荒む(読み)スサム

デジタル大辞泉 「荒む」の意味・読み・例文・類語

すさ・む【荒む/進む/遊む】

[動マ五(四)]《動詞「すさぶ」の音変化》
心の持ち方・行動などが乱れてきて、ゆとりやおおらかさがなくなる。とげとげした状態になる。「気持ちが―・む」「生活が―・む」
物事の繊細さ・上品さが失われて粗雑になる。「最近の彼の芸は―・んでいる」
雨や風などの勢いが激しくなる。「寒風が―・む」
ふけりおぼれる。「酒色に―・む」
勢いが尽きて衰える。
御前にて物など参り給へども、あさましうはかなく―・みつつ」〈狭衣・二〉
嫌って遠ざける。うとむ。
「人ヲ―・ム」〈日葡
からだを苦しめ痛めつける。
「身ヲ―・ム」〈日葡
(遊む)動詞の連用形について、興にのって事をすすめる意を表す。気の向くままに…する。
「筆さしぬらして書き―・み給ふほどに」〈初音
[動マ下二]
心に留めて愛する。賞美する。
「大荒木の森の下草老いぬれば駒も―・めず刈る人もなし」〈古今・雑上〉
勢いが衰えて、やむ。
「ひまもなく降りも―・めぬ五月雨につくまの沼の水草波よる」〈類従本堀河百首
嫌って遠ざける。うとんじる。
「むべ我をば―・めたりと、気色どり怨じ給へりしこそ」〈紅梅
[類語]荒れる荒らすすさぶ焦慮苛立ち焦燥焦るせく急き込む気が急く逸るテンパる焦心苛立つかりかりじりじりやきもきむしゃくしゃむずむずうずうずじれる苛つく業を煮やす痺れを切らす歯痒いじれったいもどかしい辛気臭い苛立たしいまだるっこいまどろっこい躍起隔靴掻痒いらいら尖る手ぬるい生ぬるいのろ臭い間怠まだる間怠まだるこしい煮え切らないうやむやあやふや漠然おぼろげ曖昧どっちつかず要領を得ないぬらりくらりぬらくらのらりくらりのらくらぼやかす無節操洞ヶ峠言を左右にする言葉を濁す小心弱気引っ込み思案気弱内弁慶陰弁慶臆病大人しいこわがり内気怯懦きょうだ怯弱きょうじゃく意気地なし小胆小心翼翼弱腰薄弱惰弱柔弱軟弱優柔不断柔いやわ弱弱しい女女しい弱音を吐く音を上げる悲鳴を上げる気が弱い腰が弱い肝が小さい肝っ玉が小さい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「荒む」の意味・読み・例文・類語

すさ・む【荒】

  1. ( 「すさぶ(荒)」の変化した語 )
  2. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙
    1. 動作、程度がひどくなる。はなはだしくなる。いよいよ進む。
      1. [初出の実例]「雲間なく降りもすさみぬ五月雨につくまの池の水草波よる〈源顕仲〉」(出典:堀河院御時百首和歌(1105‐06頃)夏)
    2. 心のおもむくままに慰みごとをする。慰み興ずる。
      1. [初出の実例]「とざまかうざまに恨みつつ『一日(ひとひ)も浪に』などすさみ臥したるを」(出典狭衣物語(1069‐77頃か)一)
      2. 「ハナニ susamu(スサム)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. 勢いが尽きてやむ。衰える。
      1. [初出の実例]「いたく痩せ給へるはいかなるにかと驚かせ給て、御前にて物など参り給へど、あさましうはかなくすさみつつ」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)二)
    4. 心を奪われておぼれる。耽(ふけ)る。
      1. [初出の実例]「イロニ susamu(スサム)」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
    5. 荒れる。荒廃する。
      1. [初出の実例]「我学問は荒みぬ」(出典:舞姫(1890)〈森鴎外〉)
      2. 「いっかうに浮かぬ気持で、それから四、五日いよいよ荒(スサ)んでやけ酒をくらった」(出典:親友交歓(1946)〈太宰治〉)
  3. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行四段活用 〙
    1. 心のおもむくままに物事をすすめる。慰み興ずる。もてあそぶ。
      1. [初出の実例]「はかなくすさみ給ふ吹きもの、弾もの」(出典:苔の衣(1271頃)一)
    2. きらって遠ざける。心を離す。きらい避ける。
      1. [初出の実例]「いたづらにあそびをなし大酔をして学問をばすさみをこたって生た時は」(出典:玉塵抄(1563)四七)
      2. 「ヨヲ susamu(スサム)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. むごく扱う。苦しめる。
      1. [初出の実例]「わが跡を慕はんと思ふ輩は、常に身をすさみ、色身の望みに任せず、其身のくるすを担て我を慕へと宣ふ也」(出典:ぎやどぺかどる(1599)下)
  4. [ 3 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙
    1. 心のおもむくままにことをすすめる。もてあそぶ。慰みにする。心にとめて愛する。
      1. [初出の実例]「とつゑ余りやつゑを越ゆるたつの駒君須佐米(スサメ)ねば老いはてぬべし〈欽明天皇〉」(出典:日本紀竟宴和歌‐延喜六年(906))
      2. 「山たかみ人もすさめぬさくら花いたくなわびそ我れ見はやさむ〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・五〇)
    2. 勢いを衰えさせる。止める。
      1. [初出の実例]「ひまもなく降りもすさめぬ五月雨につくまの沼のみ草波よる〈源顕仲〉」(出典:類従本堀河百首(1105‐06頃)夏)
    3. きらって遠ざける。心を離す。興ざめに思う。
      1. [初出の実例]「むべ我をばすさめたりと、気色どり、怨じ給へりしか」(出典:源氏物語(1001‐14頃)紅梅)

荒むの補助注記

「すさむ」「すさぶ」とも自他両用であるが、「すさぶ」には下二段がなく、「すさむ」には上二段がない。→「すさぶ(荒)」の補注

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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