バイオテクノロジー(読み)ばいおてくのろじー(英語表記)biotechnology

翻訳|biotechnology

精選版 日本国語大辞典 「バイオテクノロジー」の意味・読み・例文・類語

バイオ‐テクノロジー

〘名〙 (biotechnology) 生物の行なう化学反応を、工業的に利用しようとする技術。アミノ酸の合成、発酵産業、また農業では新品種育成などに利用される。生命工学。〔技術革新を読む目(1981)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「バイオテクノロジー」の意味・読み・例文・類語

バイオテクノロジー(biotechnology)

生物の行う化学反応、あるいはその機能を工業的に利用・応用する技術。遺伝子の組み換え、細胞融合や酵素を扱う技術が含まれ、発酵・新品種育成・環境浄化などに利用。生命工学。生物工学。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイオテクノロジー」の意味・わかりやすい解説

バイオテクノロジー
ばいおてくのろじー
biotechnology

特定の物を生成したり、有用な作用・役務を得るために、生体機能を活用して素材を処理する科学技術、ないしその技術体系の通称。1980年代初頭、国際社会に登場した科学技術用語で、日本では生命工学、生物工学などと称されている。時代とともに、その語意、範疇(はんちゅう)・分野に顕著な変化がみられる。それは、(1)社会的見地――知識か応用か、(2)総合的視点――生物分子から集団に至るどのレベルか、の相違による。その基幹技術は、
(1)生物体の特性・機能に関する資料(情報)解析
(2)特性の改良
(3)特定物品の生成
(4)特定作用・機能の効率化・高度化など
に区分される。

(1)には、核内・核外遺伝子DNA(デオキシリボ核酸)のレベルから生物集団を対象とする生物学的特性・機能の解析、がある。

(2)には、たとえば遺伝子組換えなどの遺伝子工学、細胞融合、核・ミトコンドリア移植などの細胞工学、および高等動植物の個体発生初期に配偶子・接合子などを操作する発生工学(ゲノム操作、染色体工学、生殖工学など)が含まれる。農作物、果樹、園芸作物、家畜動物、水産生物など動植物の育種技術として成果がある。

(3)には、微生物本体の特性や酵素・生理活性物質の特性の利用、および微生物などをホスト(宿主)とする遺伝子工学による医薬品・食品・嗜好(しこう)品などの生成技術がある。

(4)には、微生物・酵素の触媒作用を利用するバイオリアクター(生物反応利用感知系)開発に伴うシステム制御などの技術が含まれる。医学・薬学分野における成果は、その最たるものである。

 今後、技術の進歩と応用分野の拡大に伴い、異なる諸技術の複合化による技術体系の高度化と、技術の適用の場(閉鎖系か開放系か)、手法の如何(いかん)など、モラル、生態・環境への影響に対する慎重かつ適切な配慮・対応が不可欠であろう。

[藤野和男]

水産生物(水産技術)の場合

前述の4区分によれば、水産分野の実態は、次のようである。

(1)水産生物の特性・機能の研究は、発生学・生理学・遺伝学を中心に、応用分野を念頭に置いた実績が多い。対象生物種は、海藻類(ワカメ、スサビノリ、アマノリ、ウシケノリ)、貝類(エゾアワビ、マガキ、ホタテガイ、リンゴガイ、カムチャツカアワビ、アコヤガイ、エゾバフンウニ)、甲殻類(スジエビ、ヌマエビ、テナガエビ、クルマエビ)、淡水魚(ヤマトゴイ、グッピー、リュウキュウアユ、アユ、ニシキゴイ、フナ、キンブナ、ドジョウ、シマドジョウ)、鮭鱒(さけます)類(ホウライマス、イワナ、ヤマメ、ニジマス、アマゴ、サクラマス、シロサケ、ヒメマス)、海産魚(スズキ、マダイ、ヒラメ、マコガレイ、イサキ、トラフグ、ウミタナゴ、タナゴ、ミヤコタナゴ、マアナゴ)、など計40余種にのぼる。品種改良を目ざす遺伝研究では、前記は育種素材といわれる。育種技術開発には、選抜・交雑育種、初期発生における遺伝子の活性化、倍数体(二倍体・三倍体など、染色体セット増数個体)発生の誘起に加えて、品種の特性、環境による諸特性の違いと変化、遺伝率の研究が不可欠である。

(2)魚貝類の育種技術として発生工学が急速に進歩した。すなわち、精子(または卵)を紫外線などで照射して遺伝物質を不活性化したのち、正常卵(または精子)と受精して誘起させる雌性(または雄性)発生、第一または第二減数分裂・受精に引き続いておこる卵からの第一または第二極体の放出、あるいは第一卵割を阻止することによって得られる染色体セット(ゲノム)の倍数化、または胚(はい)・幼稚仔(し)を性ホルモンで処理するなどの技法を、単独にまたは組み合わせることにより、性の統御、雌性(または雄性)発生二倍体または三倍体の大量作出などができる。倍数化は、卵を一定時間、高温(30~40℃程度)または低温(0~3℃程度)の水中に浸すか、高水圧(300~600気圧程度)にさらす物理的手法、またはサイトカラシンBなどの化学薬品水溶液に浸すなどの化学的手法により、紡錘糸の機能ないし極体の形成を阻害して達せられるが、それらの諸条件は生物種によって異なる。また、魚類(脊椎(せきつい)動物)の卵が第二減数分裂中期で受精するのに対して、貝類(無脊椎動物)の多くは第一減数分裂中期で受精可能なため、後者では、第一または第二極体放出阻止(封じ込め)により2種類の三倍体が生じ、両者間におけるゲノムの差がそれらの特性に反映する。多くの水産増養殖種における育種の主目標は、生存・成長・耐病・環境諸要因適応性などの改良とされ、雌性発生二倍体化、性の統御は、クローン化の促進、また三倍体化は、不妊化とそれに伴う成長促進などを目標として、カレイ、ヒラメ、サケ、ニジマス、アユ、コイ、ナマズ、ティラピアなどの魚類、およびアワビ、カキなどの貝類で試みられている。細胞融合を中心とする細胞工学は、一般に変異の拡大または交雑など育種技術の一手法として期待され、アコヤガイなどで真珠の色調改良などを目標にして試みられており、細胞培養を含む関連技法の確立が成否の鍵(かぎ)となろう。

(3)水産生物から検出・分離されるホルモンを含む生理活性物質など特定物品を効率的に生成・量産する技術として、製薬・農芸化学の分野で開発された遺伝子工学の手法が用いられるが、水産独特の技術は未開発である。

