デジタル大辞泉
「仏」の意味・読み・例文・類語
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ほと‐け【仏】
- 〘 名詞 〙 ( 「ほと」は[梵語] Buddha、さらに、それの漢訳「仏」の音の変化したもの、「け」は「気(け)」か。「け」については、霊妙なものの意とするほか、目に見える形の意で、仏の形すなわち仏像の意が原義とする説もある )
- ① 仏語。仏陀のこと。釈迦仏・阿彌陀仏・薬師仏などすべてにいう。
- [初出の実例]「所祭(いはひまつ)りし仏(ホトケ)の神之心(みこころ)に祟れり」(出典:日本書紀(720)敏達一四年二月(前田本訓))
- ② ①の像。仏像。また、仏の画像など。
- [初出の実例]「仏(ほとけ)造る真朱足らずは水たまる池田の朝臣が鼻の上を掘れ」(出典:万葉集(8C後)一六・三八四一)
- ③ 仏法。または、それを奉ずる仏教徒。
- [初出の実例]「ほとけの御験はかやうにこそと」(出典:栄花物語(1028‐92頃)初花)
- ④ 死者の霊。また、死んだ人。死人。
- [初出の実例]「仏より後家には施主がたんと付き」(出典:雑俳・柳多留‐六四(1813))
- ⑤ 仏事を営むこと。
- [初出の実例]「あさて、仏にいと善き日なり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)もとのしづく)
- ⑥ 僧侶を尊敬していう。→吾仏(あがほとけ)②。
- [初出の実例]「さては仏(ホトケ)や、仏は何の料に、軍の城にはこもり給ひけるぞ」(出典:源平盛衰記(14C前)三四)
- ⑦ 慈悲心の深い人。清純で無邪気な人。また、慈悲心。転じて、気のよい人。お人よし。
- [初出の実例]「是の内儀様は仏(ホトケ)々」(出典:浮世草子・世間胸算用(1692)三)
- ⑧ ( 多く「吾(あ)が仏」の形で ) 自分が大切に思うもの。愛しているもの。→吾仏(あがほとけ)②。
- [初出の実例]「我子の仏、変化の人と申ながら、ここらおほきさまでやしなひ奉る心ざしをろかならず」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
- ⑨ ひとみ。瞳孔。めぼとけ。
- [初出の実例]「目のうちにある仏ちいさし 花籠にいくるつぼみはふげんさう〈正明〉」(出典:俳諧・鷹筑波(1638)四)
仏の補助注記
語源についてはかならずしも明確でない。梵語 Buddha は中国では「浮屠」「浮図」などと音写され、後には「仏陀」と書かれることが多く、これらとの関連が考えられる。空海「性霊集」には、「仏陀」「仏駄」「没駄」「没度」などの表記が見られ、日本でも後には Buddha の音訳としては「仏陀」が一般化し、優れた修行者、特に仏教の開祖釈迦を指す語としてはこちらが用いられるようになった。
ぶつ【仏】
- 〘 名詞 〙
- ① 「ぶっだ(仏陀)」の略。
- [初出の実例]「信心清浄者。華開則見仏」(出典:往生要集(984‐985)大文二)
- ② 仏教。仏法。仏道。
- [初出の実例]「当時は儒・ぶつ・神のたうとき道しきりにおこなはれて」(出典:黄表紙・心学早染艸(1790)上)
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普及版 字通
「仏」の読み・字形・画数・意味
仏
常用漢字 4画
(旧字)佛
人名用漢字 7画
[字音] ブツ・フツ
[字訓] ほのか・たがう・ほとけ
[説文解字]
[字形] 形声
旧字は佛に作り、弗(ふつ)声。〔説文〕八上に「見ること審(つまび)らかならざるなり」とあり、〔文選、寡婦の賦、李善注〕に引く〔字林〕に「(はう)は相ひ似たるなり。佛は審らかならざるなり」という。「佛」は双声連語の形況の語。ほのかにして定まらぬさまをいう。字はまた彷彿・髣髴に作る。〔詩、周頌、敬之〕に「時(こ)の仔(しけん)(大任)を佛(たす)け 我が顯の行を示す」の佛は弼(ひつ)の仮借。字はのち仏陀の仏の字に用いる。仏陀はbuddhaの音訳、覚者の意であるという。
[訓義]
1. ほのか、かすか、ほの似たり。
2. 払と通じ、もとる、たがう、さからう、ねじる。
3. ほとけ。
[古辞書の訓]
〔新字鏡〕佛 佛なり。或いは髴の字と爲す。釋種なり。の佛を(ふつ)字と爲す。人なり、骨なり、耳なり、王なり。保乃加尓(ほのかに)、、美加太之(みかたし)〔名義抄〕佛 ホノカナリ・ホトケ・オホキニス・タチマチ・タスク/仏 俗の佛字なり 〔字鏡集〕佛 サマタレタリ・オホキナリ・ホノカナリ・タチマチ・ホドコス・タスク・ホトケ
[熟語]
仏衣▶・仏宇▶・仏鬱▶・仏影▶・仏果▶・仏界▶・仏戒▶・仏閣▶・仏▶・仏儀▶・仏経▶・仏境▶・仏吼▶・仏▶・仏喝▶・仏工▶・仏国▶・仏骨▶・仏座▶・仏筴▶・仏子▶・仏師▶・仏祠▶・仏寺▶・仏事▶・仏舎▶・仏者▶・仏樹▶・仏書▶・仏性▶・仏乗▶・仏心▶・仏身▶・仏籍▶・仏刹▶・仏説▶・仏前▶・仏然▶・仏陀▶・仏諦▶・仏壇▶・仏檀▶・仏智▶・仏典▶・仏天▶・仏殿▶・仏図▶・仏土▶・仏頭▶・仏堂▶・仏道▶・仏徳▶・仏日▶・仏▶・仏法▶・仏門▶・仏廬▶・仏老▶
[下接語]
