温泉(読み)オンセン

デジタル大辞泉 「温泉」の意味・読み・例文・類語

おん‐せん〔ヲン‐〕【温泉】

地熱のために、その土地の平均気温以上に熱せられた地下水。さまざまな泉質があり、浴用または飲用することで治療・健康増進の効果がある。日本の温泉法ではセ氏25度以上のものか、特定の溶存物質が一定値以上含まれているものをさす。→鉱泉冷泉2
1を利用し、入浴する施設のある所。
[類語]出で湯鉱泉冷泉間欠泉秘湯噴泉ラジウム泉名湯霊泉

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精選版 日本国語大辞典 「温泉」の意味・読み・例文・類語

おん‐せん ヲン‥【温泉】

[1] 〘名〙 自然に湧出し、または人工的に汲み出したとき、その地域の平均気温よりも高い水温をもつ地下水。日本では、火山地域の高い地熱によって地下水があたためられたものと考えられる場合が多い。場所によって年平均気温が異なるため、日本では摂氏二五度以上と決められている。また、その湯に入浴する施設のあるところ。いでゆ。温泉場。温湯(おんとう)
※続日本紀‐大宝元年(701)一〇月丁未「車駕至武漏温泉」 〔水経注‐水〕
[2] 愛媛県の北部にあった郡。現在の東温市、松山市。

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改訂新版 世界大百科事典 「温泉」の意味・わかりやすい解説

温泉 (おんせん)

地球内部の熱により温められた地下水の自然にわき出る現象が温泉である。成分に着目すれば無機物質を多量に溶かしている泉水を鉱泉と総称し,そのうち温度が比較的高いものを温泉,冷たいものを冷鉱泉と呼ぶ。

 日本の温泉法(1948制定)では,温泉を,地中から湧出する温水,鉱水および水蒸気,その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で,表1の温度または物質(いずれか一つ)を有するものと規定している。これによると火山ガス,火山性水蒸気,25℃未満の鉱泉も,一般常識と多少かけ離れているが,温泉とされる。

環境庁鉱泉分析法指針では温泉を温度により表2のように分類している。

 人間の体温と同じ泉温で入浴すると緊張がほぐれ,精神が安静化する。上記泉温の分類は入浴温度に注目してなされている。温泉を地熱発電,地熱暖房の目的で利用しようとする場合は,流体(液相+気相)の熱含量が200kcal/kg(泉温に換算して約200℃)以上でないと高温泉とはいえない。暖房のみの利用では規定はないが70℃以上あれば高温泉といえる。
温泉療法

鉱泉分析法指針では温泉の液性を,湧出時のpHによって表3のように分類している。

 酸性泉は物質を溶かす力が強く,したがって成分的に温泉法に該当する泉質を生じやすい。アルカリ性泉は反対に物質が沈殿しやすいため,溶存物質量だけでは温泉法に該当しない例が少なくない。酸性泉は刺激が強く,入浴による湯中(ゆあたり)になりやすいので注意を要する。

生物細胞の物質代謝は,細胞膜内外の塩類濃度差から生ずる浸透圧の大小が大きく関与する。人体の細胞液と等しい浸透圧をもつ泉水を等張泉,それ以下のものを低張泉,それ以上のものを高張泉として分類する。この区別は溶存物質総量,または泉水を冷却したときの凝固温度によって表4のように行われる。

温泉は地中から湧出するが,岩石を構成している主要元素,例えばSi,Al,Fe,Mgなどは少なく,溶液中で簡単なイオンとして存在するNa,Cl,SO4などに富む。陰陽両イオン量は溶液の電気的中性を保つように存在する。温泉を蒸発乾固すると溶存物質は塩化物,硫酸塩,炭酸水素塩,炭酸塩の形をとり,それらの大部分は水によく溶解する塩類である。したがって古くから温泉の化学的性質(泉質)は主要塩類を付して表現されている。温泉を療養に利用する目的で,鉱泉分析法指針は泉質を次のように分類する。(1)溶存物質量が1g/kg以上のものを塩類泉,(2)1g/kg未満であるが泉温が25℃以上のものを単純温泉,(3)表1に掲げる特定物質を限界値以上含む温泉,に大別し,それぞれのグループは溶存成分の大小によって表5のように細別される。

 特殊成分を含む塩類泉の分類,副成分による塩類泉などの分類が温泉の化学分析をもとにしてさらに行われ,泉質数は80種にも達する。現在は,溶存する主要イオン名を並べて泉質を表現するように改められ,古くからの塩類名を用いた泉質名は用いないようになった。しかし,古い温泉分析表が温泉にまだ掲示されている例が多く,旧泉質名の方が新泉質名より簡潔な表現になっているので両者の併用がしばらくは続くであろう。

温泉の湧出状況は地熱活動の強弱,溶存ガスの多寡,地質構造などの違いによってさまざまである。(1)自噴泉(または湧泉) 自然に湧出する温泉。(2)沸騰泉 泉水が沸騰し,水蒸気とともに噴出する高温泉。(3)間欠泉 沸騰泉のうち,温泉の噴出・休止が周期的に行われる温泉。(4)泡沸泉 二酸化炭素,メタンガスなどの気泡とともに湧出する温泉で,泉温は水の沸騰点以下の場合が多い。(5)裂罅(れつか)泉 岩石中の割れ目から湧出する温泉で,脈状泉ともいう。(6)層状泉 礫層や砂層のような層状構造をした地層中から湧出する温泉。