(4)特定の作用・機能の効率化・高度化の技術として、集約的養魚用循環水槽の水質浄化に微生物を利用する一種のバイオリアクター技術が開発されている。すなわち、蜂(はち)の巣状のプラスチック製素材を充填(じゅうてん)したバイオフィルター内に好気性の細菌叢(そう)を発生させ、通気とともに魚貝の飼育水槽からの排水を滴下しつつ溶存するアンモニアなどの酸化を促進する一方、嫌気性細菌により前記酸化に伴う生成物(亜硝酸、硝酸塩など)を循環水系中より除去し、長期にわたって水質を安定化する技術である。飼育魚貝の代謝と細菌の発育相との生態的平衡維持・調節が成否の鍵となる。バイオマス・システムの規模によりオゾン化・脱窒素装置などの付加が必要である。

[藤野和男]

家畜動物(畜産技術)の場合

畜産技術として現在使われているバイオテクノロジーは、大きく二つに分けられる。その一つは発生工学であり、もう一つは遺伝子工学である。

(1)畜産の分野では発生工学分野として従来から盛んに使われているのが人工授精である。冷凍精子貯蔵技術が進み、現在では乳牛はほとんど人工授精により繁殖が行われている。また顕微鏡下で1個の成熟卵子の細胞質内に微細針に吸引した1個の精子をマイクロマニピュレーター(微動装置)を使って注入して、体外受精させる方法が開発された。この方法によりウサギ、ブタ、ウシなどの体外受精卵が得られ、これらをそれぞれの家畜の子宮内に戻して着床させ仔(こ)を生産させた。受精卵は通常の人工授精によって得られたものを用いてもよい。この受精卵移植は実用化され、とくに優秀な乳牛の生産に用いられている。乳牛の場合には種牡牛(しゅぼぎゅう)の能力判定に時間がかかる難点があった。そこで優秀な雌ウシにホルモン処理をし過排卵処理をしたのち雄の精子を人工授精して、7~8個の受精卵を採取する。こうして得た受精卵を能力の劣る雌ウシに対し、発情周期をホルモン処理により同調させて、非手術的に卵の移植を行う。これにより、従来より速い速度で雌ウシの泌乳能力が向上されている。この採取した受精卵の性の鑑別が可能となり、雌の受精卵のみ移植して雌ウシのみ生産できる。異種または異系統の受精卵をともに培養して細胞合体によるキメラの作成(集合法)も行われており、交配で子ができないヒツジとヤギの間でもキメラができた。キメラの作成には、多分化能をもつ細胞を胚盤胞に注入して個体を形成させる注入法もある。注入キメラにおいては、遺伝子導入、あるいは遺伝子改変されたES細胞(胚性幹細胞)やEG細胞(胚性生殖細胞)を用いることにより、遺伝子の個体発生やトランスジェニックアニマル(他の種の遺伝子を導入された動物体)作出に応用できる。

 完全に同じ遺伝子構成をもつ動物をクローン動物という。1996年にイギリスで、ヒツジ成体の乳腺(にゅうせん)上皮細胞の核を、血清を入れない培養液(血清飢餓培養)でG1期(G1、S、G2、Mの4期からなる細胞周期の一つで、細胞分裂後の初めの期)停止の状態にし、細胞を除核した未受精卵の囲卵腔(perivitelline space、卵と卵黄膜の間のすきま)に入れ、電気融合法(電気刺激を利用した細胞融合)で核を導入した。そして発生した胚を別の仮親ヒツジの子宮内に移植してクローン羊の生産に成功した。この技術の応用で、マウス、ウシ、ヤギ、ブタ、ネコ、ウマのクローンが次々に生まれた。この技術によって優秀な霜降り肉をもつ肉牛や、超高泌乳量を出す乳牛の多量の生産が期待されている。しかし現在のところ、クローンマウスの出生率は、2~3%と低く、また寿命は正常の交配により生まれたマウスの3分の2である。またクローンマウスを継代して生産すると5代で絶えてしまう。クローン牛の場合も、移植後分娩するのは12%、そのうち発育してクローン牛になるのは67%しかないなど生産効率が低い。初めて生まれたクローン羊も6年半で死亡した。通常12~13年の寿命に比べてかなり短い。今後、これら技術的問題点の解決が望まれる。

(2)遺伝子工学の分野では、有用遺伝子導入による能力の向上の実験が行われており、一部その成果が出ている。例としてラット下垂体から分泌される成長ホルモンの構造遺伝子(DNA)に、肝臓で重金属を無毒化するメタロチオネインをつくる遺伝子のプロモーター部分をつけ、マウス受精卵の雄性前核(卵に侵入した精子の合体前のもの)に顕微操作により注入する。これにより、多量のラット成長ホルモンを肝臓で生産する、より成長の速いスーパーマウスの作成に成功した。同様な方法で、ヒト成長ホルモン遺伝子をウサギ、ブタに導入することに成功した。

 このような、ほかの種の遺伝子が導入された動物をトランスジェニックアニマルとよぶ。このようにして作成されたブタは、成長は10%、飼料効率は17%高く、また背脂肪の厚みが3分の1になるなど生産性は向上した。しかし胃潰瘍(いかいよう)、心嚢炎(しんのうえん)などの症状を伴う虚弱な体質となり、不妊で短命であり、実用化されなかった。

 その後この技術は大腸菌や培養細胞では大量生産の困難なヒトの生理活性物質を、トランスジェニック家畜の乳汁に分泌させ、生産させるのに用いられるようになった。現在まで、血液凝固第Ⅸ因子とα(アルファ)1-アンチトリプシンをヒツジ乳汁に、組織プラスノミノーゲン活性化因子(プラスミンは、血漿(けっしょう)中にある糖タンパク質で、血液の繊維素であるフィブリンを分解する。プラスノーゲンはプラスミンの前駆体で不活性である。この活性化因子の作用で活性のプラスミンとなる)をヤギの乳汁に、インターロイキン-2(免疫調節物質、ウイルス抑制因子)をウサギの乳汁に、それぞれ大量に分泌させて生産している。

 すでに述べたクローン動物の生産は、このようなトランスジェニック動物個体を多数、急速に増殖させることを可能にするもので、遺伝子組換え技術と組み合わせて、将来の家畜の育種の重要技術となると考えられている。

