(読み)カン

デジタル大辞泉 「巻」の意味・読み・例文・類語

かん【巻〔卷〕】[漢字項目]

[音]カン(クヮン)(呉) ケン(漢) [訓]まく まき
学習漢字]6年
〈カン〉
巻物。「巻軸巻子本かんすぼん経巻
書物。「巻首巻頭巻末圧巻開巻書巻全巻別巻
巻いたものや書物を数える語。「万巻ばんかん万巻まんがん
〈ケン〉(「けん」と通用)まく。「巻雲巻土重来席巻
〈まき〉「巻紙巻物竜巻葉巻絵巻物
[名のり]まる
[難読]い巻巻繊けんちん

かん〔クワン〕【巻】

[名]
巻物。巻物にした書物。巻子本かんすぼん。「を開く」
書物。書籍。
何冊か合わせてひとまとまりとなる書籍の、その一つ一つ。
[接尾]助数詞
書籍の冊数をかぞえるのに用いる。「全3の書物」
巻物やテープフィルムなどの数をかぞえるのに用いる。「巻物3」「フィルム5
[類語]書物書籍図書書冊ブック文献典籍古典冊子書巻ふみ著作著書

まき【巻(き)】

[名]
巻くこと。また、巻いた程度。「ぜんまい巻きが弱い」
書画の巻物。また、その区分。冊子になったものの区分にもいう。「源氏物語の若菜の巻きを読む」
俳諧の付合つけあいを長く続けたもの。また、その書き物
茅巻ちまき」を略していう女房詞
[接尾]助数詞。
巻いた回数を数えるのに用いる。「二巻き巻く」
巻き物や書物の数を数えるのに用いる。
「すべて千歌ちうた二十はた―、名づけて古今和歌集といふ」〈古今仮名序

けん【巻/乾/間/監/簡】[漢字項目]

〈巻〉⇒かん
〈乾〉⇒かん
〈間〉⇒かん
〈監〉⇒かん
〈簡〉⇒かん

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精選版 日本国語大辞典 「巻」の意味・読み・例文・類語

まき【巻】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 動詞「まく(巻)」の連用形の名詞化 ) 巻くこと、また巻いた状態のものをいう。
    1. 巻くこと。巻きかたや、巻いた程度を表わす。「巻きが強い」など。多くは他の語と熟して用いる。「左まき」「簀(す)まき」など。
    2. 書画などの巻物。巻物の一軸ごとをさしていう。後には、冊子の形態をとっていても、「上の巻」「下の巻」などと呼ぶように、書物の区分についていう。
      1. [初出の実例]「語は穴穂天皇の紀(みマキ)に在り」(出典:日本書紀(720)雄略即位前(前田本訓))
      2. 「左、猶数一つある果てに、須磨のまき出で来たるに、中納言の御心騒ぎにけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)絵合)
    3. 連歌・俳諧で、歌仙(三十六句)、世吉(四十四句)、百韻などの連句一巻のこと。
      1. [初出の実例]「彦根より巻など参候よし珍重」(出典:許六宛芭蕉書簡‐元祿六年(1693)正月一二日)
    4. (ちまき)をいう女房詞。
      1. [初出の実例]「山くにのまきまいる」(出典:御湯殿上日記‐文明九年(1477)五月四日)
    5. まきぞめ(巻染)」の略。〔随筆・貞丈雑記(1784頃)〕
    6. おだまきむし(苧環蒸)」の略。
      1. [初出の実例]「蕎麦(そば)は結構、巻(マキ)かあられか天麩羅(てんぷら)か」(出典:歌舞伎初霞空住吉(かっぽれ)(1886))
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙 巻いたものを数えるのに用いる。
    1. 巻いて一区切りとした状態のものを数えるのに用いる。
      1. [初出の実例]「紙ひとまき、御硯(すずり)の蓋(ふた)に取りおろして奉れば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)野分)
    2. 特に書物を数えるのに用いる。のちには巻物仕立てでないものにもいう。
      1. [初出の実例]「すべて千うた、はたまき、名づけて古今和歌集といふ」(出典:古今和歌集(905‐914)仮名序)
    3. 巻いた回数を数えるのに用いる。「二まき巻く」

