[1] 〘名〙
① かわるがわる勤めに当たること。順番。
※延喜式(927)一一「凡諸司毎日作レ番宿直」 〔旧唐書‐職官志二〕
② 順番によって行なう勤め。当番。
(イ) 宿直のこと。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「宰相中将の君御ばんの夜」
(ロ) 見張り番。警固。
※
サントスの御作業(1591)二「チュウヤ ban
(バン)ヲ ツケヲク ナリ」
(ハ) 江戸城への勤番。
※人情本・仮名文章娘節用(1831‐34)二「全体けふは番だから、どうも来られねへ処だっけが」
③
荘園制で領主が設定した農民支配の組織。何人かの有力名主
(みょうしゅ)を番頭に任じ
番頭給などの給田を与えて、その代わりに担当範囲の年貢の徴収を義務づけた。
※高野山文書‐応永二九年(1422)六月日・近木庄三箇番畠目録「上番現作拾五町四段小卅歩」
④ 物合(ものあわせ)などの勝負を争う組。組み合わせのこと。
※古今著聞集(1254)五「又一巻をば宮河歌合と名づけて、これも同じ番につがひて」
⑤ 明治時代、人力車夫のうちで、一種の組合組織に属していたものの称。また、その車夫たちが集まって客待ちする所。
※老車夫(1898)〈
内田魯庵〉「平常は此橋詰の停車塲
(バン)に五六台は欠かさず客待ちするのが」
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「おれが顔で番(バン)をくどいて」
※雑俳・柳多留‐一五(1780)「つるかから番をつとめる江戸の町」
※雑俳・川柳評万句合‐安永八(1779)天一「にわか雨番(ばン)の出払ふするが町」
[2] 〘語素〙 粗末な物、または、常用品の意を表わす。「番茶」「番下駄」「番袋」「
番手桶」など。
[3] 〘接尾〙
① 数詞に付いて、順序・等級・当番の組の数などを表わす。
※続日本紀‐慶雲元年(704)六月丁巳「勅、諸国兵士、国別分為二十番一」
② 対をなすもの、勝負の取り組み、舞楽の組み合わせなどを数えるのに用いる。
※源氏(1001‐14頃)竹河「桜を賭物にて、三はむに数一かち給はん方には」
③ 能楽で曲数を数えるのに用いる。
※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「婿殿の大鼓聞き及びて候。御なぐさみに一ばんあそばせ」
[補注](二)については、多数備えつけておいて、番号を付けるところからとも、また、当番の人の用いる物の意からともいう。