白山(読み)ハクサン

デジタル大辞泉 「白山」の意味・読み・例文・類語

はく‐さん【白山】

岐阜・石川両県にまたがる火山。最高峰は御前峰ごぜんみねの標高2702メートル。古くから信仰の対象とされ、富士山立山たてやまとともに日本三名山の一。しらやま。
石川県南東部にある市。白山国立公園の山岳部から日本海まで、多様な地形が広がる。平成17年(2005)2月に松任まっとう市、美川町、鶴来つるぎ町、河内村、吉野谷村、鳥越村、尾口村、白峰村が合併して成立。人口11.0万(2010)。

しら‐やま【白山】

白山はくさん」の古称。[歌枕]
「よそにのみ恋ひやわたらむ―の雪みるべくもあらぬわが身は」〈古今・離別〉

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精選版 日本国語大辞典 「白山」の意味・読み・例文・類語

はく‐さん【白山】

  1. [ 一 ] 石川・岐阜両県境にある火山。トロイデ。両白山地にあり、白山火山帯の主峰。白山神社・白山比咩(しらやまひめ)神社奥院があり、古くから信仰の山として知られる。富士山、立山とともに日本三名山の一つ。標高二七〇二メートル。しらやま。
  2. [ 二 ] 石川県南部の市。手取川上・中流域および下流の扇状地の大半を占める。北部はJR北陸本線が通じ、金沢市のベッドタウン化がすすむ。平成一七年(二〇〇五)、松任市と石川郡の七町村が合併して成立。
  3. [ 三 ] ( 白山神社があるところから呼ばれた ) 東京都文京区中央部の地名。江戸時代、館林城主松平氏の下屋敷が置かれ、白山御殿と呼ばれた。のち一部に幕府の麻布御薬園が移され、明治八年(一八七五)に小石川植物園となる。
  4. [ 四 ]しらやまひめじんじゃ(白山比咩神社)
    1. [初出の実例]「其勢一千余騎、鵜川におしよせて、坊舎一宇も残さず焼はらふ。鵜河と云は白山(ハクサン)の末寺なり」(出典:高野本平家(13C前)一)

しら‐やま【白山】

  1. [ 一 ] 石川・岐阜県境にある白山(はくさん)の古称。
    1. [初出の実例]「きえはつる時しなければこしぢなるしら山のなは雪にぞありける〈凡河内躬恒〉」(出典:古今和歌集(905‐914)羇旅・四一四)
  2. [ 二 ]しらやまひめじんじゃ(白山比咩神社)」の略。

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日本歴史地名大系 「白山」の解説

白山
はくさん

最高峰である御前ごぜん(二七〇二・二メートル)、および大汝おおなんじ(二六八四メートル)けんヶ峰(二六七七メートル)の三峰からなる主頂部と、南方のべつ(二三九九・四メートル、小白山ともいう)さんノ峰(二一二八メートル)、西方の白山釈迦はくさんしやか(二〇五三・二メートル)などを合せた総称。主峰三峰を白山三峰、これに別山・三ノ峰を加えて白山五峰というよび方もある。山頂は県南東部、岐阜県境に位置し、山域は白峰しらみね村・尾口おくち村、岐阜県白川しらかわ村・荘川しようかわ村・白鳥しろとり町、福井県大野市・勝山市などにまたがる。白山山系は南方に続く能郷白のうごはく(一六一七・三メートル、岐阜・福井県境)山系とともに両白りようはく山地を構成する。手取川水系・しよう川水系の分水嶺であり、山系南部は九頭竜くずりゆう川や長良ながら川の水源となっている。山頂付近では冬季の積雪が一〇メートルにも達し、残雪も多く、古称「しらやま」ともども四季を通じて山頂が白く遠望されることが山名の由来である(「色葉字類抄」など)。古くから信仰の対象となり、とくに手取川流域の加賀、九頭竜川流域の越前、長良川流域の美濃に生れた信仰は仏教や道教の影響を受けながら山岳信仰として展開し、平安時代の初期までには各国(各流域)ごとの信仰拠点として加賀馬場・越前馬場・美濃馬場のいわゆる三馬場が形成された(白山之記)。加賀は白山本宮白山はくさん(現鶴来町)、越前は白山中宮平泉へいせん(現勝山市)、美濃は白山本地中宮長滝ちようりゆう(現白鳥町)が各馬場の中核となり、それぞれから白山の頂上(禅頂・禅定ともいう)を目指す登拝路、白山本道(白山禅定道ともいう)が開かれた。白山信仰の隆盛に伴って当山は富士山・たて山とともに日本三霊山・三名山の一つに数えられている。