かんクヮン【巻】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 巻き物。巻き軸。巻子本(かんすぼん)
      1. [初出の実例]「経巻を開て見奉るに〈略〉文字一も不在ず。此を見て恠て、亦、他の巻を開て見奉るに、只前の巻の如し」(出典:今昔物語集(1120頃か)七)
      2. [その他の文献]〔韓愈‐与陳給事書〕
    2. ( 古くは書物は巻き物になっていたところから ) 書籍。本。また、書籍の一冊のまとまり。→巻を追う
      1. [初出の実例]「手不巻、常読此経、口無言声、遍誦衆典」(出典:ささめごと(1463‐64頃)下)
      2. [その他の文献]〔宋書‐隠逸伝・陶潜〕
  2. [ 2 ] 〘 接尾語 〙
    1. 書籍、巻き物の数をかぞえるのに用いる。
      1. [初出の実例]「作者二十三人、詩惣九十首、合為一巻、名曰凌雲新集」(出典:凌雲集(814)序〈小野岑守〉)
      2. [その他の文献]〔法言‐学行〕
    2. 書籍の冊数や一冊の内の区分を示すのに用いる。
    3. テープや映画のフィルムなどの数を数えるのに用いる。映画の一巻は普通一〇〇〇フィート(約三〇五メートル)。
      1. [初出の実例]「映画は伊太利物の人情劇で、極彩色全二巻(クヮン)」(出典:夢声半代記(1929)〈徳川夢声〉幻滅! ザマア見ろ)

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普及版 字通 「巻」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 9画

(旧字)卷
人名用漢字 8画

[字音] カン(クヮン)・ケン・コン
[字訓] まく・まがる

[説文解字]

[字形] 会意
(べん)+廾(きよう)+(はん)。篆文の字形は、(獣爪を含む獣皮)を廾(両手)での形にきこむ意。獣皮をく形で、一きの獣皮を卷という。〔説文〕九上に「(ひざ)曲るなり」とするがこの字の本義でなく、(はん)字条三上に「を摶(まろ)むるなり」とし、「讀みて書卷のくす」とするが、卷が書巻の字である。古くは重要な文書は皮に記した。のち簡札・紙を用いるが、なお巻を以て数える。

[訓義]
1. まく、まきもの、書巻。
2. まげる、まがる、かがめる、たばねる。
3. まきかためる、まるくつつみこむ。
4. と通じ、まく。と通じ、たすき。拳と通じ、こぶし。圏と通じ、かたまり。と通じ、まきあげた髪。惓と通じ、つつしむ。
5. と通じて用いる。

[古辞書の訓]
〔字鏡〕卷 マガレリ・シシム・ヒラ・メグラシ・ヲサム・マク・カガマル・マクル

[声系]
〔説文〕に卷()声として眷・(券)・・豢・(拳)・・劵・圈(圏)・など十九字を収める。おおむね巻曲・巻縛の義を承ける。は卷の初文とみてよい。

[語系]
卷・・惓giuanは同声。悃khun、款khuanと声義近く、拳拳・惓惓・悃悃・款款はみな忠謹の意をもつ形況の語である。

[熟語]
巻軸・巻首・巻第・巻端巻帙・巻頭・巻尾・巻末・巻阿・巻雲・巻価・巻懐・巻起・巻曲・巻巻・巻甲・巻沙・巻子・巻綬・巻縮・巻舒・巻舌・巻然・巻束・巻土・巻髪・巻覆・巻襞・巻幔・巻婁・巻・巻臠・巻衣・巻冕・巻竜
[下接語]
圧巻・画巻・開巻・経巻・公巻・甲巻・黄巻・詩巻・軸巻・首巻・珠巻・収巻・書巻・舒巻・図巻・席巻・全巻・大巻・探巻・長巻・帳巻・通巻・展巻・廃巻・帆巻・万巻・付巻・武巻・封巻・鳳巻・幔巻・竜巻・連巻・彎巻