温泉は火山活動と深い関係がある。しかし,火山のない所でも温泉がある。熱エネルギーを火山活動から受けている温泉を火山性温泉,そうでないものを非火山性温泉と称する。両者の区別は概念的には容易であるが,個々の温泉について区別するときは容易でない場合が多い。

世界で最も温泉地の多いのは日本で2053ヵ所,次いで中国1900ヵ所,アメリカ合衆国1003ヵ所,アイスランド516ヵ所,イタリア149ヵ所,フランス124ヵ所などとなっていて(1980年現在),世界中いたるところに多数の温泉,鉱泉地が知られている。多量の塩分を含む鉱水ならば,地下深くまで掘ると世界中どこでも見つけることができ,断層に沿って温泉,鉱泉が湧出することはよく知られている。しかし,地熱発電を可能とするような高温地熱地帯の分布は火山分布,褶曲山脈分布,地震分布とほぼ一致している。地球表面を十数板の巨大岩盤(プレート)に分け,水平に移動するプレートの衝突,重なり合い,離れ合いなどの相互作用によって地球上の変動帯を説明するプレートテクトニクスによれば温泉の分布は次のように分類される。

(1)プレート境界沿いに分布する温泉 (a)プレート沈み込み境界陸側沿いの温泉 環太平洋弧状火山帯:日本,台湾,フィリピン,ニュージーランドアレウト列島,カナダ西岸,アメリカ西岸,メキシコ,グアテマラコスタリカ,ペルー,チリなどの温泉。地中海火山帯:イタリア,ギリシアなどの温泉。(b)プレート生産地帯の温泉 大西洋中央海嶺:アイスランド。東太平洋海膨カリフォルニア湾口水深2700mの海底温泉,ガラパゴス海域の海底温泉。紅海の中央部水深2000mの海底温泉など。

(2)プレート内部の温泉 (a)海のプレート内の温泉 ハワイ島の火山性温泉など。 (b)陸のプレート内の温泉 ドイツ,フランスのライン地溝帯に沿う温泉,フランスのオーベルニュ火山群に伴う温泉,中国大陸の断層系に沿って分布する温泉,東アフリカ地溝帯に分布する温泉。ヨーロッパ,中国,インド,バイカル湖付近,パミール高原など現在の火山と関係のない地域の温泉は,第三紀~第四紀の褶曲帯や大断層系と一致した分布をなす。

1980年現在の日本の温泉地数は2053ヵ所である。1931年では863ヵ所であった。第2次大戦後の観光の大衆化によって,観光資源として多数の温泉地が開発された。現在でも毎年数ヵ所ずつ温泉地が増加している。日本列島の高温泉の分布は第四紀火山帯とよく一致する。なお,新第三紀の火山活動に関係ある紀伊半島の白浜,勝浦,兵庫県の有馬などのような温泉も多い。四国道後温泉の熱源となる火成岩体はさらに古く,白亜紀の花コウ岩であるといわれている。このほか火山と関係ない温泉,たとえば石油や天然ガスを求めて掘削された井戸から湧出した最上,新津,松之山,瀬波,焼津などの温泉がある。

1源泉当りの湧出量は毎分数lから数百lである。毎分1000l以上の湧出量の源泉はあまり多くはない。大量の温泉湧出があるためには,十分な降雨量と,透水性の大きい地層,しかも大量の地下水を温めるに足る十分な地熱の補給が保たれていなければならない。アイスランドでは溶岩流相互の多孔質な境界あるいは溶岩トンネルから毎分数千lの温泉湧出をするところがあり,このような例が湧出量の上限であろう。日本では登別,玉川,箱根姥子(うばこ),別府などで毎分1000~3000lを湧出する源泉がある。毎分100l程度を湧出する源泉は良好な温泉である。

 1温泉地当りの湧出量は毎分4万l程度が上限である。草津3万4240l/min,別府2万2200l/min,箱根1万8474l/min,熱海1万6290l/min,蔵王1万5000l/min,登別1万0390l/minなどが日本の湧出量の大きい温泉地である。プレート生産地帯ではマグマの生産量がプレート沈み込み地帯の数倍に達しているので,降水量や地質条件に恵まれていると大きな温泉湧出量を示すことになる。その好例がアイスランドである。

温泉放熱量は泉温と湧出量の積で求められる。泉温の範囲はある地域の年平均気温から水の沸騰点までである。温泉湧出量の範囲は毎分数lから数万lで,温度に対し変化する範囲が2桁も大きい。したがって温泉放熱量の大小は湧出量の大小によって大きく左右される。温泉地の熱的規模を評価するために福富孝治は表6に示した0からⅦまでの熱階級区分を提唱した(1961)。熱階級0~Ⅲは温泉湧出量が毎分2000l以下の小規模温泉地であり,熱階級Ⅳは2000l/min~6000l/minの中規模温泉地,熱階級Ⅴは5000l/min~2万l/minの大規模温泉地といったぐあいである。熱階級Ⅵは登別,草津,箱根,別府,雲仙-小浜などのように火山活動に準ずる規模の温泉湧出や,火山性水蒸気の噴出をなす地域となる。熱放散量の小さい,熱階級0からⅢまでの温泉熱源は,地下の高温物体から岩石の熱伝導だけで熱が移動し,地下水を温め,温泉となったという計算が成り立ち,温泉水にマグマから直接熱水が加えられなくても熱的説明ができる。しかし,熱階級Ⅳ以上の温泉地では,マグマからの熱は熱水や水蒸気によって運搬され,地下水と混合し温泉となったとしなければ熱的説明が不可能であることを福富は指摘した。