一仏・臥仏・活仏・仏・帰仏・古仏・坐仏・事仏・持仏・儒仏・仏・諸仏・成仏・信仏・神仏・石仏・千仏・像仏・大仏・鋳仏・泥仏・仏・佞仏・念仏・排仏・仏・仏・礼仏・露仏
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仏 (ぶつ)
サンスクリットbuddhaの音訳〈仏陀〉の略語で,〈如来〉の語とともに仏陀を指す普遍的な用語である。したがって仏陀の教説が仏教であり,仏陀の像が仏像である。この意味では仏は仏教を指す場合もある。まずbuddha(〈仏陀〉)は目を覚ます,悟るという動詞budhの過去分詞で〈覚れる者〉〈覚者〉の意味である。そしてその覚の内容が菩提であり正覚と訳される。この仏が如(によ)(真理)から来たという意味で如来とよばれ,供養されるべき尊い者の意味では応供(おうぐ)ともよばれる。このほかに正遍知(しようへんち),明行足(みようぎようそく),善逝(ぜんぜい),世間解(せけんげ),無上士(むじようし),調御丈夫(ちようごじようぶ),天人師(てんにんし),世尊(せそん)ともよばれ,仏の十号といわれる。これが仏というものの属性をあらわしている。そのほか薄伽梵(ばかぼん),両足尊,人中牛王(にんちゆうごおう),大丈夫などの称号も見られる。仏はその身体に三十二相と八十種好という超人間的美点をそなえているというので,仏像はその教説にしたがって作られる。仏は中国では金人などとよばれたが,日本では〈ほとけ〉という。この語の起源については古来諸説あるが,中国の音訳で仏陀,仏駄(ぶつだ),浮屠(ふと),浮図(ふと)とされた浮屠の訛音とすべきで,仏を浮屠と書いた例は《魏書》釈老志にある。ところが日本では死者をも〈ほとけ〉とよぶので,缶(ほとき)を死者の霊の容器としてまつるところから〈ほとけ〉が出たという説もある。しかし,それでは仏陀を〈ほとけ〉とする方が説明できない。仏教葬では仏陀と同じ菩提を成ぜしめて一体化することが目的なので,同号になったのであろう。
執筆者:五来 重
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仏【ほとけ】
サンスクリットのブッダBuddhaの日本語訳。語源・語義は明確でない。一説にはブッダの中央アジアでの音訛(おんか)浮図(ふと)に,中国で思想系統を示す家の字を加え,浮図家としたものからくるともいい,また迷いを解(ほど)く意ともいう。俗に死者およびその霊も〈ほとけ〉という。
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仏
ほとけ
『平家物語』巻一「祇王」に出てくる女性。仏御前ともいう。加賀国出身の白拍子の名手。祇王に代って平清盛の寵愛を受けるが,17歳で尼となり祇王らとともに修行する。謡曲『祇王』『仏原 (ほとけのはら) 』,御伽草子『祇王』にも登場する。
仏
ほとけ
仏陀のこと。語源は,煩悩の結び目をほどくという意味から名付けられた,あるいは仏教が伝来した欽明天皇のときに,ほとほりけ,すなわち熱病が流行したためにこの名があるともいわれる。日本では,死者を「ほとけ」と呼ぶ場合もある。
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世界大百科事典(旧版)内の仏の言及
【十界】より
…仏教の世界観の一つ。精神的な生き方を,迷いより悟りへの10層に分け,最下の地獄より餓鬼,畜生,修羅,人間,天上,声聞,縁覚,菩薩,仏へと上昇するもの。…
【宗教】より
…現代から時代を約2500年さかのぼらせてみよう。われわれは,インドのガンガー(ガンジス川)の流域で仏陀が涅槃(ねはん)を説き,中国では老子が道を,孔子が仁を説いていたことを知らされるであろう。そしてそれから約500年ののち,地中海縁辺のイスラエルにイエスが出現して神の愛を説き,キリスト教の礎を築いた。…
【仏】より
…サンスクリットbuddhaの音訳〈[仏陀]〉の略語で,〈[如来]〉の語とともに仏陀を指す普遍的な用語である。したがって仏陀の教説が仏教であり,仏陀の像が仏像である。…
【仏教美術】より
…仏教はインドの釈迦によって紀元前5世紀に開かれ,一は南海をへて東南アジアに伝わり,他は中央アジアから中国,朝鮮をへて日本に達する。長い歳月をかけてアジアの広大な地域に伝播しただけに,そこに展開する仏教美術は多彩をきわめ,その変化の諸相に幻惑されるほどである。…
【三宝】より
…仏,法,僧の三つをいう。仏とは悟りを開いた人,また法とは仏の説いた教え,僧とは仏の教えに従って悟りを目ざして修行する出家者の集団(サンスクリットで〈[サンガ]〉。…
【仏教美術】より
…仏教はインドの釈迦によって紀元前5世紀に開かれ,一は南海をへて東南アジアに伝わり,他は中央アジアから中国,朝鮮をへて日本に達する。長い歳月をかけてアジアの広大な地域に伝播しただけに,そこに展開する仏教美術は多彩をきわめ,その変化の諸相に幻惑されるほどである。…
【仏陀】より
…〈悟った者〉を意味するサンスクリットのブッダbuddhaの音訳。[浮図](ふと),浮屠(ふと)と音訳されたこともあり,仏(ぶつ)とも略称される。意訳は覚者。…
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