〔白山の自然〕

白山は最終氷期(ウルム氷期)の氷河活動による浸食作用を明確に確認できるわが国の南西限にあたる。このため当山より西ではみられなくなる、あるいはきわめて少なくなるという動・植物も多種あり、生物分布上からも重要な山である。山麓にはブナ林、中腹の亜高山帯にはダケカンバオオシラビソの林が広がり、山頂部の緩斜面ではハイマツやハクサンコザクラハクサンボウフウハクサンフウロなどの高山植物がみられる。また亜高山帯のダケカンバ林を中心に、ツキノワグマニホンカモシカ(特別天然記念物)ニホンザルなどの哺乳類やイヌワシなどの野鳥が多く生息する。昭和三七年(一九六二)石川・福井・岐阜・富山の四県にまたがる山域は白山国立公園に指定された。


白山
はくさん

白山(大山)火山帯東縁に位置し、大野郡白川しらかわ村・荘川しようかわ村、郡上ぐじよう白鳥しろとり町、福井県大野市、石川県石川郡白峰しらみね村・尾口おくち村にまたがる休火山。しよう川水系と手取てどり川水系の分水嶺をなし、白山から能郷白のうごはく(一六一七・三メートル)まで続く山系は両白りようはく山地と呼称される。頂上部は南から最高峰の御前ごぜん(二七〇二・二メートル)けんヶ峰(二六六〇メートル)大汝おおなんじ(二六八四メートル)と連立するが、古くから白山三峰とよばれるのは御前峰(本宮)と大汝峰(二宮)、白山の南に続くべつ(二三九九・四メートル、三宮)の三峰。白山は単一の成層火山ではなく、数十万年前に現白山の北部に溶岩が残る加賀室かがむろ火山の火山活動があり、長い浸食期を挟んで約一〇万年前頃古白山火山の活動があった。大汝峰はこの時期に形成され、さらに浸食期のあと約一万―二万年前新白山火山活動による成層火山帯が形成された。その後山頂部東側の大崩壊があり、西側の残峰が御前峰で、剣ヶ峰はその後の中央火口丘と考えられている。このときの溶岩流の末端部にかかる滝が白水しらみず滝である。有史時代の噴火は慶雲三年(七〇六)から万治二年(一六五九)まで一〇回余あった。一六世紀代に六回の記録があるが、みどりヶ池をはじめ一五の火口池は有史時代の噴火口と考えられている。

白山火山の基盤は北半が濃飛流紋岩類で、南半は中生代ジュラ紀から白亜紀にかけての手取層群が主体。基盤岩は標高二〇〇〇メートルより上までみられ、溶岩はあまり厚くない。別山は火山でなく手取層群の山で、地層の縞模様により四海波しかいなみ岳ともよばれる。白山は白山国立公園の中心をなし、生物分布上からも重要な山である。山麓はブナ林、中腹はダケカンバ、オオシラビソの林、山頂緩斜面はハイマツやハクサンボウフウなどの高山植物がある。


白山
はくさん

加茂市との境にあり、標高一〇一二・四メートル。北は神戸かんど山、南西は宝蔵ほうぞう山に連なる。この山を源流とする仙見せんみ川・能代のうだい川が北流し、谷を刻んだ奥地は峡谷美で知られる。頂上付近にあるさば池には、池水をかき回すと雷雨になるという伝説がある。中腹と頂上にはかつて薬師堂があったと伝え、山名も古くは薬師嶽あるいはおお峰といった。

寛延三年(一七五〇)の村松領各宗由緒帳(村松町役場蔵)慈光じこう寺の項に「奥之院薬師如来、銅像、弘法大師作、是当寺之地主仏ニ、上古開闢より此山ニ勧請致来り候」とある。

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改訂新版 世界大百科事典 「白山」の意味・わかりやすい解説

白山[市] (はくさん)

石川県南部の市。2005年2月松任(まつとう)市と鶴来(つるぎ)町,美川(みかわ)町および尾口(おぐち),河内(かわち),白峰(しらみね),鳥越(とりごえ),吉野谷(よしのだに)の5村が合体して成立した。人口11万0459(2010)。