 日本の温泉総湧出量は現在169万l/minである。日本の地下水の平均温度を14℃,温泉の平均温度を50℃とすれば,日本の全温泉放熱量は,6.1×107kcal/min(13.4×1023erg/年)となる。中村一明は日本の火山噴火による年平均エネルギー放出量を4~6×1023erg/年と見積もっている(1982)。これと比較すると,温泉による放熱量は火山噴火の放熱量の2~3倍に達している。日本列島からは7.3×1024erg/年の地球内部エネルギーが地殻熱流量として放散されている。それは全温泉放熱量の10倍以上になっているが,単位面積当りの地殻放熱量は69erg/cm2・s(1.65×10⁻6cal/cm2・s)と小さな値である。

温泉が誕生するためには,地中の熱を熱伝導や流体移動によって地表に伝えるシステムが形成されることが必要である。このシステムを地熱系と呼ぶ。良好な地熱系の形成には,(1)地下水を暖める熱源があること,(2)温泉となる地下水が定常的に供給されること,(3)暖められた地下水が地表水の浸透による冷却から守られるような地質構造をもつことが必要である。

熱源

火山地帯では地下深部から上昇してくる高温マグマが温泉の熱源である。上昇してきたマグマが地表近くにとどまると,そこに良好な熱源が生まれる。マグマの粘性の大きい安山岩~流紋岩質マグマは噴火活動を終えてもその位置にとどまっているので,地熱系の形成にとって重要な要因である。粘性の小さい玄武岩質マグマは火山噴火後再び地下深部のマグマ溜りに戻りやすいので,地熱系が地表近くに形成されにくい。火山活動が長期にわたり,繰り返して同一の火道を使って行われる複成火山では,火道を取り囲んで高温地熱系が形成される。これに反し,火道が1度しか使われない単成火山では,すぐにマグマが冷却されてしまうので地熱系が育ちにくい。しかし,いくつもの単成火山が群をなしている場合には地熱系が形成される。

 熱源となるマグマ溜りの大きさが半径数kmの球体の場合,冷却するのに20万~30万年,半径十数kmのマグマ溜りでは200万~300万年と推算されている。日本の大型複成火山程度のマグマ溜りの熱的寿命は数十万年程度と考えられる。マグマ以外で熱を発生するものとして,断層運動の摩擦熱,地下での化学反応による発熱もあるが,温泉の熱源としてあまり重要視することはできない。

熱階級Ⅴ以上の有力な温泉地では毎分数千l以上の温泉湧出がある。このような大きな湧出量をもつためには砂礫層にも匹敵するような大きな透水係数をもつ温泉脈がなければならない。大きな透水性をもつ地層が地表にまで達していれば,地表からの雨水の浸透によって,地熱系は冷却されてしまい,長年月にわたり温泉が湧出することはできない。有力な高温地帯ではしばしば難透水性の緻密な地層(キャップロック)によって,深部熱水系が覆われており,キャップロックは地表からの冷水の侵入を阻止し,地下の熱水が自由に地表に流出するのも制限している。キャップロックをもたなくても,緻密な岩盤中の割れ目系に熱水が形成される例がいくつもある。例えば伊豆半島では,この地域の第四紀火山の土台となっている湯ヶ島層群と名づけられている第三紀中新世の緻密な地層中の割れ目系に熱水が貯留されている。割れ目をもつ湯ヶ島層群は透水性が適当に小さく,地表からの冷水の侵入を防止し,地熱を保護する働きをしている。

地球内部の熱はマグマの移動によって最も大量に移動するが,火山噴火で見られるように激しい現象を伴うので,温泉資源として直接利用はできない。人間が利用しやすい地熱エネルギーは水を主とした流体の移動によって地表に達する。水の関与する程度,地熱温度に着目して,地熱系は表7のように分類される。

(1)熱水卓越系 熱水が中心となるもので,日本の温泉の大部分はこの系に属する。地熱発電が可能な有力地熱地帯(熱階級Ⅴ以上)の熱水は塩化ナトリウムに富み,ケイ酸に飽和した中性ないし弱酸性の塩化物泉である。この意味でナトリウム-塩化物泉が熱水卓越系の代表的泉質ということができる。温泉湧出量は毎分数十lから数千lの範囲にあって大きい。