 別法として、異品種のニワトリ精子に放射線をかけ、運動能力はあるが受精力を失わせて、先に人工授精し、ついで同品種の正常精子を同品種の雌に人工授精すると、異品種の遺伝子が導入されることがわかった。しかしこの方法では特定のDNAを導入できない難点がある。前述した顕微操作でDNAを注入する方法よりも効率的にDNAを導入する方法として、レトロウイルス、すなわち逆転写酵素をもつRNA(リボ核酸)ウイルスを用いる方法も使われている。ニワトリの弱毒化したラウス肉腫(にくしゅ)ウイルスを転写して得たDNAに必要なDNAを組み込み、ウイルスの感染力を利用して遺伝子を導入する。この方法で3~10倍の成長ホルモンを分泌するニワトリの作成に成功している。

 1991年、マウスでY染色体上にある、雄性決定遺伝子Sryの構造が決定された。この遺伝子を遺伝的に雌の受精卵(XX)に顕微注入したところ、雄に性転換し、精巣ができ、かつ精子が生産され交尾をしたが、この精子には授精能力がなかった。この雄性決定遺伝子は、種により若干遺伝子配列が異なるものの、ヒトや哺乳類の多くの家畜に存在することが知られた。これにより、性転換技術が完成すれば、畜産の重要な技術となると考えられる。一方、ニワトリなど鳥類ではこれに相当する性決定遺伝子は現在まで発見されていない。

[田名部雄一]

カイコ(養蚕)の場合

バイオテクノロジーということばこそ使われなかったが、カイコでは内容的に現在バイオテクノロジーといわれているものに相当する技術が早くから開発され、利用されている。大きくは次の四つに分けられる。

(1)クローン個体の作成 両生類やマウスでは発生初期の卵割核をばらばらにして、それぞれ別個の除核細胞に注入して個体に育て上げる方法で、遺伝的組成のまったく等しいクローンを作成する技術が可能になっているが、カイコでは単為生殖を誘発する方法でクローンを作成する方法が開発され、すでに実際に利用されている。カイコにおける人為単為生殖の研究は1899年ごろから始まり、雑種強勢の継続保持などを目的として、以来多数の学者の興味の対象となっていた。これを技術的に完成したのは旧ソ連の動物学者アスタウロフである。方法は、羽化したばかりの雌ガから卵巣卵を取り出し、水中でもみほぐして、水をきって25℃に12時間保護後46℃に18分接触させるだけでよい。こうすると卵核の減数分裂が妨げられて、卵細胞核は減数することなく分裂増殖を始め、個体発生に入る。この方法でアスタウロフは高い成功率(最高82%)を報告している。日本で大隈琢巳(おおくまたくみ)が追試したところでは30~40%程度は確からしい。ただ残念ながらこの方法では雌個体だけしか得られない。アスタウロフはこの方法を毎代繰り返して11世代の間、同じ遺伝子型をもつクローンを維持することができた。

(2)卵細胞の凍結保存 哺乳(ほにゅう)動物では受精卵を液体窒素中に長期間凍結保存する方法が開発されたが、この方法はカイコ卵にそのまま適用できない。楠田潤(くすだじゅん)(1946― )らは幼虫体から取り出した卵巣を液体窒素中に凍結保存し、一定期間後に解凍してふたたび幼虫体に戻し、卵細胞を発育させたのち、この卵巣卵に前述の単為生殖法を適用し、次代のカイコを得ることに成功した。

(3)染色体工学 カイコでは今日の組換えDNA技術の先駆をなす方法がすでに1943年(昭和18)に田島弥太郎(たじまやたろう)(1913―2009)らにより開発され、現在ではりっぱに実用化されている。原理は、特定の遺伝子をもつ染色体断片を、ほかの遺伝子をもつ染色体に放射線を用いて転座結合(染色体の一部が他の染色体に結合したり入れ替わったりした状態)させるとか、染色体の一部を除去して生理機能の改善を図るというもので、現在では幼虫斑紋(はんもん)や卵の色により雌雄を鑑別できるカイコの系統や品種が作成され、研究上はもちろん、産業上にも利用されている。

(4)組換えDNA この技術はカイコでも基礎研究の段階で、フィブロイン遺伝子などの構造研究をする目的で利用されているが、形質改造や育種を目的とした研究はまだない。前田進(カリフォルニア大学昆虫学科教授などを歴任、1950―1998)は核多角体病(血液中の脂肪体や血球などの核内で増殖するウイルスによっておこる病気)ウイルスにインターフェロン遺伝子を結合させたものをカイコに感染させ、数日間カイコを飼育してカイコ細胞にインターフェロンを生産させる実験を試み、予期したとおりこの物質が効率よく生産されて体液内に出てくることを確認した。核多角体病ウイルスを改造し病原性を除去すれば、カイコの研究のためのベクター(遺伝子の運び手として働く、自己増殖性のDNA分子)として利用性が高いものが得られると思われる。

 遺伝学研究では、カイコは日本のお家芸で早くから研究が進められてきたが、新たな動きもある。2003年(平成15)カイコゲノムの解読が始まった。国の予算(平成14年度補正予算)を得て、農林水産省の支援のもと独立行政法人農業生産資源研究所が推進する。全ゲノム解読は、全ゲノムショットガン方式で行う。同方式は、ゲノムDNAを細かな断片に切断し、その両端の塩基配列を読んで全体をつなぎ合わせて元の配列を再構成するというもの。カイコの全ゲノムサイズは約5億3000万塩基対(イネは4億塩基対)であり、今回はその2.5倍に相当する塩基配列を解読するが、発現頻度や発現量の少ない遺伝子断片を発見し、有用遺伝子単離の促進を図る。カイコゲノムは絹糸生産にかかわる遺伝子だけでなく、虫と植物の関係に必要な遺伝子の働きも明らかにしてくれる。この解読に成功すれば、地球環境の維持や害虫駆除に役だつことも期待できる。

[田島弥太郎]

植物(農業技術)の場合

植物の場合は、大きくは次の五つに分けられる。

(1)優良個体の大量増殖とウイルスの除去 組織培養によって不定芽(頂芽と腋芽とをあわせて「定芽」といい、そのほかの位置にできる芽が「不定芽」)や不定胚(1個の体細胞から生殖過程を経ずに直接形成される胚状組織)を効率よくつくりだせる植物では、短期間に一つの個体を大量に増やすことができる。このようにして得られた遺伝的に同一な個体群をクローンとよぶ。組織培養によるクローン増殖は挿木や株分けなどの従来の繁殖方法と比べて、小さな状態で繁殖が可能であることから、微細繁殖とかマイクロプロパゲーションとよばれる。ランや観葉植物などの栄養繁殖性作物では、作出された優良品種を短期間に大量に増殖し、普及する手段として利用されている。培養細胞から不定胚を大量に作出できる植物では、それを人工被膜で包み込んで人工種子として利用する可能性が検討されてきたが、まだ実用に耐えるようなものにはなっていない。