白山市南部の旧村,旧石川郡所属。人口731(2000)。手取川上流の白山北麓に位置する岐阜県境の山村で,西部を手取川が北流し,北境を支流の尾添川が流れる。耕地に乏しく,ワサビ,ナメコ,山菜などを特産し,イワナ,ニジマスなどの淡水魚の養殖も盛ん。南東部は白山国立公園に含まれ,夏は白山登山口としてにぎわう。岩間温泉,白山一里野温泉があり,冬はスキー客が多い。岩間の噴泉塔群は特別天然記念物,東二口文弥人形は重要無形民俗文化財に指定されている。大規模なロックフィルダムの手取川ダムがある。

白山市中部の旧村,旧石川郡所属。人口1205(2000)。北西境を手取川,ほぼ中央を手取川支流の直海谷(のうみだに)川が流れる。河川沿いにわずかに低地があるほかは大部分が両白山地に属する山地である。古くから白山との関係が深く,平安末期には白山宮領河内荘に属し,南北朝期以降は地頭の結城氏が館を構えて支配した。江戸時代は加賀藩領で,河内組に属した。人口は県下最小であった。農林業を主産業とし,ワサビ,エノキダケ,山菜の出荷が行われる。直海谷川に手取川総合開発計画による手取川第2発電所(1979)と第3ダム(1978)が建設された。

白山市南端の旧村,旧石川郡所属。人口1186(2000)。岐阜・福井両県に接する両白山地の山村で,白山を源とする手取川の大小20余の支流が合流して本流の手取川ダム湖に注ぐ。中心集落の白峰は江戸時代は天領で,当時の民家様式を伝える小倉家住宅(重要文化財)が残る。かつては山腹に出作小屋を作って雑穀を栽培する焼畑農業が営まれたが,現在は消滅した。旧尾田家の出作小屋と生活用具は重要有形民俗文化財に指定されている。ワサビ,ナメコ,山菜などの産地である。古くから養蚕も行われ牛首紬の特産がある。南東部は白山国立公園に含まれ,白山登山の基地である白山温泉(弱食塩泉,48℃)や白峰高原スキー場がある。

白山市北部の旧町,旧石川郡所属。人口2万1477(2000)。手取川東岸に位置し,北西部には手取川扇状地が開け,東部は両白山地の山麓が占める。中心集落の鶴来は扇頂部に発達した谷口集落で,白山の本宮四社の一つ金剣宮(きんけんぐう)の門前町として発展,中世から市が立ち,酒造とタバコ生産が盛んであった。三宮は白山比咩(しらやまひめ)神社の門前町として栄えた。繊維,機械,製材,醸造業が主産業で,酒米,種もみの産地でもある。金沢市との境にある獅子吼(ししく)高原は眺望がよく,キャンプ場,スキー場がある。北陸鉄道が通じ,金沢市への通勤者も多い。

白山市西部の旧村,旧石川郡所属。人口3154(2000)。手取川中流西岸の山村で,中央を支流の大日川が北流する。河川沿いには比較的広い低地が開け,古くからの米作地帯であるが,近年は兼業化が進んでいる。城山には加賀一向一揆最後の砦となった鳥越城跡(史)がある。東部の手取川峡谷は獅子吼手取県立自然公園に含まれ,手取温泉やスキー場がある。大日川上流には大日川ダム(1967年竣工)がある。
執筆者:

白山市北端の旧市。1970年市制。人口6万5370(2000)。金沢平野を流れる手取川扇状地の扇央部に位置し,西は日本海に臨む。平安時代初期に成立した東大寺領横江荘のあった地で,市内横江町にはその荘家跡(史)が確認されている。のち,一帯には在地領主林氏が勢力を扶植したが,その庶流で松任城に拠った松任氏は室町幕府奉公衆として名を連ねている。1488年(長享2)加賀一向一揆は守護富樫氏を滅ぼしたが,一揆の組織のうちに松任組があり,当時の松任城主鏑木氏は本誓寺ともかかわりが深く,一揆の旗本の一人であった。織田信長の加賀平定ののち,松任城には前田利長らが居城した。江戸時代は加賀藩領で,松任は藩内諸街道の集まる要地であり,ナタネ油の製造や松任紬(つむぎ),松任小倉とよばれた織物,染色業が盛んであった。早場米地帯であるが,機械,繊維,食料品,窯業などを中心とし,横江町に鉄工団地が造成されるなど,金沢市に近いため工場や住宅団地の造成も盛ん。市域中央部をJR北陸本線,国道8号線が並走し,海岸沿いに北陸自動車道が通じ,美川インターチェンジが近い。なお俳人千代女の出身地で,中町の聖興(しようこう)寺には千代尼塚や千代尼遺芳館がある。
執筆者:

白山市北西端の旧町,旧石川郡所属。人口1万2454(2000)。金沢平野を貫流する手取川の河口部に位置し,日本海岸の砂丘には松の防砂林が続く。古くは本吉といい,江戸時代には北前船の寄港する日本海の要港であり,とくに文化・文政期(1804-30)には廻船問屋が軒を並べ,加賀藩最大の港町として隆盛をきわめた。1898年北陸本線が通じて港の機能は失われたが,代わって豊富な地下水を利用する染色業が興った。江戸時代以来の仏壇,刺繡は特産物として有名である。海岸沿いを北陸自動車道が通じ,美川インターチェンジの開設とともに染色,繊維,機械関連の企業が進出,工業団地も形成されている。町域東部は早場米の水田地帯である。小舞子海水浴場がある。

白山市中部南寄りの旧村,旧石川郡所属。人口1400(2000)。西境を手取川が流れ,これに沿ってわずかな低地が開けるほかは,白山山系の急峻な山地が村域の大部分を占める。東は富山・岐阜両県に接する。古代から中世にかけて味知(智)(みち)郷と称され,白山登拝路の拠点であった。可耕地に乏しく,近世以来山稼ぎへの依存度が強かったが,近年ではシイタケやナメコなどの増産も図られている。大正期に入って手取川の豊富な水資源を利用した発電所建設が進められ,1997年現在,村内に五つの発電所がある。1971年には過疎対策の一環としてニット工場を誘致し,77年には白山スーパー林道(旧尾口村~岐阜県白川村)が開通するなど,隔絶山村から変貌している。東部は白山国立公園に含まれ,中宮温泉,蛇谷(じやだに)の野猿公園,白山自然保護センターがある。西部の手取渓谷は獅子吼手取県立自然公園の一部で,下吉野には御仏供(おぼけ)杉(天)がある。
執筆者:


白山 (はくさん)

石川,岐阜,福井の3県にまたがる両白山地にあり,第四紀後半に活動した火山。山名は,最高峰の御前峰(ごぜんみね)(2702m)のほか大汝(おおなんじ)峰(2684m),剣ヶ峰(2677m)の3峰に分かれる主頂部と,南方の別山(べつさん)(2399m)および三ノ峰(2128m),西方の白山釈迦岳(2053m)などを合わせた総称である。山頂近くでは冬季に積雪10mに達し,残雪が多いため白山の称が生まれた。

 山体は,手取層群と濃飛流紋岩を主とする基盤上に噴出した安山岩質の溶岩流と火砕流堆積物からなるが,標高のわりに火山体は非常に薄く,厚さが最大400m,体積も16km3にすぎない。噴出時期や位置,地形の違いから,古白山と新白山に分けられる。古白山はかつて標高3000~3500mの美しい円錐形の山体をもっていたと思われるが,中ノ川の浸食や爆発活動で破壊され,現在では北西部の清浄ヶ原や東部のうぐいす平に残る火山地形にその面影をとどめるのみである。新白山は古白山の南斜面に生じ,新鮮な溶岩流地形や千蛇(せんじや)ヶ池,翠(みどり)ヶ池など15の火口群を残している。御前峰や剣ヶ峰は,古白山と新白山の間の凹地を火口とする火山の火口壁の一部である。白山は706年(慶雲3)から1659年(万治2)までの間に9回の噴火が記録されているが,ここ300年間は火山活動が休止している。1554年(天文23)の噴火時には熱雲が発生し,手取川下流部にまで被害を与えた。冬季は気温が-20℃以下になり,夏季でも24℃を超えない寒冷な気候のため,山頂付近の緩斜面上には階状土や岩塊流などの周氷河地形が形成されており,多くは現在も動いている。山腹西側の急斜面では地すべりや崩壊が激しく,しばしば土石流が発生するため治山工事が盛んに行われている。現在,山頂火口周辺の温泉噴気活動はまったくないが,山麓には中宮,岩間,白山,鳩ヶ湯など多くの温泉がある。

 白山は生物分布上からも重要な山で,山麓はブナ林,中腹の亜高山帯にはダケカンバ,オオシラビソの林が広がり,山頂部の緩斜面ではハイマツやハクサンコザクラ,ハクサンボウフウなどの高山植物が見られる。また亜高山帯のダケカンバ林を中心に,ツキノワグマ,ニホンカモシカ,ニホンザルなどの哺乳類やイヌワシなどの野鳥が多く生息する。
執筆者:

白山信仰は〈しらやましんこう〉ともいう。最初〈しらやま〉とは雪をいただいて白くなった山を指す普通名詞であったのが,のちに北陸の白山のみを呼ぶ固有名詞になったのであろう。白山を水源地とする加賀の手取川,越前の九頭竜川,美濃の長良川の三つの大河の流域に,白き神々の座を農耕神と仰ぐ信仰が生まれた。おそくとも9世紀ごろまでに,それぞれの大河流域の白山信仰の中心として加賀馬場(ばんば),越前馬場,美濃馬場が形成された(《白山之記》)。この三馬場は,いずれも白山本道(ほんどう)(禅定道(ぜんじようどう)ともいう)と称した白山を登拝する別々の道の起点である。加賀馬場の中心は白山本宮で,神仏習合により平安中期以後は白山寺が実権を握る。越前馬場は白山中宮で平泉寺が中心であり,美濃馬場は白山本地中宮といい,中心は長滝(ちようりゆう)寺である。718年(養老2)泰澄(たいちよう)がはじめて登拝して,御前峰の神は白山妙理大菩薩と号し,本地が十一面観音,大汝峰の神は大己貴(おおなむち)で本地は阿弥陀如来,別山は小白山別山大行事で聖観音が本地ということを明らかにしたとする伝承がある。この本地垂迹説による伝承が白山信仰の核心にすえられた平安中期以後,三馬場はすべて泰澄によって開かれたという開基縁起に一元化された。白山の神は,三馬場とも白山三所権現を基本とする体系になるのである。この泰澄の権威による白山嶺上の管理権獲得に代表される三馬場間の激しい本家争いが,以後明治初年まで繰り返された。三馬場とも修験の霊場で山伏の往来は盛んであったが,御師(おし)の活動は美濃馬場以外は著しくない。明治の神仏分離で三峰に安置の仏像はすべて下ろされ,白山寺は白山比咩(しらやまひめ)神社,平泉寺は白山神社(旧県社。福井県勝山市),長滝寺も白山神社(旧県社。岐阜県郡上市の旧白鳥町)になって現在に至っている。
白山比咩神社
執筆者:


白山(三重) (はくさん)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白山」の意味・わかりやすい解説

白山(市)
はくさん

石川県南部にある市。2005年(平成17)、松任市(まっとうし)、石川郡美川町(みかわまち)、鶴来町(つるぎまち)、河内村(かわちむら)、吉野谷村(よしのだにむら)、鳥越村(とりごえむら)、尾口村(おぐちむら)、白峰村(しらみねむら)が合併して成立。市域は白山の北西麓(ろく)、手取川(てどりがわ)の流域に展開、同川の谷口(鶴来地区)から河口にかけて扇状地(金沢平野)が開ける。鶴来地区以南は大部分が山地。中心街区は鶴来以北で、平野部をJR北陸本線、国道8号(北陸街道の後身)、加賀産業開発道路(県道22号)、北陸自動車道が通じ、白山、美川などのインターチェンジがある。山間部へは手取川沿いに国道157号が走り、福井県に抜ける。同道の整備で、冬は交通途絶地であった深雪山村への通行が可能となった。岐阜県に抜ける白山白川郷ホワイトロードも通じる。

 横江町(よこえまち)には818年(弘仁9)に奈良東大寺に施入(せにゅう)された横江荘の荘家跡(国指定史跡)があり、河内には白山の開祖、泰澄(たいちょう)が止宿したと伝える宿ノ岩(しゅくのいわ)遺跡がある。谷口集落の鶴来は白山信仰の参拝路の一つとして古代より開け、中世以降は加賀一宮(いちのみや)白山比咩(しらやまひめ)神社、金劔宮(きんけんぐう)などの門前町としてとして発展。現在も金沢市と鶴来駅とを北陸鉄道石川線が結ぶ。戦国期、松任城は鏑木氏をはじめ、一向一揆の有力指導者が拠ったが、1580年(天正8)に佐久間盛政・柴田勝家らによって陥落した。その後、前田利長(のちの初代金沢藩主)らが在城したが、1614年(慶長19)頃廃城になったという。鳥越城(城跡は国指定史跡)は、一向一揆の最後の砦となった。近世、灌漑用水の発達により扇状地の開発が進んで水田が開け、松任町は北陸街道の宿場町として商工業が発展した。手取川河口の美川地区は古代からの港町で、近世は北前船(きたまえぶね)が寄港する本吉湊(もとよしみなと)が栄えた。近年、米作農業のほか、プラスチック、機械、織物工業、硬質陶器などの工業が発達。一方で金沢市のベッドタウンとして住宅地化も進んでいる。岐阜県境一帯は白山国立公園域で、白山への登山客で賑わい、鳥越大日スポーツランド、白山温泉、中宮温泉、美川温泉、手取温泉などへの観光客も多い。面積754.93平方キロメートル、人口11万0408(2020)。

