イネ(稲)(読み)イネ(英語表記)Oryza sativa

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

イネ(稲)
イネ
Oryza sativa

イネ科一年草。日本をはじめアジア諸国で広く栽培されている穀物で,全世界の栽培面積はムギ類に次いで第2位といわれ,また世界総人口の半分はを主食にしている。原産地については諸説があり正確には不明だが,インドまたは東南アジアの一角とされ,前7000~前5000年にすでに中国で栽培されていたという。草丈は 1m内外に達し,根もとで盛んに枝分かれする。葉は広い線形で先端はしだいに細まり,長さ約 30cm。基部は葉鞘となって長く茎をいだく。8~9月にかけて,茎の先に円錐花序を出し,分枝して多数の小穂をつける。小穂は 1花からなり,外花穎と内花穎はいずれも船形で,いわゆる籾殻(→)となる。芒(のぎ)は品種により長いものや欠くものもある。6本のおしべと 1本のめしべがあり,熟して穎に包まれたまま穎果(→玄米)を生じる。現在世界で栽培されているイネは大別して,実が細長く粘り気の少ないインド型米(→インディカ米 O.sativa var. indica。いわゆる外来型)と,実が短い楕円形でつやがあり粘り気の多い日本型米(→ジャポニカ米 O.sativa var. japonica)とがあり,日本では日本型が,日本以外ではインド型が通常栽培される。日本型のイネをデンプンの性質によって大別すると,粘り気が多くてにするもち米と,普通の粳米(うるちまい)とがある。また水田に適した水稲と,畑作に適した陸稲(おかぼ)があるが,陸稲は全国稲作面積のわずか 0.4%程度である。茎を乾燥させたものがわらで,縄,むしろ,その他のわら細工をつくる。(→稲作文化

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百科事典マイペディアの解説

イネ(稲)【イネ】

日本では最も重要なイネ科の一年生作物。世界的にもコムギに次ぐ生産量がある。古くから栽培され,紀元前数千年には,すでにインド,中国等で栽培が行われていたという。栽培イネには,アジアイネとアフリカイネがある。アフリカイネは西アフリカ,ニジェール川流域のごく限られた地域にしか栽培されていないため,イネといった場合,アジアイネを指すことがほとんどである。ここでもアジアイネを単にイネと呼ぶことにする。〔起源〕 インド〜東南アジアの熱帯地方には20数種のイネ属の野生種が自生する。現在のイネの起源については,1種の野生種より生じたとする単元説と,2種以上の交雑を経て栽培イネになったとする多元説がある。イネ栽培の発祥地は現在のところ,東南アジアの熱帯〜亜熱帯説が最も有力。そこから東アジア,西アジア,地中海沿岸,17世紀に新大陸へ伝わった。日本へは前1世紀ごろ北九州に渡来。以後次第に東進。〔分類と品種〕 イネの品種は非常に多く,日本で外米といわれ,米粒が大型で細長く砕けやすいインド型(インディカ米)と,丸く砕けにくくて粘りのある日本型(ジャポニカ米)に大別され,おのおのに(うるち)ともち(糯)がある。おもに水田に栽培される水稲とおもに畑に栽培される陸稲とがあるが,植物学的には同一。また早生品種(わせ)と晩生品種(おくて)がある。現在日本では,水稲日本型うるち米が全収穫量のほとんどを占めている。明治以後,品種改良により多くの品種が作られ,栽培限界が急速に北進し,北海道での栽培が可能になった。日本での品種は,古来から総計すれば2000に達するとみられるが,近年では,栽培される品種が少数化する傾向にある。〔生育と栽培〕 イネの栽培を稲作といい,北緯50°〜南緯35°で行われ,東南アジアが主産地。直接本田に種子をまく直まき栽培は,一貫した機械化が可能で米国などでは広く行われているが,日本では陸稲を除けば,まれである。日本の伝統的な水稲手植栽培においては,一般に春苗代(なわしろ)に種子をまき,約40日後に田植をする。田植に先立ち本田を耕起し元肥を施し,代掻(しろか)きを行う。なお従来は田植後数回,中耕除草が行われたが,除草剤の進歩と中耕の効果が疑問視されたため,今日ではほとんど行われない。イネの茎は基部で多数に分かれ,分げつを生じる。田植後約30日で茎の先端の生長点が分化し,幼穂ができ,さらに約30日後に出穂する。出穂前25日くらいに硫安などの窒素肥料を追肥する。穂には100個内外の小花がつく。おしべ6本,めしべ1本,柱頭は羽毛状で二つに分かれる。出穂にあたっては,午前中に開花,自家受粉する。種子は開花後30〜40日で完熟。〔病虫害〕 イネの病気の大部分は糸状菌の寄生による。いもち(稲熱)病,萎縮病,菌核病など数十種が知られているが,特に全国的に被害の大きいのは,いもち病である。これらの病気に対しては,抵抗性の強い品種の選択,農薬による適切な防除,ウンカ類などの媒介昆虫の駆除が必要。イネの害虫は,特に被害の大きいニカメイチュウ,サンカメイチュウ,ウンカ類のほか,イネドロオイムシ,イネハモグリバエ,イネカメムシ,イネヨトウなど120種以上が知られている。いずれも適当な殺虫剤により駆除が可能。→
→関連項目イネゲノム解析研究早生