 組織培養のうち、茎頂組織はもともと茎や葉をつくりだす部分なので、これを切り取って培養すると多くの植物では最低1個体は得ることができる。植物体がウイルスに冒されていても、茎頂端0.5ミリメートル以下の部分は通常ウイルスが侵入していないので、このサイズで切り取って培養すると、ウイルスに冒されていない植物、すなわちウイルスフリー植物を得ることができる。ウイルスに冒された作物は生育や品質が悪くなるので、茎頂培養によるウイルスの除去は、果樹や栄養繁殖性の野菜や花ではとくに重要であり、広く一般的な技術として利用されている。

(2)変異体や倍数体の選抜 植物では、いままでになかったような有用な変異個体をみつけることによって飛躍的に育種が進歩した例が多い。こういった有用な変異体は自然におこる突然変異として出現するが、その頻度はきわめて低いため、放射線照射や化学薬品による処理などの人為的な突然変異誘発処理が利用されている。1990年代後半からは、イオンビーム(中性粒子から電子を剥(は)ぎ取り正に帯電させたイオンを、方向と速度を揃えてビーム化したもの)照射による突然変異誘起に関する研究が盛んとなり、その育種的利用に関心が集まっている。一方、変異は組織培養を行って得られる植物体にも多発することが知られており、このような変異を培養変異や体細胞変異とよんでいる。培養変異には遺伝子レベルでの変異と倍数体や異数体などの染色体数のレベルでおこる変異が含まれている。遺伝子レベルの変異には生育異常など不都合なものが多いが、耐病性や矮化(わいか)、品質の向上など有用な変異も出現し、それらを利用した新品種の作出も行われている。一方染色体レベルの変異に関しては、倍数体が育種的には重要である。倍数体は花の大型化などが期待できるためにとくに花卉(かき)園芸植物で多く利用されている。倍数体は従来、コルヒチンなどの染色体倍加作用をもった薬剤で処理することにより人為的に作出していたが、培養変異としても比較的出現しやすいために、その積極的な利用にも関心が集まっている。

(3)半数体植物の作出 植物の配偶子である花粉や卵細胞を適当な条件で培養すると、分裂を開始し植物体に成長することがある。通常は、配偶子だけを培養することが技術的にむずかしいので、花粉は葯(やく)に入ったまま、卵細胞は未受精の胚珠として培養する。前者を葯培養、後者を未受精胚珠培養とよんでいる。胚珠を培養しても卵細胞が分裂しないような場合には、あらかじめ放射線を照射した花粉を受粉して、その刺激で卵細胞を分裂させる方法もあり、これを偽受精胚珠培養とよんでいる。配偶子は減数分裂を経てつくられるため、通常の植物体(二倍体)を構成している細胞の半分の染色体しかもっていない。こうした配偶子から直接植物体を再生できれば、その個体は半分の染色体をもつ植物(半数体植物)となる。半数体植物は各遺伝子について、対立する遺伝子がないために、潜性の突然変異を効率よく作出したり発見したりするのに適している。しかしもっと重要なのは、半数体をコルヒチンなどの染色体倍加作用をもつ薬剤で処理することにより、二倍体に戻すことができる。こうして得られた植物は純系の二倍体となるため、自殖を繰り返して行う通常の方法と比べて、短期間に純系をつくることができ、育種年限の短縮に大きな効果がある。いままでのところ、雌の配偶子を培養するより、雄の配偶子である花粉を培養した場合のほうが、半数体作出に成功した例が多いが、それでもナス科、アブラナ科、イネ科の植物以外にはほとんど成功例がない。イネなどでは葯培養が実用的な品種の作出に実際に利用されている。

(4)種間雑種の作出 植物の育種においては、耐病性などの有用な遺伝子を別な植物種から導入したり、大幅に変異を拡大することを目的として、遠縁の種間で雑種を作出することが必要となる。しかし、遠縁の種間では交配を妨げるさまざまな機構が働いており、雑種が得られないのが一般的である。ただし、比較的近縁な種間では受精はおこっているのに、胚が途中で死んでしまうことが原因となっている場合が多い。そのような場合、死ぬ前に胚を取り出し、人工的な培地の上で育てることが可能である。そのような技術を胚培養とよんでいるが、実際は胚だけを取り出すのは困難なことが多いため、胚を含む胚珠や子房ごと培養するのが一般的である。1980年代後半以降、とくに花卉の育種手段として、さまざまな組合せの種間雑種が作出されている。

 受精がおこらないような、さらに遠縁の種間で雑種をつくりたい場合には、細胞融合法を用いることができる。細胞融合には、酵素処理によって細胞壁を分解し、細胞壁のない裸の細胞、すなわちプロトプラストを作成することと、そのプロトプラストから植物体を再生する技術を確立しておくことが必要である。細胞融合は、異種のプロトプラストどうしを混合し、ポリエチレングリコールなどの薬剤で処理したり、電気的な処理をすることで引き起こすことができる。融合はランダムにおきるので、異種間で融合した細胞を選んで植物体を再生させることにより、雑種植物を得ることができる。融合には体細胞、すなわち植物体から得た細胞を用いるために、得られる融合雑種を体細胞雑種とよんでいる。ただし、縁が遠い組合せほど、植物体再生が困難となる、片親の遺伝子が排除されて雑種にならない、雑種に種子ができないなど、解決すべき問題が多い。したがって1990年代後半からは、比較的近縁な植物間で雑種をつくる技術として利用されることが多くなっている。また、同種内の異品種間における雑種や、同一品種どうしで融合し倍数体を作出するような利用法もある。さらに、雄性不稔など、細胞質のミトコンドリアや葉緑体がもつ有用な遺伝子を導入する目的で、核を放射線で不活化した細胞を通常の細胞と融合することも行われている。

