デジタル大辞泉 「猶」の意味・読み・例文・類語

なお〔なほ〕【猶/尚】

[副]
以前の状態がそのまま続いているさま。相変わらず。やはり。まだ。「今も―健在だ」「昼―暗い
状態や程度がいちだんと進むさま。さらに。もっと。いっそう。「君が来てくれれば―都合がいい」「会えば別れが―つらい」
現にある物事に付け加えるべきものがあるさま。「―検討余地がある」「―10日の猶予がほしい」
(あとに「ごとし」を伴って)ちょうど。あたかも。「過ぎたるは―及ばざるがごとし」
「御首は敷皮の上に落ちて、むくろは―坐せるが如し」〈太平記・二〉
[接]ある話の終わったあとで、さらに別のことを言い添えるのに用いる語。「―詳しくは後便にて申し上げます」
[類語]1矢張りまだいまだいまだに今なお今もってなおも依然未然未発相変わらずやっぱりなおかつまだまだいまだ嘗てつい・今のところ・今に至るも/(2更に一層もっとますますいよいよよりも少しもう少しずっと余計なおさら一段と弥が上にましていわんや数段段違い層一層しのぐもそっと今少しぐんとぐっとうんとだいぶ余程遥かひとしおうたた尚尚なおなおなお以て更なるひときわいや増すなお且つかてて加えてそれどころそればかりかしかのみならずのみならず加うるにおまけにまた且つまた且つこの上その上しかもさてはさなきだに/(3もうあと更にまだもっとよりなおさらますます一層一段と余計いやが上にいよいよも少しもう少しずっと然も今一つもう一ついまいち今少しもそっとぐっとぐんと但しまだ余計ちなみに念のためついでについで手ついでがてらかたがたかたわら

ゆう【猶】[漢字項目]

常用漢字] [音]ユウ(イウ)(漢) [訓]なお
ぐずぐずしてためらう。「猶予
さながら…のようだ。「猶子
[名のり]さね・より
[難読]猶太ユダヤ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「猶」の意味・読み・例文・類語

なおなほ【猶・尚】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙
    1. 一つの状態や心情・意志などが、それを解消する可能性を有する事態を経た後も、引き続き変わることなく持続するさまを表わす。やはりもとのとおり。それでもやっぱり。何と言ってもやはり。
      1. [初出の実例]「旅衣八重着重ねて寝ぬれども奈保(ナホ)はだ寒し妹にしあらねば」(出典:万葉集(8C後)二〇・四三五一)
    2. 一つの判断や意志を、対立する判断や意志を付けることによって、確認する気持を表わす。やはり。どう見ても。
      1. [初出の実例]「隼人の湍戸(せと)の巖も鮎走る吉野の滝に尚及(し)かずけり」(出典:万葉集(8C後)六・九六〇)
      2. 「猶しばし心みよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)桐壺)
    3. 欠点や好ましくない点を含む一つの状態が、他と比べてまだましであり、あるいはその欠点にもかかわらずすぐれた一面を持つことを認める気持を表わす。まだしも。むしろ。それでも。そうは言っても。
      1. [初出の実例]「猶思ひてこそいひしか、いとかくしもあらじと思ふに、真実に絶え入りにければ、まどひて願たてけり」(出典:伊勢物語(10C前)四〇)
    4. ある状態や他のものに比べていっそう程度が増すさまを表わす。ますます。いちだんと。もっと。ずっと。さらに。
      1. [初出の実例]「波高しいかに梶取水鳥の浮き寝やすべき猶や漕ぐべき」(出典:万葉集(8C後)七・一二三五)
    5. ( 「なお…のごとし」などの形で ) 一つの事物、事態が、他の事物、事態とそっくりであるさま。まるで。あたかも。ちょうど。
      1. [初出の実例]「問難皆答ふること、若(ナホ)泉流のごとし」(出典:守護国界主陀羅尼経巻八平安初期点(900頃))
  2. [ 2 ] 〘 接続詞 〙 一つの話を終えたあとに、追加して別の話を始めようとするときの、つなぎのことば。それに加えて。付け加えると。加えていうと。
    1. [初出の実例]「五条大納言邦綱卿、御馬二疋進せらる。心ざしのいたりか、徳のあまりかとぞ人申しける。なを伊勢より始て、安芸の厳島にいたるまで、七十余ケ所に神馬を立らる」(出典:平家物語(13C前)三)

猶の補助注記

( 1 )「なお(直)」との関係を認める説と否定する説とがある。前者は、物がゆがまない・まっすぐであることを原義とする「直」のより広義としての「そのままに(事態・事象の不変)・まっすぐに」が、「なほ(猶)」の意味する「やはり」であるとする。後者は、ある事態の成立を妨げるような事情が生じているにもかかわらず、依然として成立し続けることを表わすのが「猶」の原義で、「直」の原義とはただちに結びつかないとする。
( 2 )[ 一 ]は、漢籍で「やはり」の意にも使われる「猶」などの文字が「ちょうど…のようだ」の意にも使われるところから、国語の「なお」にも加えられた用法で、平安初期から訓点資料に見える。

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普及版 字通 「猶」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 12画

(旧字)
12画

(異体字)
13画

[字音] ユウ(イウ)
[字訓] はかりごと・なお

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 形声
声符は(しゆう)。(ゆう)の声がある。〔説文〕十上に「(さる)の屬なり」とし、「一に曰く、西(ろうせい)にて犬子を謂ひてと爲す」とあり、獣名とする。〔水経注、江水一〕に、猶(ゆうこ)は好んで巌樹に遊び「一、或いは三百、順に乘ずること飛ぶが(ごと)し」という。この字を猶予・夷猶のように用いるのは双声の連語。謀猶のときには多くを用い、金文の〔毛公鼎〕に「我がの小大の(はかりごと)」のようにいう。漢碑に「良」「」のように、の義に用いる。繹酒(えきしゆ))に犬牲をそえた形で、神を祀り、神意に謀(はか)る意。また(ゆう)・(又)に通じ、さるの意に用いる。〔楚辞、九歌、山鬼〕「(さる)啾啾(しうしう)として、(さる)夜に鳴く」のの形が最も古くて、謀の意が本義。他の義には猶を用い、いま両字の用義を異にしているが、もと一字であった。

[訓義]
1. はかりごと、みち。
2. 犬の子。
3. さる、また・又に作る。
4. 誘と通じ、あざむく。
5. 由と通じ、なお~のごとし。
6. 已・以と通じ、はなはだ、すでに。
7. 似と通じ、にる、おなじ、ひとし。
8. 夷と通じ、ゆったり、ゆたか、ためらう。
9. (ゆう)と通じ、とが、あやまち。

[古辞書の訓]
〔名義抄〕 ナホ・ゴトシ・ゴトク・ハカル・ハカリゴト・カクノゴトク・カクノゴトキ・ヨル・ミチ・イフ/夷 ウラオモフ 〔字鏡集〕 イツハル・ヨル・ナホ・ゴトシ・イマ・ミチ・ハカリゴト・サルノタグヒナリ・カクノゴトキ

[語系]
・由jiuは同声。以ji、似zi、用jiongは声近く、通用することがある。hiuも、古く通用することがあったのであろう。

[熟語]
猶夷・猶疑・猶子・猶若・猶然・猶父・猶与・猶予
[下接語]
遠猶・王猶・嘉猶・機猶・猶・顕猶・弘猶・光猶・宏猶・皇猶・高猶・鴻猶・神猶・清猶・聖猶・先猶・壮猶・大猶・帝猶・謀猶・令猶

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