(2)蒸気卓越系 イタリアのラルデレロ,カリフォルニアのガイザーズ,日本の松川地熱系では〈乾いた水蒸気〉が噴出する。このような地熱系を蒸気卓越系と呼び,熱水卓越系と区別する。乾いた水蒸気は直接発電機のタービンに送り込めるので,発電に好都合である。蒸気卓越系は液相と気相の水が共存する2流体相の地熱系である。地中の流体相の圧力分布は水蒸気圧によって支配される。したがって深さの変化に対しての圧力の変化は小さく,熱水卓越系では水柱の高さによって圧力が与えられるのとは著しく異なる。乾いた水蒸気は気相-気・液2流体相の境界付近の流体が断熱的にフラッシングをしながら地表に達することによって得られる。蒸気卓越系の熱流体の特色は塩化物の含有量が著しく少ないことで,地表に見いだされる噴気地帯の温泉はpH2~3の硫酸塩泉である。地表近くで火山ガス中の硫化水素が酸化して硫酸が生成される。蒸気卓越系は水の臨界条件(約374℃,約220気圧)より低い温度・圧力条件での熱水の蒸溜と見ることができる。揮発性の小さい塩化物,硫酸塩は地下の液相に残され,揮発性の大きな硫化水素,二酸化炭素などが水蒸気中に濃集する。熱水卓越系での活動が長く続き,割れ目に熱水鉱物が晶出して,系内への水の侵入が制限されると,熱水卓越系から蒸気卓越系へ変化する。

(3)岩圧砂岩系 上部を不透水性の泥岩で覆われた透水性の良い砂岩中に著しく被圧した熱水が含まれていることがある。熱は地球内部から熱伝導により供給される。このような熱水系を岩圧砂岩系と呼ぶ。急激に大量の堆積物が生じ,地層中に閉じ込められた水が上に重なる地層の荷重の一部を支えるために,異常高圧の地下水系が生まれる。結晶水の多い粘土鉱物が地熱で温められ,脱水反応によって大量の水が放出され,異常高圧を与える場合もある。メキシコ湾岸地域の岩圧砂岩系の熱水は塩分濃度が5000mg/lの低い値(海水塩分3万5000mg/lに比較して)を示し,これは結晶水の放出によるものと推定されている。日本では大規模な岩圧砂岩系はまだ見つかっていない。1965年から69年まで続いた松代群発地震では,大量の塩化カルシウム型地下水(微温泉)が噴出した。岩圧系の地下水の一例と考えてよい。

(4)高温岩体系 地下に高温の岩体が存在するが,熱水や水蒸気を伴わない地熱系を高温(乾燥)岩体系と呼ぶ。高温岩体系では水の流れる割れ目が少ないので,人工的に水を圧入して割れ目を作り,水を流して高温岩体の熱を地表に取り出す技術開発が進められている。アメリカのニューメキシコ州バイヤス・カルデラでの実験は有名。富山県黒部川上流の仙人谷は小規模ながら日本の高温岩体系である。

(5)溶融岩体系 地下に存在するマグマ溜りを指す。火山爆発の根元であるマグマ溜りは大量の地熱源であるが,危険が大きいので,地熱資源としての利用は行われていない。

地下深部から上昇してくる温泉には地表の水と違う性質,成分が含まれていると期待され,古くから温泉の成因について次のような説が出されている。

(1)処女水説 マグマには数%程度の水が含まれている。マグマが冷却固結すると大部分の水は液相として分離される。この分離された水が処女水である。チェコスロバキアの有名な温泉カルロビ・バリ(旧名カールスバート)温泉の起源について,オーストリアの地質学者E.ジュースは処女水説を主張した(1902)。この地域の降水量に対してカルロビ・バリ温泉の湧出量が著しく多いこと,温泉に含まれる炭酸物質や塩化ナトリウムなどの起源は地下深所のマグマに求めるべきであるというのが理由である。

(2)循環水説 アイスランドの温泉を研究したR.W.ブンゼンは降水が岩石の割れ目を通って地中深く浸透し,火山熱によって熱せられ,岩石の成分を溶解して地表に湧出したものが温泉であると主張した(1847)。

(3)化石海水説 石油や天然ガスを求めてボーリングをすると温泉が湧出することがある。地層が堆積するとき,地層中に閉じ込められた海水が温泉水のもと。

 温泉の定義には成因が含まれていない。どの温泉成因説が成立するかをそれぞれの温泉の研究によって明らかにすることがたいせつである。

温泉は谷底に湧出する。地下から温泉が湧出するには地表近くの冷地下水を押しのけて地表に達しなければならない。山体の地下水分布は地形の高低に強く支配されている。山頂部では谷底より水頭が高いので,温泉は水頭の低い谷底に湧出しやすくなる。新しい火山体では,深い谷が刻み込まれていないので地表に温泉が湧出しない例が多い。中央火口から離れた山麓,あるいは,火山の土台となっている緻密な地層中に温泉が見いだされている。温泉湧出に最も有利な条件をもつのはカルデラである。成層火山の成長期が終わると火山体上部が環状に陥没し,カルデラが生じ,一般に水がたまりカルデラ湖が形成される。さらに浸食によってカルデラ内の水が排出されると,カルデラの底に多数の温泉が湧出する。カルデラを生ずる火山活動は一般に104~106年の長期間続くので,十分な熱源が形成され,しかも高い水頭をもつ火山体が崩壊し取り去られ,土台の緻密な地層が地表に露出するなど熱水系形成,温泉湧出の好条件に恵まれることになる。