(5)遺伝子組換え DNAの分析技術や遺伝子導入技術が急激に進歩したことにより、植物への遺伝子組換えの応用は、現在もっとも大きな農業上の関心事になっている。かつてはバクテリアやウイルスに由来する遺伝子を植物細胞に導入し、その影響をみることが研究の中心であったが、現在では、高等動植物を含めさまざまな生物から農業上有用な遺伝子が単離されるようになり、それらの遺伝子を用いた作物の育種に大きな注目が集まっている。植物においては、シロイヌナズナやイネなどのモデル植物を中心にゲノム解析が行われた結果、さまざまな機能をもった遺伝子が単離されている。さらにそれらの遺伝子の塩基配列をもとにして、同じ働きをもった遺伝子が別な植物からも比較的容易に単離できるようになり、より多くの実用的な有用遺伝子が利用できる時代となった。すでに除草剤耐性のダイズやナタネ、耐虫性のワタなど、栽培上のメリットが大きい実用的な品種が作出され、アメリカを中心とした大規模栽培に取り入れられている。また、これらの生産物は大部分加工された形で日本にも輸入されている。一方、日本ではイネなどの重要な食用作物を対象に、除草剤耐性、耐病虫性、不良環境耐性などの遺伝子を導入された組換え植物がすでにたくさん作出されているが、その安全性をめぐってさまざまな議論が交わされており、花を観賞する植物を除き、実際栽培される段階には至っていない。世界で実用化されている組換え植物は、作物を生産する側の立場でつくられたものが大部分であるが、高品質や低アレルギー、低カロリーの食品、食べるワクチンなど、健康食品を志向し、消費者のメリットを重視した組換え作物を作出する研究開発も盛んに行われている。

[三位正洋]

医療の場合

(1)遺伝子組換え技術の利用 遺伝子は生物の設計図であり、地球上のすべての生物は遺伝子に書かれた情報に基づいて生命活動を行っている。その生命の設計図である遺伝子を人工的に操作し書きかえて人間に有益な生物をつくり出すのが遺伝子組換えである。医療の分野でもっとも広く利用されているのが、遺伝子組換えを利用しヒトインスリンをつくる遺伝子を組み込まれた細菌を培養してヒトインスリンをつくるバイオ製剤である。かつて糖尿病の治療に使われていたブタのインスリンは副作用のアレルギーをおこす患者が少なくなかった。この問題を解決したのが遺伝子組換えである。血友病の治療にも血液製剤でなくバイオ製剤が使用されている。

(2)健康機能性食品 この遺伝子組換えを利用してダイズやトウモロコシといった作物に特定の遺伝子を組み込んでつくられたのが、除草剤に強いダイズや害虫に強いトウモロコシなど遺伝子組換え作物であり、それを原料として生産されるのが遺伝子組換え食品である。医療の分野では健康機能性食品である第2世代の遺伝子組換え作物が開発されている。グリシニン(ダイズに含まれており、コレステロールを低下させる)をつくる遺伝子を組み込んだコメ、フェリチン(鉄分を蓄積する働きがある)をつくる遺伝子を組み込んだコメ、ラクトフェリン(大腸癌(がん)を抑制する)をつくる遺伝子を組み込んだイチゴといったものが開発されている。β-カロチン(小腸で分解されるとビタミンAになる。スイスで開発された)をつくる遺伝子を組み込んだコメが東南アジアで実用化され、ビタミンA不足による夜盲症や発育停止の予防に役だっている。

(3)遺伝子治療 ある特定の遺伝子が機能しないことによって起きる遺伝病に対する遺伝子治療も進んでいる。機械の部品が故障したらその部品を取り換えれば修理できるように、遺伝子治療は故障した遺伝子を正常な遺伝子に取り換える治療といえる。1990年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)が世界初の遺伝子治療をアデノシンデアミナーゼ欠損症(ADA)という遺伝病に対して行った。ADAはアデノシンデアミナーゼ(AD)という酵素がつくれないために免疫機能に有害な物質が蓄積する難病である。患者の血液から採取して培養したT細胞にADをつくる遺伝子を組み込んだレトロウイルスを感染させADを産生するT細胞をつくる。このT細胞を患者に戻すと、T細胞がADをつくるので免疫機能が正常になる。この方法ではT細胞の寿命があるため3か月に1回のペースで治療を継続しなくてはならないという欠点がある。遺伝子治療は遺伝病だけではなく、癌の治療にも利用される。1991年に悪性黒色腫という皮膚癌に対する遺伝子治療がNIHで行われ、その後は乳癌、肺癌、卵巣癌などにも遺伝子治療が行われた。癌に対する遺伝子治療には、癌細胞の活動を抑える癌抑制遺伝子を入れる方法と癌細胞を攻撃する腫瘍壊死(しゅようえし)因子(TNF)をつくる遺伝子を利用して免疫細胞を強化する方法がある。

(4)予防と治療 医学の分野では遺伝子組換えを使って「トランスジェニックマウス」とよばれる実験動物がつくられている。全身の痙攣(けいれん)をおこす遺伝病をもったシラバーマウスは、神経細胞を包んでいるミエリンをつくる遺伝子が欠けている。このミエリンをつくる遺伝子の機能を喪失させる「アンチセンス遺伝子」という遺伝子を人工的につくってマウスの受精卵に注入し妊娠マウスの子宮に戻すと、産まれてくるマウスはミエリンをつくることができなくなってシラバーマウスになる。アメリカでは血栓(けっせん)症の治療に使うアンチトロピンⅢ(血栓症の発現を防ぐ特別なタンパク質)をつくるトランスジェニックヤギが開発され、日本でも高血圧と関係している遺伝子を組み込まれた「つくば高血圧マウス」がつくられた。トランスジェニックマウスは多くの病気の予防と治療の研究に重要な役割を果たしている。

(5)クローン羊の目的 哺乳類では世界初となった体細胞からつくられたクローン羊がイギリスのロスリン研究所で誕生し「ドリー」と名づけられたのは1996年のことであった。クローン羊の技術は人間にも応用することができることから、アメリカの当時の大統領クリントンはクローン技術を人間に応用する研究に対する政府の研究費を禁止した。ローマ法王もクローン人間の禁止を呼びかけ、フランスの大統領シラクも生命倫理法の見直しを命じた。どうして哺乳類で初めてのクローンがマウスでなくヒツジだったのかというと、クローン羊は単なる好奇心ではなく医学的な目的のもとに開発されたのである。ロスリン研究所はα-1-アンチトリプシン(肝臓から分泌されるタンパク質で、トリプシンなどのタンパク質分解酵素を抑制する)をつくる遺伝子を組み込むことで、乳汁からα-1-アンチトリプシン欠乏症という遺伝病の治療薬となるα-1-アンチトリプシンを分泌するトランスジェニック羊を開発した。このトランスジェニック羊は草を食べてα-1-アンチトリプシンをつくるからコストが安くてすむが、子どもを産んで増やすのでは時間がかかりすぎるのでクローンで増産したのである。クローン羊は薬用動物だったのである。