[編集部]



白山(石川・岐阜県境)
はくさん

石川・岐阜県境にまたがり、両白山地(りょうはくさんち)にある角閃石(かくせんせき)安山岩、輝石安山岩の火山。白山火山帯の盟主で、古来、富士山、立山(たてやま)とともに日本三名山の一つとして名高く、信仰登山の霊山として知られる。頂部は最高峰の御前峰(ごぜんがみね)(2702メートル)と大汝(おおなんじ)峰(2684メートル)、剣(けん)ヶ峰(2677メートル)の3峰に分かれ、南方の別山(べっさん)、三ノ峰を加え白山五峰と称される。さらに西方の白山釈迦(しゃか)岳なども含めて白山と総称する。中生代ジュラ紀~白亜紀の手取(てどり)層群、濃飛流紋岩を主とする基盤上に噴出した溶岩流や火砕流堆積(たいせき)物などからなるが、火山体は標高約2300メートル以上で、ごく薄く厚さ最大約400メートル、体積約16立方キロメートルと見積もられる。御前峰と大汝峰は溶岩円頂丘、剣ヶ峰は円錐(えんすい)火山。頂部に亜寒帯湖の千蛇(せんじゃ)ヶ池などの15の火口群や、弥陀(みだ)ヶ原の溶岩台地がある。853年(仁寿3)から1579年(天正7)までに9回の噴火記録があり火口湖群付近で発生したらしいが、火砕流や火山泥流で被害を出したこともある。現在、噴気孔はないが、山麓(さんろく)には温泉が多く、岩間の噴泉塔群(いわまのふんせんとうぐん)は特別天然記念物に指定されている。高山植物、野鳥その他の動物も多く、生物分布上も重要な山で、白山国立公園の主要部をなす。

 雪深い白山は古来「しらやま」といわれ、詩歌に詠まれた。717年(養老1)に泰澄(たいちょう)大師が初登頂し、加賀、越前(えちぜん)、美濃(みの)から参拝道が開かれた。白山神社の総本社白山比咩(しらやまひめ)神社(石川県白山市)の奥宮が頂上にある。

 登頂路は石川、岐阜、福井の各県側からあるが、石川県側の市ノ瀬(白山市白峰)からのコースが一般向きである。

[諏訪 彰]



白山(三重県)
はくさん

三重県中部、一志郡(いちしぐん)にあった旧町名(白山町(ちょう))。現在は津市の中央西部を占める一地区。1955年(昭和30)家城(いえき)町と川口、大三(おおみつ)、倭(やまと)、八ツ山の4村が合併して成立。2006年(平成18)久居(ひさい)市などとともに津市に合併。名称は1955年に合併の旧5町村とも白山神社を氏神として祀(まつ)ることにちなむ。西端は布引山地(ぬのびきさんち)で、南東に雲出川(くもずがわ)の広い河谷平野が開け、中心集落の家城があるが、地域の80%は山林。JR名松線(めいしょうせん)、近畿日本鉄道大阪線、国道165号が通る。一志米として知られる米作のほか、キャベツなどの野菜、シイタケ、木材が主産物。雲出川中流は家城ラインと称される渓流で、室生赤目青山国定公園(むろうあかめあおやまこくていこうえん)に含まれる。青山高原とともに行楽地。青山高原には航空自衛隊基地がある。成願寺(じょうがんじ)の阿弥陀如来倚像(あみだにょらいいぞう)と絹本著色仏涅槃(ねはん)図、常福寺の千手観音立像は国の重要文化財。

[伊藤達雄]