図1はD.E.ホワイトが描いた熱水系成因モデルである(1967)。カルデラ状あるいは地溝状の凹地の地下深部に熱源のマグマ溜りがある。雨水は陥没を生じた断層に沿って地下深部の熱水貯溜層(透水層)に進む。地下の熱源からは岩石の熱伝導による熱エネルギーおよび火道などの割れ目を通って,熱エネルギーとともにマグマの揮発性物質を含む流体が透水層中の天水に加えられる。冷地下水は熱せられて低密度流体となり,キャップロック中の割れ目を通り地表に温泉として湧出する。図1の左はこのモデルの温度分布を理想化したものである。地下深部にある高温高密度の水には各種の塩類が気相中に存在している。地表近くの高温水は低密度のため硫化水素,二酸化炭素などの揮発性物質を含む水蒸気となって地表に噴出する。

地熱系の中心から低温の周辺部に向かって泉質に規則的な変化が見られる。その分布状況を地図上に表現したものを泉質の分帯図と呼ぶ。箱根火山の温泉では主要陰イオンである塩素,炭酸物質,硫酸基に注目して図2のような泉質分帯図が描かれている。第Ⅰ帯は酸性硫酸塩泉である。現在噴気活動の行われている地帯の浅層地下水が酸性硫酸塩泉である。硫酸イオンが含まれるのは噴出する火山性水蒸気中の硫化水素が地表近くで酸化され硫酸が形成されるためである。第Ⅱ帯は重炭酸塩硫酸塩泉である。この温泉はカルデラの深さ300~700mのボーリング孔から採取される。中央火口丘堆積物の基底部に形成されている深層地下水が重炭酸塩硫酸塩泉である。第Ⅰ帯の温泉や地表水が地中を浸透し,岩石中の硫酸塩物質,炭酸塩物質を液相中に取り込んで,本泉質が生ずる。第Ⅲ帯は高温の塩化物泉である。噴気活動の活発な中央火口丘神山の地下深部から3本の高温塩化物泉脈となってカルデラ東部を深く刻み込む早川渓谷に向かって流下している。地下深所のマグマから分離した高温高圧の水蒸気中に塩化ナトリウム,ケイ酸が気相となって含まれ,第Ⅱ帯の深層地下水に混合して第Ⅲ帯の泉質が生じる。この泉質は中性で,溶存物質の85%が塩化ナトリウム,10%がケイ酸である。第Ⅳ帯は混合型と呼び,塩化物,硫酸塩,重炭酸塩がさまざまの割合で含まれる。カルデラ東部を深く刻み込む早川,須雲川の谷に沿って分布する。泉質分帯図は東西非対称で,熱水系には西から東に向かう流れがあることを示している。

銅,鉛,亜鉛,金,銀などの金属鉱床,石英,カオリン,雲母などの非金属鉱床は大規模な熱水活動によって形成される。地表に湧出する温泉は地中でさまざまな元素を移動,濃集させた後の鉱液と見ることもできる。温泉中の塩類量が海水以上に濃厚である場合,あるいは高温酸性泉の場合には重金属が温泉中に含まれている。カリフォルニア州南部の塩湖ソルトン湖の地熱地帯で掘られた2000mのボーリング孔井から採取された熱水は,海水の数倍の塩分をもつ塩化物泉で,この中に銅3~8ppm,鉛80~100ppm,亜鉛500~540ppmが含まれ,金属鉱床を形成する鉱液として注目された。六甲山地北麓の有馬温泉では塩分濃度が海水の2倍あり,地下から取り出されたボーリング・コアの割れ目には鉛,亜鉛,銅を含む硫化鉱物が認められ,金属鉱物を晶出している温泉として知られている。塩分の低い,通常入浴に利用されている温泉中には,問題となるような重金属はほとんど含まれていない。高温の火山性温泉には,水質汚濁防止法の許容限度0.5ppmを超すヒ素を含むものもあるので,飲用には注意を要する。
熱水鉱床

地球上に噴出する火山物質の75%が海底火山からの産物である。したがって海底にも温泉があってもよい。アメリカの深海潜水船アルビンを用いて1977年からガラパゴス海嶺,東太平洋海膨北緯21°地点(カリフォルニア湾口)などの海底調査が行われた。79年夏,カリフォルニア湾口水深2700mの地点で海底から突き出した煙突状のパイプから激しく黒煙状に熱水が噴出しているのが発見された。泉温は350℃から400℃で,煙突は亜鉛,銅,鉛,銀の硫化物であった。このような煙突は東太平洋海膨の中軸に沿って,数kmにもわたり,直線状に配列していた。日本の第三紀中新世の海底で形成された銅,鉛,亜鉛,銀の硫化物鉱床(黒鉱鉱床)の成因を解く鍵となるものとして注目されている。深海底は水温2℃の暗黒の海底であるが,温泉噴出口周囲の水温13℃程度の暖かい海底に大きさ30cmほどの二枚貝,盲目のカニ,クラゲ,長さ4~5mの巨大な触手をもつ環形動物が群生していた。ガラパゴス海嶺でも1977年に温泉の湧出口周辺に多数の生物が発見されている。1966年紅海の中央部の最も深い所(水深2000m)で水温56℃,海水の7倍の塩分(261g/kg)を含む高温濃厚塩水塊が発見された。鉄,マンガン,銅,鉛,亜鉛は通常の海水中の数百~数千倍程度濃集していて注目されている。また,鹿児島湾北部福山沖の深さ200mの海底に200℃程度の熱水の噴出口が見いだされている。多量の二酸化炭素が酸性泉とともに噴出し,付近の泥質にはヒ素,アンチモン,水銀が濃集していた。日本近海では,小笠原火山島弧西側海底の高地殻熱流量地帯に海底温泉が発見されるものと期待されている。