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世界大百科事典 第2版の解説

イネ【イネ(稲) rice】

コムギ,トウモロコシとならんで世界の三大穀物の一つに数えられるイネ科の一年草で,その穀粒である米は,世界人口の半数におよぶ人間の主食をまかなっている。日本では古来,農業の中心に位置づけられてきた重要な作物である。
【起源と伝播】
 世界の熱帯から暖温帯にかけての湿地には,二十数種におよぶ野生稲(イネ属植物)が自生している。イネ属の分類に関しては古くから諸説が提出されているが,染色体数やゲノム分析により,Oryzae節,Ridleyanae節,Granulatae節およびSchlechterianae節の4節に分ける見方が有力である。

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世界大百科事典内のイネ(稲)の言及

【陸稲】より

…〈りくとう〉ともいわれ,畑地環境に適応して分化してきたイネで,ふつう水田で栽培される水稲と区別される。その起源についてはなお不明な点が少なくないが,イネの起源地において,多様な立地条件に対応して,しだいに陸稲と水稲の区別ができてきたものと考えられる。また一方,世界各地に伝播(でんぱ)した水稲から,個別に分化した陸稲品種も少なくないとされている。現在,アジアイネやアフリカイネ,あるいはインド型イネや日本型イネなどの,いずれの分類群にも陸稲の存在が認められ,東南アジアの山岳地帯を中心に,その分布はアジア,アフリカの各地に広がっている。…

【農耕文化】より

… さらにこの雑穀農耕文化は,アフリカやインドの雑穀のセンターの周縁地域で,湿地にも適応しうるミレットであるイネを栽培化した。このうちアジアのイネ(オリサ・サチバOryza sativa)は,アッサムから雲南にかけての高地で栽培化され,インド平原や華中・華南,あるいは東南アジア北部の平野に展開し,そこで他の雑穀類の栽培から分離・独立して水田稲作農耕の技術を確立した。水利・灌漑をはじめ,各種の協働を必要とする水田稲作農耕では村落を基盤とする強い社会的統合が生じ,また予祝や収穫(新嘗(にいなめ))の儀礼など,さまざまな農耕儀礼が発達し,それらにいろどられた特有の〈稲作文化〉が,水田稲作農耕の展開に伴って形成された。…

【米】より

…イネの種実をいう。収穫された米はもみ殻をかぶっており,これを〈もみ(籾)〉という。日本では,もみ殻をはずした玄米の形で包装,集荷,貯蔵するのが多いが,最近一部ではもみのばら集荷,貯蔵が行われている。外国では米はすべてもみの形で集荷,貯蔵される。玄米を精米機にかけて,ぬか層や胚芽を取り除いたものが精米(白米)である。米は小麦とともに人類の最も重要な食糧だが,小麦がソ連やアメリカなど冷涼で比較的乾燥した地域で生産されるのに対し,米は日本をはじめアジア南部など高温で水の豊富な地域で生産される。…

【青立ち】より

…イネの地上部が青々と直立している状態をいうが,一般には,災害によってこのような状態がもたらされた場合に,とくに使われる用語である。登熟期のイネでは,茎葉部の養分が穂へ移行するのに伴い,穂は垂れ下がり,茎葉部は緑色からしだいに黄褐色に変化していくのが一般である。…