(6)ヒトゲノム解読 人間のDNAには31億6000対の塩基配列がある。その塩基配列を解読する究極のバイオテクノロジーといえるヒトゲノム計画によって、2001年にヒトゲノムの解読がすべて終了した。ヒトゲノムが解読されたことは医学の分野に大きな変化をもたらしつつある。その一つが個人によって塩基配列が違う「SNP(スニップ)」(single nucleotide polymorphism、一塩基多型)とよばれる部分の重要性である。ある人間では「AGCTTAAGC」なのに、別の人間では「AGCCTAAGC」と4番目の「T」と「C」が違っているSNPは、500万から1000万くらいあるといわれ個人としての特徴を示している。あるSNPをもっていると糖尿病、心臓疾患、喘息(ぜんそく)、癌といった病気にかかりやすいことから、ある個人のSNPを調べると、その人が将来どういった病気になる可能性が高いかわかるから予防が容易になる。薬の副作用には個人差があって同じ薬を服用しても副作用がおきる人もいればまったくおきない人もいるが、個人のゲノムを調べ、その人にあった薬を投与できるようになる。洋服にもレディーメイドオーダーメイドがあるように、医療の分野でもオーダーメイド医療が可能になる。栄養剤や風邪薬ならレディーメイドでもいいが、糖尿病、心臓疾患、喘息、癌、高血圧といった病気の薬は、今後はオーダーメイド医療が優先されていくと思われる。

[中原英臣]

