(読み)きわ

精選版 日本国語大辞典 「際」の意味・読み・例文・類語

きわ きは【際】

〘名〙
① 物事の窮まるところ。極限。限界。きわみ。果て。限り。
※枕(10C終)一八六「受領の北の方にて国へ下るをこそは、よろしき人の幸のきはと思ひて愛でうらやむめれ」
② 物と物との接するところ。境目。端。仕切り。また、そのすぐそば。ほとり。
源氏(1001‐14頃)空蝉「紅の腰ひきゆへるきはまで、胸あらはに、ばうぞくなるもてなしなり」
③ 物事の様相が転換するような大切な時期。転機。時。折り。当座。
※源氏(1001‐14頃)帚木「今やうやう忘れゆくきはに、かれはたえしも思ひ離れず」
徒然草(1331頃)三〇「年月へても露忘るるにはあらねど、去る者は日々に疎しといへることなれば、さはいへど、其のきはばかりは覚えぬにや」
④ 年末及び節季の決算期。江戸時代、商家の勘定日。
※評判記・けしずみ(1677)「かなしきもの〈略〉きはにかねのなきは、かなしきことのうはもりなるに」
⑤ 物事の段階。程度
(イ) 人の所属する家門、階級。分際。身分。家柄。
※枕(10C終)二六八「及ぶまじからむきはをだに、めでたしと思はんを、死ぬばかりも思ひかかれかし」
(ロ) 才能、器量などの程度。
※源氏(1001‐14頃)帚木「取る方なく口惜しききはと、優なりとおぼゆばかりすぐれたるとは、数ひとしくこそ侍らめ」
(ハ) 物事の程度。ほどあい。
※大鏡(12C前)六「御ものをいれて、いみじう熱くてまいらせわたしたるを〈略〉さふさふとまいりたるに、はしたなききはにあつかりければ」
⑥ 江戸以降、操り芝居などの寄席芸人、魚商、駕籠屋車夫などが数の九をいう符丁。また、楊弓賭物(かけもの)をするときにも用いられた。
談義本・教訓不弁舌(1754)五「肴売どん七が直段(ねだん)のから名に〈略〉きわ 九百文の事」

さい【際】

〘名〙
① 物と物とが接するところ。また、あるものと他との境目。
※宗五大草紙(1528)公私御かよひの事「御酌の人さいのそとへ銚子を出て、是もさいの外に手を付てくはふべし」 〔易経‐泰卦〕
② ある場所の付近。ほとり。あたり。
③ ある地点と地点との間。
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)象潟「山を越、礒(いそ)を伝ひ、いさごをふみて、其際十里、日影ややかたぶく比」 〔曹植‐七啓〕
④ ある事柄が行なわれる、そのとき。時機。時節。おり。とき。場合。
古事談(1212‐15頃)一「此之際有蹴鞠事」 〔魏文帝‐典論
歌舞伎伊勢平氏栄花暦(1782)三立(暫)「女のさいに烏帽子、提燈に太刀を帯し」

さい‐・する【際】

〘自サ変〙 さい・す 〘自サ変〙
① ある事柄に出会う。ある事柄に臨む。あたる。
廃藩置県に就き諸藩の知事に賜はりたる勅語‐明治四年(1871)七月一四日「朕惟(おも)ふに方今内外多事の秋(とき)に際し断然其措置を得」
② ある物とある物が接する。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「東北は雲に際し一点の山を見ず」

ざい【際】

〘名〙 (「分際(ぶんざい)」の略。一説に「才(ざえ)」から変化したことばで、才知の意とも。「に」を付けて用いることが多い) 分際。身のほど。身分。分限。ふつう、身分もわきまえないさしでがましいことを、非難していうのに用いる。
※狂言記・生捕鈴木(1660)「その時頼朝、なんぢなわのざいに至て、けなげだてはいらざる事よ」

ぎわ ぎは【際】

〘語素〙
① 物を表わす名詞に付いて、そのそば、境目、あたりの意を示す。「壁ぎわ」「髪ぎわ」「水ぎわ」「山ぎわ」など。
② 動詞の連用形に付いて名詞をつくり、その動作が行なわれはじめる時を表わす。…する時。…しようとする時。ちょうどその時。「入りぎわ」「散りぎわ」「死にぎわ」など。

さい‐・す【際】

〘自サ変〙 ⇒さいする(際)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「際」の意味・読み・例文・類語

きわ〔きは〕【際】

《「ぎわ」の形で、他の語と複合しても用いる》
あと少しで別のものになろうとするぎりぎりのところ。境目。また、物の端。「がけのから見下ろす」「生え」「波打ち
ある物にきわめて接近した所。すぐそば。「戸口のに置く」「壁」「山」「窓
物事がそうなろうとするまさにそのとき。「今わの」「入り」「死に」「往生
物事の窮まるところ。限界。際限。
「世に悲しきことの―にはおぼえ侍りしを」〈・柏木〉
身分。家柄。分際。
「いとやむごとなき―にはあらぬが」〈・桐壺〉
才能・器量などの程度。
「取る方なく口惜しき―と、優なりとおぼゆばかりすぐれたるとは、数ひとしくこそ侍らめ」〈・帚木〉
物事の程度。ほどあい。
「はしたなき―に熱かりければ」〈大鏡・道長下〉
江戸時代、年末・節季の決算期。
「―の日和ひよりに雪の気づかひ/惟然」〈続猿蓑
[類語](1へり隅っこ端っこそば境界きょうかい境界線区画仕切り境目さかいめ分かれ目分界臨界いきボーダーライン地域/(3矢先折も折折しも折よく折節折から丁度頃しも時しも際してたまたま偶然適時/(4限界限度極限限り最大限手一杯目一杯頭打ち際限上限下限北限ぎりぎりリミット

さい【際】[漢字項目]

[音]サイ(漢) [訓]きわ
学習漢字]5年
〈サイ〉
二つの物が接する所。限りのところ。きわ。はて。「際涯際限分際ぶんざい辺際
出会う。「際会
接してまじわる。「学際交際国際
時。場合。「実際
〈きわ(ぎわ)〉「際物手際間際窓際水際
[難読]今際いまわ

さい【際】

とき。場合。機会。「有事の」「このだから言っておこう」
物と物との接するところ。「天地の
ころ[用法]
[類語]場合ところ

ざい【際】

身のほど。分際。
時宗ときむねやらぬの逃さぬのと、女子の―にあんまりな」〈浄・百日曽我

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android