酸性泉,硫化水素泉などが大量に湧出し,河川に流入すると河川中の動植物の発育を阻害し,河川の農業用の利用もだめになるので温泉毒水と呼ばれている。草津温泉では毎分5000lの硫酸酸性泉(pH1.5)が湯川となって吾妻川に流入し,このため上流で中性であった河川水のpHは3~4に低下し,農業,漁業,治山治水事業,水力発電に障害を与えていた。現在では1日約90tの石灰岩を投入し,毒水の中和が行われている。玉川温泉(秋田県)では98℃の含硫化水素酸性泉が毎分8000l湧出し,玉川毒水と呼ばれて徳川時代から対策が講ぜられてきたが,まだ草津のような中和事業を行うにはいたっていない。また,硫化水素を含む温泉でときたま硫化水素中毒による死亡事故がおきている。

温泉の変動から地震を予知する方法はまだ確立されていないが,以下のような明瞭な前兆現象が観測されている。1923年9月1日に発生した関東大地震(M7.9)では静岡県熱海の大湯間欠泉に明瞭な前兆があったことが知られている。大湯間欠泉は1922年12月20日からまったく噴出を停止した。翌年になって5月8日と9日に噴出,しかし再び停止し,ようやく6月28日から毎日1回噴出を繰り返すようになり,しだいに噴出時間が長くなった。8月31日は40分にわたり噴出し続けた。その翌日が関東大地震となった。熱海に接する伊豆山温泉では9月1日の朝,温泉温度が異常上昇し,多量の水を注がなければ入浴できなかった。伊豆古奈温泉は地震前に白濁した。箱根の堂ヶ島温泉では9月1日午前6時ころに温泉が泥濁し,入浴中身体が見えなくなるほどであった。このように関東大地震の前兆が温泉に現れていた。四国道後温泉は1707年宝永南海地震(M8.4),1854年安政南海地震(M8.4)に際し,湧出が停止した。地震とほぼ同時に温泉の湧出が停止したり,あるいは逆に湧出量が増加,白濁する例はいくつもある。1978年1月14日の伊豆大島近海地震(M7.0)では,かねてから泉温を0.1℃の精度で毎日測定していた伊豆宇佐美温泉で,地震15日前より0.5~0.7℃の前兆異常上昇が観測されている。
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温泉には,歴史的に聖水-聖泉信仰と心身にかんする治療信仰が結びつき,そこからさまざまな伝説や伝承が生みだされた。

 第1にインドの事例をあげると,ラージャグリハ(王舎城)には釈迦も入浴したと伝える温泉が現存しているが,入浴者はかならず下着をつけて湯につかり,セッケンなどを用いて身体を洗浄してはいけないしきたりになっている。温泉は心を清浄にするところであって肉体を清めるところではないとされているからである。その行為は,敬虔なヒンドゥー教徒がガンジス川で沐浴し寺院のそばの池の水で身を清めるのと同様の象徴的な意味をもっている。

 第2に日本の事例をあげると,紀州熊野の湯ノ峰温泉は熊野もうでの巡礼が最後にたどりつくべき聖泉であった。餓鬼身の小栗判官が照手姫に伴われて湯ノ峰の湯壺に身をひたすと,熊野権現があらわれその霊験によって五体が元通りになったという話はよく知られている。この温泉による霊験は,熊野参詣者が熊野川の水で身を清めてから本宮に参拝する儀礼行為と対応しているのであろう。同様に東北最北端の恐山は死霊の集まる霊山とされているが,その宇曾利山湖の周辺には強烈な臭気を発する硫黄泉が噴出し,参詣者の心身をいやす温泉場が設けられている。また出羽三山の一角を占める湯殿山でも,山頂にある神体の大石からは熱泉があふれ,登拝者は裸足をひたして心身のよみがえりを祈る。一般に日本には禊祓の伝統があり,それによって罪やけがれを払うとする観念があったが,温泉による蘇生の観念もそのような伝承と結びつき,とくに治病効果がつよく期待されたのである。

 第3に,日本の古代文献に温泉にかんする記事が多くでてくることをあげなければならない。《出雲国風土記》には,出雲の国造が朝廷に賀詞を奏上するため出発するにさいして温泉で湯あみをしたことを伝え,《日本書紀》では有馬,伊予,牟漏などの温泉の名をあげている。同じく《日本書紀》や,また《万葉集》や《続日本紀》によると欽明,舒明,斉明,天智,天武,持統などの天皇がそれらの温泉地に行幸したという。それがたんなる慰安の旅にとどまるものでなかったことは,たとえば新嘗祭や大嘗祭において天皇が廻立殿で湯あみをするならわしであったこととくらべるとき明らかになる。神と共饗共寝するこの宮廷儀礼では,天皇は湯に入ることによって禊祓をし新たな心身状態へのよみがえりを準備しなければならなかったからである。同様のことは今日,民間の新嘗祭として知られる能登半島のアエノコトの行事においてもみられる。これは秋の収穫のあと田の神を家にみちびいてまつり,神饌を供して共食する神事であるが,このとき司祭者としての家の主人は田の神を湯殿に案内して湯あみをさせる。大嘗祭では天皇が湯に入るのにたいしてアエノコト神事では神が入浴するところが異なっているが,神人共食という神聖な場面において湯殿(人工的に模倣された温泉)が重要な役割をはたしているのは,温泉の意味を考えるうえで注意すべきである。