『田島弥太郎著『蚕のモザイク』(1947・北隆館)』『A・T・ブル、G・ホルト、M・D・リリー著、岡田弘輔訳『バイオテクノロジー・OECDリポート』(1983・培風館)』『三位正洋ほか著『わかりやすいバイオテクノロジー』(1985・評伝社)』『篠原昭ほか編『バイオテクノロジー入門――21世紀への革新』(1986・培風館)』『工業英語編集部編『バイオテクノロジー用語英和小辞典――重要1000語解説』(1987・アイピーシー)』『S・ジャコブソンほか編、田中直訳『バイオテクノロジーと第三世界』(1990・勁草書房)』『高辻正基著『入門 バイオテクノロジー』(1991・日本工業新聞社)』『太田次郎・室伏きみ子編『バイオテクノロジー用語事典』(1993・オーム社)』『池上正人ほか著『バイオテクノロジー概論』(1995・朝倉書店)』『相田浩編著『バイオテクノロジー概論』(1995・建帛社)』『木村光著『バイオテクノロジーの拓く世界』(1996・日本放送出版協会)』『小林猛著『バイオプロセスの魅力』(1996・培風館)』『中原英臣・佐川峻著『ウイルス進化論――ダーウィン進化論を超えて』(1996・早川書房)』『Alexander N. Glazerほか著、斎藤日向ほか訳『微生物バイオテクノロジー』(1996・培風館)』『中原英臣・佐川峻著『「遺伝子」のことがわかる本――「知能、性格、容貌」から遺伝子治療、クローンまで』(1997・三笠書房)』『山口彦之著『バイオテクノロジー・ノート』(1997・裳華房)』『三浦謹一郎ほか編著、堅田利明ほか著『バイオケミストリー』(1997・昭晃堂)』『化学工業会編『生体工学』(1998・槇書店)』『ポール・ラビノウ著、渡辺政隆訳『PCRの誕生――バイオテクノロジーのエスノグラフィー』(1998・みすず書房)』『遠山益著『図説 生物の世界』(1998・裳華房)』『本庄重男・芝田進午編訳『バイオテクノロジーの危険管理――第三世界ネットワーク』(1998・技術と人間)』『太田喜元ほか著『生物工学概論――わかりやすいバイオテクノロジー』(1998・コロナ社)』『中原英臣・佐川峻著『あなたの遺伝子は汚染されている――二重らせんからの警報』(1998・早川書房)』『軽部征夫著『クローンは悪魔の科学か――食糧・医薬・生命力 人類を救うバイオの先端科学』(1998・祥伝社)』『久保幹ほか著『バイオテクノロジー――基礎原理から工業生産の実際まで』(1999・大学教育出版)』『杉本直己著『遺伝子とバイオテクノロジー』(1999・丸善)』『横田明穂編、奈良先端科学技術大学院バイオサイエンス研究科植物系全教員著『植物分子生理学入門』(1999・学会出版センター)』『高見伸治ほか著『食品微生物』(1999・建帛社)』『山本幸男・菅沼教生著『生物科学総説』(1999・理工学社)』『市川定夫著『環境学――遺伝子破壊から地球規模の環境破壊まで』(1999・藤原書店)』『魚住武司著『遺伝子工学概論』(1999・コロナ社)』『広島大学大学院分子生命機能科学専攻編『バイオテクノロジー講義』(1999・朝倉書店)』『桜井邦明・村上和雄著『未知からのコンタクト』(2000・黙出版)』『橋本直樹著『レクチャーバイオテクノロジー』(2000・培風館)』『斎藤日向監修、森明彦ほか編『バイオの扉――医薬・食品・環境などの32のトピックス』(2000・裳華房)』『相沢益男・山田秀徳編『バイオ機器分析入門』(2000・講談社)』『大森俊雄編著『環境微生物学――環境バイオテクノロジー』(2000・昭晃堂)』『一島英治著『酵素――ライフサイエンスとバイオテクノロジーの基礎』(2001・東海大学出版会)』『西村実著『テクノ図解 バイオテクノロジー――新時代のキーワードが面白いほどよくわかる!!』(2001・東洋経済新報社)』『保木本一郎著『核と遺伝子技術の法的規制――先端科学技術と法』(2001・日本評論社)』『丸山工作著『新・分子生物学入門――ここまでわかった遺伝子のはたらき』(2002・講談社)』『太田次郎編『バイオサイエンス事典』(2002・朝倉書店)』『フランシス・フクヤマ著、鈴木淑美訳『人間の終わり――バイオテクノロジーはなぜ危険か』(2002・ダイヤモンド社)』『福本英子著『人・資源化への危険な坂道――ヒトゲノム解析・クローン・ES細胞・遺伝子治療』(2002・現代書館)』『辻井弘忠ほか著『ニューバイオテクノロジー入門』(2002・培風館)』『内閣官房・内閣府編『図入り バイオテクノロジー戦略大綱――三つの戦略が切り開く「生きる」、「食べる」、「暮らす」の向上』(2003・財務省印刷局)』『中原英臣監修『よくわかる「バイオテクノロジー」最前線――遺伝子組み換え、ヒトゲノム、バイオ医療、エネルギー創造まで』(PHP文庫)』『山口勝己編『水産生物学』(1991・東京大学出版会)』『嵯峨尚恒・松永是編『マリンバイオテクノロジー――ラボマニュアル』(1991・裳華房)』『隆島史夫編『水産のバイテクとハイテク――利用実例と開発指針』(1996・成山堂書店)』『日本水産学会監修、南卓志・田中克編著『ヒラメの生物学と資源培養』(1997・恒星社厚生閣)』『隆島史夫編『次世代の水産バイオテクノロジー――東京水産大学第25回公開講座』(2000・成山堂書店)』『藤野和男著『海洋・増養殖水産生物集団遺伝学研究50年の軌跡』(2003・文芸社)』『及川鋭雄編『バイオテクノロジーと農業技術』(1985・養賢堂)』『菅原七郎編『哺乳動物の発生工学実験法』(1986・学会出版センター)』『高辻正基著『野菜工場――未来の農業システム』(1986・丸善)』『山口彦之著『植物バイオテクノロジー入門』(1987・オーム社)』『原田宏著『植物バイオテクノロジー』(1989・日本放送出版協会)』『鈴木正彦著『植物バイオの魔法』(1990・講談社)』『三位正洋著『夢の植物をつくる』(1991・裳華房)』『岡田吉美著『夢の植物を創る』(1994・東京化学同人)』『大沢勝次著『図集・植物バイテクの基礎知識』(1994・農山漁村文化協会)』『田名部雄一・和秀雄・藤巻裕蔵・米田政明著『野生動物学概論』(1995・朝倉書店)』『山川祥秀著『新しい植物をつくる――植物バイオテクノロジーの世界』(1995・オーム社)』『東条英昭著『動物をつくる遺伝子工学――バイオ動物はなぜ必要か?』(1996・講談社)』『今村奈良臣編、西尾敏彦ほか著『全集 世界の食料 世界の農村17 バイオテクノロジーの農業哲学――地域の個性を活かす』(1996・農山漁村文化協会)』『山本隆一ほか編『イネ育種マニュアル』(1996・養賢堂)』『池上正人著『植物バイオテクノロジー』(1997・理工図書)』『岡田吉美著『DNA農業』(1997・共立出版)』『福井希一ほか著『植物の遺伝と育種』(1997・朝倉書店)』『山内亮監修、大地隆温ほか著『最新家畜臨床繁殖学』(1998・朝倉書店)』『「エコロジスト」誌編集部編、安田節子ほか監訳、日本消費者連盟訳『遺伝子組み換え企業の脅威――モンサント・ファイル』(1999・緑風出版)』『大塚善樹著『なぜ遺伝子組換え作物は開発されたか――バイオテクノロジーの社会学』(1999・明石書店)』『天笠啓祐文、あべゆきえ絵『遺伝子組み替え動物』(1999・現代書館)』『並河澄ほか著『家畜飼育の基礎』(2000・農山漁村文化協会)』『入谷明著『最新発生工学総論』(2001・裳華房)』『佐々木義之編『動物遺伝育種学事典』(2001・朝倉書店)』『下村徹著『クローンの話』(2002・技報堂出版)』『長田敏行編『植物工学の基礎』(2002・東京化学同人)』『駒嶺穆著『植物が未来を拓く』(2002・共立出版)』『岩倉洋一郎ほか編『動物発生工学』(2002・朝倉書店)』『佐藤英明著『動物生殖学』(2003・朝倉書店)』『大沢勝次・久保田旺編著『植物・微生物バイテク入門』(2003・農山漁村文化協会)』『鎌田博・原田宏著『植物のバイオテクノロジー』(中公新書)』『岡田吉美著『新植物をつくりだす』(岩波ジュニア新書)』『朝日新聞科学部編『新食料革命』(1985・朝日新聞社)』『松尾幹之・鵜高重三編『バイオテクノロジーと食料革命』(1986・名古屋大学出版会)』『国際バイオテクノロジー協議会編、栗飯原景昭ほか訳『バイオテクノロジーと食品――バイオ食品の安全性確保に向けて』(1991・建帛社)』『東京大学農学部編、生源寺真一ほか著『人口と食糧』(1998・朝倉書店)』『中村靖彦著『遺伝子組み換え食品を検証する』(1999・日本放送出版協会)』『天笠啓祐著『フランケンシュタイン食品がやってきた!――遺伝子組み替え食品Q&A』(2000・風媒社)』『日本農芸化学会『遺伝子組換え食品』(2000・学会出版センター)』『三瀬勝利著『遺伝子組み換え食品の「リスク」』(2001・日本放送出版協会)』『高久史麿編『バイオテクノロジーと医療』(1987・東京大学出版会)』『河野恵編、大野尚仁ほか著『微生物薬品製造学』(1991・朝倉書店)』『中西義信編著『バイオ新薬への挑戦』(1991・読売新聞社)』『加藤延夫編『医系微生物学』(1996・朝倉書店)』『John M. Pezzutoほか著、福地坦ほか監訳『医療薬学の応用バイオテクノロジー』(1997・医薬ジャーナル社)』『大島泰郎ほか編『生命科学への誘い』(1998・東京化学同人)』『山内一也著『異種移植――21世紀の驚異の医療』(1999・河出書房新社)』『木村彰方編『医学・薬学研究者のためのバイオテクノロジー概論』(2000・医薬ジャーナル社)』『シーエムシー出版編・刊『バイオ診断薬の開発・評価と企業』(2003)』『岸本忠三監修『バイオの衝撃――ここまできたゲノム創薬&再生医療』(2003・日刊工業新聞社)』『日本化学会編、冨田房男ほか著『ニューバイオテクノロジー』(1997・大日本図書)』『中野一新編『アグリビジネス論』(1998・有斐閣)』『バイオインダストリー協会編訳『バイオテクノロジーと21世紀産業――OECD特別専門委員会からの報告』(1999・オーム社)』『岡三証券企業調査部編『バイオ・遺伝子ビジネス』(2000・東洋経済新報社)』『産業タイムス社編・刊『ゲノム創薬メーカー計画総覧』(2001)』『「週刊東洋経済」編集部編『ゲノムビジネス会社情報』(2001・東洋経済新報社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「バイオテクノロジー」の意味・わかりやすい解説