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「巻」の意味・わかりやすい解説


まき

新潟県の中北部、西蒲原郡(にしかんばらぐん)にあった旧町名(巻町(まち))。現在は、新潟市(にいがたし)の南西部(西(にし)区、西蒲(にしかん)区の一部)にあたる。旧巻町は1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)漆山(うるしやま)、峰岡(みねおか)、角田(かくだ)、浦浜(うらはま)、松野尾(まつのお)の5村と合併。2005年(平成17)新潟市に編入。旧町域は、弥彦(やひこ)山地北麓(ろく)を占め、西部は日本海に臨む。付近は古代高志深江(こしふかえ)国の国造(くにのみやつこ)が置かれた越国(こしのくに)の発祥地で、金仙(こんせん)寺裏山には菖蒲塚古墳(あやめづかこふん)(国史跡)がある。近世は、鎧潟(よろいがた)べりの長岡藩巻組の代官所が置かれ、西川舟運の河岸場(かしば)町、また六斎市場(ろくさいいちば)町として栄えた。近代は郡役所が置かれ、行政、文化、教育の中心として発展した。現在は諸官庁の出先機関や県立高校が4校あり、弥彦参道の買い物町として機能する。JR越後線(えちごせん)、国道116号、402号、460号が通じ、北陸自動車道の巻潟東インターチェンジがあるなどの交通の便を得て、ベッドタウン化が進んでいる。第二次世界大戦後、鎧潟は国営干拓事業により干拓され、農業教育センターが置かれ、農家の後継者を養成する県立興農館(こうのうかん)高校(2002年閉校)も設立された。角海(かくみ)浜はかつて「越後の毒消し売り」のふるさととして知られた。

[山崎久雄]

『『巻町双書』2000年現在39集(1965~ ・巻町)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巻」の意味・わかりやすい解説


まき

新潟県中部,新潟市南西部の旧町域。新潟平野の西部,日本海岸にある。 1889年町制。 1955年峰岡村,漆山村松野尾村角田村,浦浜村の5村と合体。 2005年新潟市に編入。 2007年政令指定都市化に伴い大部分が西蒲区,北部が西区の一部となった。中心集落の巻は,江戸時代は西川沿いの市場町として栄えた。食品工業,機械工業が行なわれ,周辺の西川米の集散地角田山北麓には日蓮ゆかりの妙光寺があり,また東麓の金仙寺境内には前方後円墳の菖蒲塚古墳 (国指定史跡) がある。海岸には角田浜などの海水浴場があり,一帯は佐渡弥彦米山国定公園に属する。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「巻」の解説

(1)書誌的な意味では,巻自体の書誌的事項を掲載した標題紙(ときには簡略タイトル,表紙タイトルなど)が存在し,また通常独立したページ付けなどがあって,出版者の付けた表示にかかわらず,書誌的なまとまりをなす資料の他の部分と区別できる部分.形態的な意味では,1製本単位,あるいは一つのポートフォリオなどに収容されている全体で,それが刊行されたときのままであるか,後で製本されたものであるかは問わない.形態的単位としての巻は,書誌的な単位のものと一致しないことがある.(2)逐次刊行物における,ある限定された刊行期間の全体を構成する号の集合,もしくはある連続的な部分を構成する号の集合.合綴されていることも,されていないこともある.(3)録音資料や録画資料,コンピュータファイルにおける,ディスクやテープなど記録媒体の形態的単位.

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百科事典マイペディア 「巻」の意味・わかりやすい解説

巻[町]【まき】

新潟県西蒲原(にしかんばら)郡,越後平野中西部を占める旧町。1966年干拓が終わった鎧(よろい)潟干拓地を含む水田地帯で,越後線が通じる中心の巻は米の集散地。日本海岸の角田浜は越後毒消し行商の出身地であった。北陸自動車道が通じる。西の角田山一帯は佐渡弥彦米山国定公園に属する。2005年10月新潟市へ編入。76.14km2。2万9936人(2003)。

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改訂新版 世界大百科事典 「巻」の意味・わかりやすい解説

巻 (まき)

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【毒消売】より

…当初は男性のしごとだったが,明治に入ってから女性の進出が目だつようになり,未婚女性の半年以上にもわたる長期の,しかも遠隔地への出稼行商だった。越後の毒消丸は新潟市の南西約15kmの西蒲原郡巻町を中心に製造された。この地域は近世初期には漁業と塩業を中心とする漁村だったが,砂丘地の開拓がすすんで半農半漁村となった。…

※「巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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