 第4に,西ヨーロッパの温泉は一般に娯楽的な保養地としての性格がつよいが,聖なる泉を飲み,浴びることによって生命のよみがえりを願うという聖水-聖泉信仰は西ヨーロッパにもみられる。たとえばフランスのシャルトルは中世期にはヨーロッパ最大の巡礼地であり,その地の大聖堂の真下には病者の心身をいやす泉があふれていた。またスペインとの国境沿いにあるルルドは1世紀ほど前にマリアの降臨という奇跡によって聖地になったところだが,そこにわき出る聖水はルルドの泉として知られ,巡礼者によって飲料・沐浴用に利用されている。これらの聖地の泉は必ずしも温泉とはいえないが,しかし熱湯浴を好む日本人と違って微湯浴を好む西欧人にとって,聖地における泉信仰はその心身治療的な機能において日本の温泉療法と類似する点のあることに注目すべきである。

 最後に,温泉にかんする民俗伝承についていえば,各地の温泉が鳥獣,高僧,英雄,神仏などによって発見されたとする話が多くみられる。たとえば熊の湯や鷺の湯として知られるのがそれで,そのほか長野県の鹿教湯(かけゆ)はシカ,静岡県の伊東はイノシシ,長野県の野沢はクマ,岐阜県の平湯はサル,山形県の湯田川や佐賀県の武雄はシラサギによって発見されたといわれる。また吾妻,修善寺などが空海によって,草津,山中,東山などが行基によって,五色,伊豆山などが役行者(えんのぎようじや)によって,そして飯野,別府,湯沢が日本武尊によって発見されたという。また神仏のみちびきによるとするのは,岐阜県下呂の瑠璃光如来,山口県湯田の薬師仏,青森県大鰐の観世音菩薩,熱海や道後の少彦名命など,その例は多い。このほか温泉そのものを神体として,神社に湯とか温泉の名をそのままつけた例もある。
執筆者:

《抱朴子》が温谷の湯泉を人間の常識をこえたものの比喩のひとつにとりあげているように,温泉はつねに中国人によって神秘視された。温谷とは《山海経(せんがいきよう)》にあらわれる温源谷ないし湯谷であって,そこは太陽が登るところであるという。〈温泉は水滑(なめ)らかにして凝脂に洗(そそ)ぐ〉と《長恨歌》にうたわれた唐の玄宗と楊貴妃のロマンスにいろどられる華清池の温泉も,がんらい秦の始皇帝と神女がたわむれていたとき,始皇帝がいたずらをすると神女がつばを吐きかけて瘡(かさ)を生じ,あやまったところただちに温泉を湧出させたという伝説を伴う。六朝時代以後にさかんに制作された地方志には温泉にかんする記述がすくなくない。それらには病気治療の効果や煮たきの力が特記されているのはもとよりのこと,例えば棗陽(そうよう)(湖北省棗陽県)では温泉の水を灌漑に利用して1年に3度の収穫をえたと伝えられている。
執筆者:

温泉はもっぱら療養に利用されている。温泉療養所は広い公園に囲まれた豪華な建物で,自然の美しさを最大限に保存・利用した夏の保養地でもあるため別荘が多く,ホテル,劇場などの施設も整えられている。ヨーロッパに温泉療法が広まったのはローマ帝国の支配によるもので,ゲルマン人の侵入とキリスト教の影響で温泉療法は一時衰退したが,イタリア戦争や宗教戦争に際して傷病者に対する医療効果の大きいことが再認識され,18~19世紀にかけて発展した。温泉療養は金と時間がかかるので,湯治に行くのは上流階級のみであったが,今日では,社会保険の適用によって,多くの人々が療養を受けることができる。治療は温泉医の指導の下で飲用を主とし,期間は2~3週間。年間の患者数はソ連600万,西ドイツ200万,イタリア150万,フランス52万といわれている(1975)。ヨーロッパの有名な温泉場としてはマツェスタ(ロシア,黒海沿岸ソチ地区),バーデン・バーデン(ドイツ),カルロビ・バリ(チェコスロバキア),エクス・レ・バン(フランス)などがある。なお,入湯の習俗については〈風呂〉の項を参照されたい。
執筆者:

