デジタル大辞泉 「未必の故意」の意味・読み・例文・類語
みひつ‐の‐こい【未必の故意】
[補説]作品名別項。→未必の故意
[類語]故意・わざと・殊更・作意・作為・意識的・意図的・計画的・作為的・積極的・能動的・自発的・わざわざ・殊の外・殊に・好んで・わざとらしい・こと新しい・あえて・せっかく・とりわけ・自ら・手ずから・
罪となる事実の発生を積極的に希望しない一方、特定の結果が生じるかもしれないと予見し、かつ起きてもやむを得ないと考える故意を意味する法律用語。積極的に犯罪の結果を意図する「確定的故意」と区別されることが多い。直接殺害しなくても、寝たきりの被害者に十分な食事を与えず、餓死させた場合や、被害者が寝ている住宅に放火して死なせた場合などは、未必の故意による殺人と認められることがある。
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法律用語。犯罪の実現とくに結果の発生を意図した場合およびそれが確実だと思っていた場合は故意であり,それを全く考えていなかった場合は過失になることに問題はない。しかし,この中間的な場合,すなわち,もしかすると結果が発生するかもしれないとは思っていたが,それを意図したわけではないという場合に,これを故意・過失いずれとみるかは問題である。このような事例は,すべての犯罪について起こりうるが,実際に問題になるのは,通常の殺人(かっとなって刺した場合など),自動車事故(暴走して事故を起こした場合など)などが多く,公害事件などでも問題になる(被害が出るかもしれないと思いながら操業・販売を続けた場合など)。英米法では,この場合を〈無謀reckless〉として,故意・過失とは別の第3の場合としているが,ヨーロッパ大陸諸国では,この場合も故意・過失のいずれかに分けるのが一般的である。日本の立法も,後者に属する。後者の立場において,中間的場合のうち,故意として扱うものを〈未必の故意〉といい,過失として扱うものを〈認識ある過失〉という。どのような場合が未必の故意でどのような場合が認識ある過失であるかについては学説上争いがあるが,日本では,結果の発生を認容していた場合を未必の故意とし,認容していなかった場合を認識ある過失とする〈認容説〉が一般的である。これに従えば,上の例のような場合,結果が発生してもかまわない・やむをえないと思っていたならば未必の故意であり,そうでなければ認識ある過失であることになる。判例の立場は必ずしも明確ではないが,やはり認容説をとるものとみる見方が有力である。
もっとも,実際の裁判では,このような故意の解釈問題よりも,事実認定が問題になることのほうがはるかに多い。故意は内心の問題であって直接見ることはできず,しかも人の心理は複雑微妙であるから,行為のさい何を思っていたかを認定することはきわめて困難だからである。最近では,被告人の供述に頼らずに,行為の外形などの客観的事実から内心を推定しようとする努力がされている。
→故意
執筆者:平川 宗信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
故意の一種で、結果の発生が不確実であるが、発生するかもしれないと予見し、かつ、発生することを認容(容認)する場合をいう法律用語。故意には、結果の発生を確定的なものとして認識する「確定故意」と、これを不確定なものとして認識するにすぎない「不確定故意」とがある。未必の故意は後者に属する。未必の故意を故意と評価するかどうか、「認識ある過失」との関係で両者の区別が問題となる。認容説(通説・判例)によれば、結果の発生を認容する場合が故意(未必の故意)であり、この認容を欠く場合が過失(認識ある過失)であると解されるのに対し、蓋然(がいぜん)性説では、結果発生の蓋然性が相当高度であると認識しているか否かにより両者が区別される。
[名和鐵郎]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… なお,故意の種類として,結果の発生を確実なものとして認識する確定的故意とこれを不確定なものと認識している不確定的故意とがある。後者は,さらに,群集に向けて発砲する場合のように,結果の発生は確実だが,だれに,何人に結果が発生するかが不確定な概括的故意,A,Bのいずれか1人を殺す意思で発砲するように,A,Bのいずれに結果が発生するかが不確定な択一的故意,およびAを射殺することになるかもしれないと思いながら,あえて発砲する場合のように,結果の発生そのものを不確実に認識している〈未必の故意〉とに分けられる。過失【堀内 捷三】
[民法]
故意は過失と並ぶ損害賠償責任の帰責原因であるが,過失におけるような意思の緊張の欠如ではなく,結果発生を認識しながらそれを認容してある行為をしようとする意思の態様をいう。…
…刑法は,原則として故意による行為のみを罰し,過失による行為を罰するのは,過失犯を罰する趣旨の規定がある場合に限られる(38条1項)。 故意と過失の限界は,とくに〈未必の故意〉と〈認識ある過失〉の区別として問題になる。〈未必の故意〉とは,通説的見解によれば,犯罪事実とくに結果の発生を確定的なものと認識せずに,単に可能なものと認識しているにすぎないが,その結果の発生の認容がある場合をいう。…
※「未必の故意」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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