〘自カ下一〙 ひら・く 〘自カ下二〙
① 閉じているものが広がりあく。また、さえぎるものがない。
(イ) ふさがれていた場所・建物などが開放される。広くなる。
※漢書楊雄伝天暦二年点(948)「惟古に天軌辟(ヒラケ)ず、何ぞ純絜に紛にあへる」
※太平記(14C後)二六「田野ひらけ平にして」
(ロ) 花などがほころびる。ひらく。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)八「一切の華葉、悉皆敷(ヒらケ)栄え」
(ハ) (「心が開ける」「眉が開ける」などの形で) 心が晴れる。
※万葉(8C後)八・一六六一「久方の月夜を清み梅の花心開(ひらけ)て吾が思へる君」
(ニ) 天空が明け広がる。
※浄瑠璃・明石(1645)四「五かうの天もひらくれは二ゑのいしゃうを、ぬきおきてそおち給ふ」
(ホ) (「展」とも) 道、前途、展望などが広がる。
※破戒(1906)〈
島崎藤村〉七「烏帽子山脈の大傾斜が眼前に展
(ヒラ)けて来る」
(ヘ) 道路や交通機関などが通じる。比喩的に、気持が通じ合ったり、やり方の道筋がわかったりすることもいう。
※空知川の岸辺(1902)〈国木田独歩〉一「未だ道路が開(ヒラ)けないので」
② 物事が始まる。
けじめがついて、ことが新しくなる。興る。
※古今(905‐914)
仮名序「このうた、
あめつちのひらけはじまりける時より」
③ 不明のことがわかる。解明される。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)一〇「上果仏田の文、万古を歴て開(ヒラケ)不(す)」
④ 良い状態になる。繁栄したり幸運な状態になったりする。
※大鏡(12C前)一「入道殿下の御栄花もなにによりひらけ給ふぞと思へば」
⑤ 物事が進歩する。進む。
(イ) 文化などが進む。文明が進歩する。開化する。
※車屋本謡曲・難波梅(1427頃)「なにはの浦に年をへて、開くるよよの恵みをうくる」
※交易問答(1869)〈
加藤弘之〉上「世の中が開
(ヒラケ)るに従て」
(ロ) 人の性質などが進歩的で理解がある。世情に通じ野暮(やぼ)でない状態にある。
※
安愚楽鍋(1871‐72)〈
仮名垣魯文〉三「今の世
(よ)せかいにゑりもとへつかないのハやぼのゆきどまりでそれがひらけないのだと」