白山(中国)
はくさん / パイシャン

中国、吉林(きつりん)省南部にある地級市。鴨緑江(おうりょくこう)の支流渾江(こんこう)の沿岸に位置する。渾江など2市轄区、2県、1自治県を管轄し、1県級市の管轄代行を行う(2016年時点)。常住人口129万6575(2010)。市政府所在地は渾江区。清(しん)末に臨江(りんこう)県が置かれ、1960年渾江市と改められた。1994年白山市と改称。鉱物資源が豊富で、八道江(はちどうこう)、石人(せきじん)、咋子(さくし)などの炭鉱や大栗子(だいりつし)、板石溝(ばんせきこう)などの鉄山があり、鴨大線(鴨園(おうえん)―大栗子)、渾湾線(白山―白河)、梅集線(梅河口(ばいかこう)―集安(しゅうあん))の各鉄道により通化(つうか)市の鉄鋼コンビナートに輸送される。ほかに木材工業も盛んである。

[浅井辰郎・編集部 2017年7月19日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白山」の意味・わかりやすい解説

白山
はくさん

石川県岐阜県の県境にそびえる火山活火山で,常時観測火山両白山地の中心をなす。約 2000mの中生代の基盤上に御前峰(2702m),大汝峰(2684m),剣ヶ峰(2677m)が噴出し,白山はその総称。南方の別山,三ノ峰を加え白山五峰と称されることもある。山頂部に千蛇ヶ池,翠ヶ池などの火口湖があり,南に溶岩によって形成された弥陀ヶ原がある。周囲には石川県,福井県,岐阜県の 3県をまたぐ大日ヶ岳経ヶ岳などの古い火山と,同時代の大日山,戸室山などがあり,これら白山火山系の火山形成の最後に白山が誕生したとされている。奈良時代の僧泰澄が開山したと伝えられ,富士山立山とともに山岳霊場としても知られ,加賀,越前,美濃から参詣道が開かれて参拝者を集めてきた。「越の白山(しらやま)」として詩歌にも登場する。明治期から白山比咩神社の社領となり,山頂に奥宮がある。山腹には中生代の植物化石が豊富でケイ化木群が見られ,「手取川流域の珪化木産地」として国の天然記念物に指定されている。温泉が多く,手取川支流の尾添川の上流に国の特別天然記念物「岩間の噴泉塔群」がある。ツキノワグマニホンカモシカニホンザルイヌワシライチョウなどが生息し,ブナの天然林,クロユリの群落やハクサンの名を冠する多種の高山植物が見られる。白山国立公園に属する。

白山
はくさん

三重県中部,津市中部にある旧町域。布引山地南東麓にある。 1955年家城町と川口村,大三村,倭村,八ツ山村の4村が合体して白山町が成立。 2006年津市,久居市,河芸町,芸濃町,美里村,安濃町,香良洲町,一志町,美杉村の2市5町2村と合体,津市となった。地名は氏神の白山神社にちなむ。大部分は山地だが,雲出川中流域の平地は一志米と呼ばれる酒米の産地。肉牛飼育も行なわれる。中心地区の家城 (いえき) は雲出川上流の渓谷,家城ラインへの入口。白山比 咩神社 (しろやまひめじんじゃ) ,成願寺 (国の重要文化財の阿弥陀如来倚像などを所蔵) ,常福寺 (国の重要文化財の木造千手観音立像を所蔵) などがある。東部にはゴルフ場が多く,北西部は青山高原で別荘地や航空自衛隊ナイキ基地などがあり,一帯は室生赤目青山国定公園に属する。

白山
はくさん

東京都文京区中部の文教・住宅地区。山手台地に属する白山台を占め,江戸時代は武家屋敷地江戸幕府の薬草園,小石川薬園跡は小石川植物園となり,広大な敷地に数千種に及ぶ植物が集められている。ほかに東洋大学や,地名の由来となった白山神社がある。都営地下鉄三田線白山駅がある。

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百科事典マイペディア 「白山」の意味・わかりやすい解説

白山【はくさん】

石川県南端,岐阜県との境にある活火山。両白山地の上に噴出した溶岩円頂丘で,大汝峰(2684m),剣ヶ峰(2677m),御前峰(最高峰,2702m)からなり,南に別山(2399m)が続く。地質は手取層群を基盤とする安山岩。西斜面は緩傾斜で,登山口も石川県側に多い。古来,山岳信仰の対象とされ,9世紀ごろまでには白山信仰の三馬場が形成され,のち本地垂迹説による伝承が中心となり,泰澄による開山が強調された。白山国立公園に属し,日本百名山にも選ばれている。岐阜県側山麓の地獄谷などでは現在でも噴気が上がり,気象庁が常時観測している。
→関連項目石川[県]修験道白川[村]白峰[村]白山比【め】神社長滝寺手取川

