弁(漢字)

普及版 字通 「弁(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 5画

(旧字)辯
21画

[字音] ベン
[字訓] あらそう・おさめる・わける

[説文解字]

[字形] 形声
旧字は辯に作り、(べん)声。は二辛。辛は入墨に用いる針の形。獄訟のときには当事者がそれぞれ自己詛盟をし、もし盟誓にたがうことがあれば墨刑を受ける旨を誓約して行われた。言はその自己詛盟をいう。〔説文十四下に「治むるなり」とは、獄訟を治める意。のち弁争・弁護の意となる。〔周礼、秋官、郷士〕「其の獄を辯ず」、また〔礼記、曲礼上〕「爭辯」のような用字例からいうと、辯はもと獄訟に関して用いる字。その是非を裁定することを辨(弁)といった。

[訓義]
1. あらそう、いいあらそう、たくみにいう、かたる。
2. ただす、おさめる、あきらかにする。
3. さとい、すばやい。
4. 辨と通じ、わける、わかつ。
5. 便・と通用し、あまねし。

[古辞書の訓]
立〕辯 マサシ・サカシ・ワキマフ 〔字鏡集〕辯 コトハル・メグム・マサシ

[語系]
辯・・辨・(便)bianは同声pienは声近く、はいずれも辯と通用し、あまねくする意。また別biat、(判)phuan、(分)piunも声義近く、辨の声義に通じて分別の意がある。辯・辨は同声であるが、辯には普遍、辨には分別を主とする意がある。

[熟語]
弁逸弁解・弁議・弁詰・弁給・弁恵・弁慧弁譎・弁言・弁・弁護・弁口・弁巧弁詐・弁才・弁察・弁士・弁事弁辞弁識弁釈・弁数・弁俊・弁証弁捷・弁章弁訟・弁照・弁人・弁正・弁省弁析弁斥・弁・弁説弁贍・弁達・弁断・弁治・弁智・弁知・弁暢・弁通・弁難・弁佞・弁駁・弁博・弁白・弁別・弁弁・弁法・弁明・弁利・弁理・弁麗・弁論弁惑
[下接語]
逸弁・覈弁・勘弁・弁・弁・機弁・偽弁・強弁・曲弁・警弁・口弁・巧弁・弘弁・好弁・宏弁・抗弁弁・弁・才弁・細弁・察弁・思弁・辞弁・心弁・精弁・争弁・多弁・駄弁・代弁・端弁・談弁・治弁・知弁・馳弁・陳弁・通弁・答弁・訥弁・佞弁・熱弁・能弁・博弁・敏弁・不弁・分弁・明弁・問弁・雄弁・論弁


常用漢字 5画

(旧字)辨
16画

[字音] ベン・バン
[字訓] さばく・しらべる・おさめる

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
旧字は辨に作り、声符(べん)。は当事者二人が盟誓をして争訟を行う意。〔説文〕四下に「(わか)つなり」とあり、字を剖(ほう)・(判)の間に列して分割の意とするようであるが、辨はもと争訟に対して是非の判断を加える意であり、裁判することをいう。

[訓義]
1. さばく、さだめる、しらべる、あきらかにする。
2. わかつ、ただす、おさめる、わきまえる。
3. そなえる、用意する。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕辨 に同じ 〔名義抄〕辨 アフ・ワキマフ・ワカツ・サダム・タヘタリ・キル・スクフ・アハネハス 〔字鏡集〕辨 コトハリ・タマヘリ・スクフ・キル・コトバ・サダム

[語系]
辨・・辯bianは同声。もとみな争訟に関する語。いま辨・辯ともに弁に作り、字義の区別を失っており、弁は弁冠の象で関係のない字である。辨は辨理・辨治、辯は辯訟・辯護の字。

[熟語]
弁位・弁譌・弁覈・弁詰弁究・弁慧・弁験・弁護・弁誤・弁告・弁才・弁士・弁至・弁似・弁辞・弁識・弁訟・弁証・弁章・弁償・弁色・弁姓・弁析・弁説弁然・弁治・弁知・弁智・弁認・弁駮・弁白・弁博・弁卑・弁敏・弁誣・弁物・弁別・弁明・弁理・弁論・弁惑
[下接語]
済弁・主弁・総弁・治弁


5画

(異体字)
9画

[字音] ベン
[字訓] かんむり

[説文解字]

[字形] 象形
弁冠の形。〔説文〕八下に字の正形をとし「冕(べん)なり。にはと曰ひ、殷には吁(く)と曰ひ、夏には收と曰ふ。皃(貌)に從ふ。象形」とし、重文二を録する。その一体である弁は、髪を包む形。文官は黒い布で作り爵弁、武官は白鹿の皮で作り皮弁。弁には玉飾を多く加えて「会弁」という。〔周礼、夏官〕に弁師の官があり、王の五冕を掌る。弁は頭に加えるものであるから、書の巻頭にそえる語を弁言という。弁はいま辨・・辯の常用漢字として用いるが、みな本来の字義のあるものであり、また弁にもその本義がある。

[訓義]
1. かんむり。
2. 卞(べん)と通じ、はやい。
3. 抃(べん)と通じ、うつ、おそれる。
4. 馬冠。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕 攀(はん)(樊纓)なり、冕なり 〔名義抄〕弁 ワキマフ・カウブル・カウブリセリ 〔立〕弁 ワタル・ワキマフ・カブル・ソナフ・カウブリセリ

[声系]
〔説文〕に弁声として・畚(ほん)・(ふん)など六字を収める。は手を拊(う)つ意で、・拊・拍などはみなそのうつ擬声語。畚はもっこ、は糞の異文。畚はもっこでものを運ぶ形で、この二字は弁に従うものではない。

[熟語]
弁纓・弁騏・弁瓊・弁言・弁語・弁首・弁裳・弁帯・弁端・弁・弁冕・弁髦・弁慄
[下接語]
会弁・冠弁・危弁・弁・瓊弁・試弁・雀弁・小弁・弁・酔弁・正弁・青弁・朝弁・投弁・皮弁・武弁・冕弁


常用漢字 5画

(旧字)
19画

[字音] ベン
[字訓] なかご・たね・はなびら

[説文解字]

[字形] 形声
旧字はに作り、声符は(べん)。〔説文〕七下に「中の實なり」とあり、中に整然とならぶなかごをいう。はもと獄訟をいう字であるが、声の字には・辮のように相並び、あるいは交錯する状態をいうものがある。

[訓義]
1. うりのなかご、うりのたね。
2. 果物の実のふさ、果肉の一片。
3. はなびら。
4. 開閉して動くベン。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕 宇利乃佐(うりのさね) 〔名義抄〕 ウリノサネ 〔字鏡集〕 サネ・ウリノサネ

[熟語]
弁香
[下接語]
弁・花弁・弁・分弁

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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