【稲作文化】より

…それが稲作にもとづく自律的な社会発展の型であり,国家形成の道すじであったとすれば,このような社会の進化過程の上に,上記のごとき稲作文化の諸要素が結びつくことによって,やがてそこに成熟した稲作文化の姿を見いだすことになるのである。イネ照葉樹林文化農耕文化焼畑【岩田 慶治】。…

【倉稲魂】より

…食物(稲)の霊魂のこと。ウカはケ,ウケと同じく穀物・食物を意味しており,記紀の神話には,倉稲魂命(うかのみたまのみこと)はじめ大気津比売神(おおげつひめのかみ),保食神(うけもちのかみ),登由宇気神(とゆうけのかみ)等々共通する性格の神が多くあらわれている。ほとんど女神として語られるのは穀物をはぐくむのが女性としての大地だからであろう。現在にいたる民間信仰の世界では宇賀神(うがじん),オガノカミ,おうか様などの農神があり,いずれも倉稲魂より発したものである。…

【古代社会】より

…日本の原始・古代の社会は,採取,漁労,狩猟の社会から,水田耕作を中心とする農耕社会へと発展し,農耕社会の基盤の上に古代の文明が形成された。先土器時代と縄文時代とは採取,漁労,狩猟を中心とする労働によって営まれた時代であり,弥生時代以後は農耕を中心にする社会である。日本の原始・古代の社会は大きくはこの二つの段階にわけられ,文明や社会的な階級,国家形成は後者の段階の社会における歴史的発展の中で行われたものである。…

【栽培植物】より

… いろいろな栽培植物のうちでも,もっとも初期に栽培化されたものは穀類やいも類であろう。ムギ,イネ,トウモロコシなどのイネ科穀類の栽培は,一定の時期に土地を耕し,種子をまき,一定の時期に収穫するという1年を通しての農業活動が要請されるので,人間の生活様式は急速に定着化していくことになった。しかし,栄養繁殖を主とするいも類などを主要作物とした農耕が起源した地域では,穀類栽培にみられるような播種(はしゆ)期や収穫期が厳密に規制されておらず,またいも類は穀類にくらべ長期間貯蔵することはむずかしいものが多いので,人間の定着化はきわめてゆるやかに起こったものであろう。…

【農耕文化】より


[雑穀農耕文化]
 サハラ砂漠南縁のスーダンから東アフリカにかけてのサバンナ地帯と,インド中部および北西部のサバンナ地帯には,麦作・根栽と異なる農耕文化が生み出された。この文化はモロコシ,トウジンビエ,シコクビエ,キビ,アワ,ヒエその他きわめて多種類の雑穀類(イネ以外の夏作の禾本(かほん)科作物)を主作物とし,ほかにゴマなどの油料作物,ササゲ,キマメ,ダイズなどの豆類,さらに多くの果菜類などがそれに加わった複雑な作物構成をもつものである。もともとこの文化は,手鍬(てぐわ)を用い,焼畑農耕によって作物の栽培を行うもので,木臼と竪杵(たてぎね)を用いて脱穀と加工を行っていた。…

【麦】より

…単に麦といえばとくにオオムギとコムギとを区別せずに示す場合が多い。いずれも子実を食糧や飼料などにするために栽培されるイネ科の一・二年草である。この〈麦〉は,日本や中国などで使用されてきた多面的な内容をもつ独特な用語で,これに相当することばは欧米にはない。…

【弥生文化】より

…日本列島で稲作を主とする食料生産に基礎を置く生活が始まった最初の文化。鉄器,青銅器が出現して石器が消滅し,紡織が始まり,階級の成立,国家の誕生に向かって社会が胎動し始めた。弥生文化の時代,すなわち弥生時代は,縄文時代に後続して古墳時代に先行し,およそ前4世紀中ごろから後3世紀後半までを占める。弥生文化は,基本的に食料採集(食用植物・貝の採取,狩猟,漁労)に依存する縄文文化と根本的に性格を異にする一方,後続する古墳文化以降の社会とは経済的基盤を等しくする。…

※「イネ(稲)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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