白山[町]【はくさん】

三重県中部,一志(いちし)郡の旧町。布引山地東麓,雲出(くもず)川の中流域を占め,木材,良質の酒米(一志米)を産する。雲出川上流の家城(いえき)付近は渓谷美で有名。名松線,近鉄大阪線が通じ,青山峠がある。2006年1月久居市,安芸郡河芸町,芸濃町,安濃町,美里村,一志郡一志町,香良洲町,美杉村と市へ編入。111.86km2。1万3484人(2003)。

白山[市]【はくさん】

石川県中南部の市。市内を手取川が流れる。南部の白山周辺は,白山国立公園に指定されている。2005年2月松任市,石川郡美川町,鶴来町,河内村,吉野谷村,鳥越村,尾口村,白峰村が合併し市制。JR北陸本線,北陸鉄道,北陸自動車道,国道8号線,157号線,360号線が通じる。754.93km2。11万459人(2010)。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「白山」の解説

白山
はくさん

古くは「しらやま」とも。石川県白山市と福井県大野市・勝山市,岐阜県大野郡・郡上(ぐじょう)市にまたがる火山帯。最高峰の御前(ごぜん)峰(標高2702m)・大汝(おおなんじ)峰(2684m)・剣ケ峰(2677m)の3峰(白山三峰)と,南方の別山(べっさん)(2399m)・三ノ峰(2128m)などからなり,白山はその総称。石川県の手取川,福井県の九頭竜(くずりゅう)川,岐阜県の長良川の水源で,富士山・立山とともに日本三霊山の一つとして信仰されてきた。

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事典 日本の地域遺産 「白山」の解説

白山

(石川県;富山県;岐阜県;福井県)
美しき日本―いちどは訪れたい日本の観光遺産」指定の地域遺産。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「白山」の解説

白山
(通称)
しらやま

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
傾城白山禅定
初演
宝永1.1(京・万太夫座)

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事典・日本の観光資源 「白山」の解説

白山

(香川県木田郡三木町)
香川のみどり100選」指定の観光名所。

白山

(石川県・福井県・岐阜県)
日本百名山」指定の観光名所。

白山

(石川県・岐阜県)
日本三名山」指定の観光名所。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「白山」の解説

白山(はくさん)

ビーラー・ホラ

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世界大百科事典(旧版)内の白山の言及

【白峰[村]】より

…人口1249(1995)。岐阜・福井両県に接する両白山地の山村で,白山を源とする手取川の大小20余の支流が合流して本流の手取川ダム湖に注ぐ。中心集落の白峰は江戸時代は天領で,当時の民家様式を伝える小倉家住宅(重要文化財)が残る。…

【権現】より

…院政期,上皇はじめ公家貴族の参詣で脚光をあびた熊野は早玉宮・結宮を合して両所権現,家津御子を入れて熊野三所権現と称し,眷属神である五所王子・四所宮を合して十二所権現とも呼んだ。加賀白山では奈良朝初め泰澄により霊場が開かれ,その主神を白山妙理権現と称し,伊豆箱根では同じころ僧満願が僧形・俗形・女形の神体を感得して三所権現と称し社にまつり走湯権現ともいわれ,日光山では勝道が平安朝に滝尾権現を感得し,日吉山王でも大宮・二宮・八王子・客人・十禅師・三宮・大行事等多数の祭神に一々権現号を付し,醍醐寺の鎮守清滝明神は密教の善女竜王にほかならないが,権現の名称で親しまれていた。 以上に見るように,総体に修験者が信仰する山岳中心の霊場には権現号が多く,そこにはひときわ祭神の強力な霊験機能を誇示しようとする意識が働き,律令制の下で《延喜式》に規定された名神から来たと思われる明神の号への対抗が考えられるが,いずれの号をも称する祭神は多かった。…

【泰澄】より

…越(こし)の大徳,神融禅師,泰澄和尚とも号する。飛鉢の術を使う能登島出身の臥(ふせり)行者と出羽の船頭であった浄定(きよさだ)行者を弟子とし,霊夢の導きで717年(養老1)に白山に登拝して初めて白山三峰の神を明らかにしたとされる,越前の越知山(おちさん)(現,福井県朝日町)の修行者である。伝説上の人物であるが,本地垂迹説にもとづく事績を詳記する《泰澄和尚伝記》がすでに10世紀に成立しているので,かつては奈良時代に実在していた人物で伝記どおりの経歴を事実とする考えが強かった。…

※「白山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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