古代から日本人は温泉を利用してきたので,温泉の湧出地には集落ができることが多く,熱海や別府のように都市に成長した例もある。湯治は江戸時代に入ってからとくに盛んになり,庶民の間には掛金を積みたて,団体で湯治場に出かける湯入講があった。したがって温泉集落には,湯治客の来遊範囲である〈入湯圏〉がだいたい固定していた。例えば,長野県野沢温泉では周辺地域からだけではなく,峠を越えて遠く新潟県中頸城地方にまで入湯圏が伸びていた。江戸末期から明治初期にかけての,ノザワナの栽培地域と湯治客の地理的分布がほぼ一致していたのは興味深い。この入湯圏は今日では大きく変化している。第2次世界大戦前までは,一般に湯治の季節は春から秋までで,冬の湯治客は少なかった。そこで標高の高いところの温泉集落は,冬季には積雪のためもあって営業しないところも多かった。草津温泉は明治初期までは春から秋まで営業する季節的温泉集落であり,住民は冬季間ふもとの村に移り住んだ。これを人々は〈冬住み〉といった。また志賀高原には大正期まで2軒の季節的温泉宿しかなかった。これらはいずれも冬季にはふもとの母村に下山していたが,昭和初期にスキーが導入されると,冬季でも宿泊客があり,定住温泉集落に成長した。なお,温泉集落のうち温泉利用効果が十分期待でき,かつ静かで,健全な保養地として大いに活用される場として,国民保養温泉地が全国に91ヵ所(2008)ある。
執筆者:


温泉(旧町) (おんせん)

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百科事典マイペディア 「温泉」の意味・わかりやすい解説

温泉【おんせん】

水温25℃以上または一定量以上の溶存成分(総量で1g/kg以上,または温泉法で定める特定の成分が所定量以上)を含む地下水。冷鉱泉(25℃未満),低温泉(25〜34℃),温泉(34〜42℃),高温泉(42℃以上)に分類する場合もある。また化学組成によって単純泉,単純炭酸泉,重炭酸土類泉,重ソウ泉,食塩泉,硫酸塩泉,鉄泉,ミョウバン泉,硫黄泉,酸性泉,放射能泉の11項目に区分されていたが,1978年の鉱泉分析法改定で塩類泉,単純温泉,特殊成分を含む温泉に大別された。自然湧出の温泉は火山地帯に多く,その熱源は冷却し続けているマグマにある。しかし温泉水の大部分は地表から浸透していった循環水で,数%以下がマグマに由来する処女水である。溶存成分の多くは循環水中に途中の岩石中の可溶性成分が抽出されたものであり,一部がマグマ由来と考えられている。近年,平野の地下深部などで多数の温泉が開発されているが,これらは非火山性の地温上昇による温泉である。→鉱泉
→関連項目冷泉

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「温泉」の意味・わかりやすい解説

温泉
おんせん

兵庫県北西部,新温泉町中・南部の旧町域。岸田川上流域にあり,西は鳥取県に接する。 1927年町制。 1954年照来村,八田村の2村と合体。 2005年浜坂町と合体して新温泉町となった。湯村温泉は泉温 98℃の「荒湯」で知られ,平安時代初期,天台座主慈覚大師 (→円仁 ) の発見といわれる。温泉熱を利用して野菜,果樹などの温室栽培が行なわれる。但馬牛の主産地。付近にはスキーの好適地が多い。南部の山地は氷ノ山後山那岐山国定公園に,北東部の山岳地一帯は但馬山岳県立自然公園に属する。

温泉
おんせん
hot spring; thermal spring

温泉学的には,物理的,化学的に普通の水と性質を異にする天然の特殊な水が,地中から地表に出てくる現象を温泉と定義し,その水を温泉水という (広義の温泉) 。日本の温泉法 (昭和 23年法律第 125号) では,地中から湧出する温水,鉱水および水蒸気その他のガス (炭化水素を主成分とする天然ガスを除く) で,温泉法で規定した表に掲げる温度または物質を有するものを温泉としている。温泉を特徴づける物理的性質の一つは泉温であるが,日本 (温泉法) では 25℃以上,イギリス,ドイツ,フランス,イタリアの諸国では 20℃以上と規定している。福富孝治は,その土地の年平均気温プラス7℃以上,25℃未満のものに対して微温泉という名称を与えている。温泉は泉温,泉質 (pH,溶解成分) ,湧出形式などによって種々の区分あるいは分類が行われている。 (→鉱泉 )  

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岩石学辞典 「温泉」の解説

温泉

鉱泉の中で比較的温度が高いもの.温度の低いものを冷泉といいその境界温度は一定していないが,便宜上一般に湧出地点の年平均温度が境とされている.日本では25℃以上,または特定の成分を一定値以上含まれているものを温泉という.一般に温泉は火山活動の結果起こったもので,間歇泉が周期的であることに比べて,熱い水が連続的に流れる泉である[Holmes : 1962].

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世界大百科事典(旧版)内の温泉の言及

【温泉荘】より

…但馬国二方郡(現,兵庫県美方郡温泉町)の荘園。この地はもと国領温泉郷で,その本領主は平季盛であったが,1139年(保延5)子の季広が跡を継ぎ,これを法橋聖顕に寄進した。…

【聖地】より

…比叡山や高野山はもとより,大山(だいせん),白山,英彦山(ひこさん),石鎚山などの霊山も数多くの縁起や霊験説話を生みだした。そしてその聖なる中心点にはしばしば聖なる泉がわき,温泉が噴き出ている。業病を背負う巡礼者はその聖なる泉にわが身をひたして加護を祈り,聖水を飲みほして精神の安らぎを求め,またそれを眼や脚に注いで患部の蘇生を祈願した。…

※「温泉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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