バイオテクノロジー

生物工学,生命工学とも。生物学(バイオロジー)と技術(テクノロジー)の合成語。1970年代以降急速に発展してきた遺伝子操作技術を中心とした新技術に対する名称で,従来の品種改良や発酵などはオールドバイオテクノロジーとよび,遺伝子工学などの新技術はニューバイオテクノロジーとして区別する。基本的には生物利用技術(遺伝子組換え,細胞融合,バイオリアクター,組織培養など)と生体模倣技術(バイオミメティック・ケミストリー,バイオ・エレクトロニクスなど)からなる。
→関連項目アグリビジネスアンチセンスRNA遺伝子導入動物イネゲノム解析研究海洋バイオテクノロジーカリフラワーモザイクウイルス合成酵素連鎖反応法細胞工学人工遺伝子製糖業生物災害生物多様性生物多様性条約バイオ・レメディエーションハイテク公害バクテリアリーチングヒトゲノム解析計画品種改良プロトプラスト分子進化工学ヘキスト[会社]マイクロ・セル・リアクターモノクローナル抗体レトロトランスポゾン

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイオテクノロジー」の意味・わかりやすい解説

バイオテクノロジー
biotechnology

生物ないし生命現象 (バイオ) を生産に応用する技術 (テクノロジー) 。内容から生物体利用技術,生物改良技術,生物反応利用技術,生物模倣技術などに大別される。狭義のバイオテクノロジーは,細胞レベル以下の分子生物学を基礎として発達した遺伝子工学 (遺伝工学 ) ,特に遺伝子組換えと細胞融合の技術を中核とする。これと細胞培養,酵素固定化技術が結びついて,産業として育っている。バイオテクノロジー分野の成長は,1970年代の遺伝子工学の発展と密接に関連している。この手法で生成される物質のなかには,ヒトのインターフェロンインスリン成長ホルモンなどがある。さらに遺伝子工学の技術は,数多くの遺伝的障害を操作的に修正する可能性を開いた。モノクローナル抗体を創造する技術の発展に関連する遺伝子組換え技術は,医師の診断や腫瘍学に明らかに衝撃を与えてきた。遺伝子工学のもう1つの重要な用途は,流出した原油や有毒な汚水などを生物分解できるバクテリアの生産である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「バイオテクノロジー」の解説

バイオテクノロジー

バイオロジー(生物学)とテクノロジー(技術)を組み合わせた言葉で、生命工学、生物工学とも訳される。生物そのもの、あるいは生物の構成成分の機能を利用、応用、模倣する幅広い範囲の技術。ゲノム科学の進展により、バイオテクノロジーの技術的可能性が広がっている。未知遺伝子の解明とその利用が進められるだけでなく、自然界には存在しないたんぱく質や酵素の合成や、新機能を付与した生物の創製なども可能になっている。バイオテクノロジーの基盤技術は、バイオインフォマティクス(生物情報科学)、組み換えDNA技術、たんぱく質工学、糖鎖工学など。人間の生命・健康・医療などにかかわる分野はライフサイエンスと呼ばれることが多い。

(川口啓明 科学ジャーナリスト / 菊地昌子 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

化学辞典 第2版 「バイオテクノロジー」の解説

バイオテクノロジー
バイオテクノロジー
biotechnology

生物工学ともいう.バイオロジー(生物学)とテクノロジー(技術)からつくられた合成語で,生物がもつ機能をそのままあるいはそれをシミュレートしてより高度に活用しようとする技術をいう.アルコールの生産など微生物利用による発酵から,酵素利用技術,細胞融合技術,遺伝子組換え技術などによる動物,植物細胞の培養技術,さらにクローン技術まで含まれ,医薬品の開発から各種農産物の品種改良,畜産,医療技術にまで広く応用されている.また,微生物を用いた環境浄化,環境修復システムへの利用も進められている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

産学連携キーワード辞典 「バイオテクノロジー」の解説

バイオテクノロジー

「バイオテクノロジー」とは、「生命工学」「生命技術」とも言われ、生物及びその生物の持つ機能を解明し、その働きを我々の生活に役立てようとする技術のことである。近年、「バイオテクノロジー」は、保健医療、環境保全、農林水産業、化学工業などに利用され、遺伝子を人工的に操作する技術として注目を浴びており、研究も盛んに行われている。

出典 (株)アヴィス産学連携キーワード辞典について 情報

栄養・生化学辞典 「バイオテクノロジー」の解説

バイオテクノロジー

 生物工学ともいう.生物の機能を利用して物質の生産,廃棄物の処理などをする技術.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のバイオテクノロジーの言及

【細菌】より

…乳酸菌やプロピオン酸菌は食品の製造に役だち,有機酸や抗生物質の工業的な生産にも細菌が用いられている。最近では,細菌を広範な工業に用いようとする研究・開発が盛んに行われていて,この研究分野はバイオテクノロジー(生物工学)と呼ばれている。【川口 啓明】
【家畜の細菌病】
 微生物が動物の体内へ侵入し,ある部位に定着化し増殖するまでの過程を感染と呼び,さらに動物が生理的,形態学的に異常な状態を示せば,これを発病という。…

【生物工学】より

…一方で生物は環境が変化しても生体の内部状態を一定に保つ精妙な調節機能をも備えていて,このような機構は自動制御工学の分野で研究・利用されている。近年では遺伝子操作技術を医療や農業生産の分野に応用する遺伝子工学が大きな関心をよびつつあるが,このような生物の機能そのものを工学的に利用する領域はバイオテクノロジーbiotechnologyと呼んで区別されることが多い。【宝谷 紘一】。…

【石油化学工業】より

…さらにアメリカでは収益の悪化した量産型化学製品を生産するプラントの売却が活発に進められるとともに,化学企業はスペシャリティ化に向け大きく方向を変えつつある。スペシャリティ化の内容は企業ごとにやや違いはあるものの,バイオテクノロジーを利用した新しい医薬品の開発,高機能プラスチック,高機能合成繊維の開発が中心となっている。 アメリカほどではないが,ヨーロッパでも第1次石油危機後積極的な設備投資が進められたため,80年代前半には大きな過剰能力に苦しめられることとなった。…

※「バイオテクノロジー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android