道の買い物町として機能する。JR越後線(えちごせん)、国道116号、402号、460号が通じ、北陸自動車道の巻潟東インターチェンジがあるなどの交通の便を得て、ベッドタウン化が進んでいる。第二次世界大戦後、鎧潟は国営干拓事業により干拓され、農業教育センターが置かれ、農家の後継者を養成する県立興農館(こうのうかん)高校(2002年閉校)も設立された。角海(かくみ)浜はかつて「越後の毒消し売り」のふるさととして知られた。
[山崎久雄]
『『巻町双書』2000年現在39集(1965~ ・巻町)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
巻
(1)書誌的な意味では,巻自体の書誌的事項を掲載した標題紙(ときには簡略タイトル,表紙タイトルなど)が存在し,また通常独立したページ付けなどがあって,出版者の付けた表示にかかわらず,書誌的なまとまりをなす資料の他の部分と区別できる部分.形態的な意味では,1製本単位,あるいは一つのポートフォリオなどに収容されている全体で,それが刊行されたときのままであるか,後で製本されたものであるかは問わない.形態的単位としての巻は,書誌的な単位のものと一致しないことがある.(2)逐次刊行物における,ある限定された刊行期間の全体を構成する号の集合,もしくはある連続的な部分を構成する号の集合.合綴されていることも,されていないこともある.(3)録音資料や録画資料,コンピュータファイルにおける,ディスクやテープなど記録媒体の形態的単位.
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
巻[町]【まき】
新潟県西蒲原(にしかんばら)郡,越後平野中西部を占める旧町。1966年干拓が終わった鎧(よろい)潟干拓地を含む水田地帯で,越後線が通じる中心の巻は米の集散地。日本海岸の角田浜は越後毒消し行商の出身地であった。北陸自動車道が通じる。西の角田山一帯は佐渡弥彦米山国定公園に属する。2005年10月新潟市へ編入。76.14km2。2万9936人(2003)。
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世界大百科事典(旧版)内の巻の言及
【毒消売】より
…当初は男性のしごとだったが,明治に入ってから女性の進出が目だつようになり,未婚女性の半年以上にもわたる長期の,しかも遠隔地への出稼行商だった。越後の毒消丸は新潟市の南西約15kmの西蒲原郡巻町を中心に製造された。この地域は近世初期には漁業と塩業を中心とする漁村だったが,砂丘地の開拓がすすんで半農半漁村となった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」