抜きん出る(読み)ヌキンデル

デジタル大辞泉 「抜きん出る」の意味・読み・例文・類語

ぬきん・でる【抜きん出る/抽んでる/×擢んでる】

[動ダ下一][文]ぬきん・づ[ダ下二]《「ぬ(抜)きい(出)ず」の音変化》
ひときわ高く出る。「他に―・でた長身
ひときわすぐれる。秀でる。「衆に―・でた才能
選び出す。
「成斎は用人格に―・でられ」〈鴎外渋江抽斎
そのことに人一倍はげむ。
日夜丹誠を―・でて」〈芥川地獄変
[類語](2ずば抜ける図抜ける飛び抜ける抜け出る光る卓抜卓出卓越卓絶逸出素晴らしい素敵すてき見事みごと立派最高絶妙秀逸結構目覚ましい輝かしいたえなるえも言われぬ上手巧みうまい巧妙老巧達者器用賢い上出来上上物の見事結構尽くめ何より・申し分が無い・言う事無し天晴れナイスワンダフル目の覚めるよう目に染みる冴える水際立つ抜群群を抜く並外れる人並み外れる度外れ断トツ非凡出色傑出一日いちじつの長素人離れ玄人跣くろうとはだし超人的めぼしい目立つ引き立つ顕著著しい際立つ目を引く人目を引く人目につく目に立つひときわおも立つとりわけ値千金掛け替えのない

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「抜きん出る」の意味・読み・例文・類語

ぬきん‐・でる【抽・擢】

  1. ( 「ぬきいず(抜出)」の変化した語 )
  2. [ 1 ] 〘 他動詞 ダ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ぬきん・づ 〘 他動詞 ダ下二段活用 〙
    1. 選び出す。よりぬく。抜擢(ばってき)する。
      1. [初出の実例]「擢て用ゐられ給ひしかば」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)上)
    2. 抜いて先に出る。追い越す。
      1. [初出の実例]「それがし大勢の御家来の中をぬきんで推参仕る義」(出典:浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)一)
    3. 卓越した働きをする。志を人一倍あらわす。
      1. [初出の実例]「ひそかに一心の精誠を抽(ヌキン)でて孤嶋の幽祠に詣」(出典:高野本平家(13C前)五)
  3. [ 2 ] 〘 自動詞 ダ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]ぬきん・づ 〘 自動詞 ダ下二段活用 〙
    1. 仲間から抜け出る。とびだす。抜け駆けする。さきがける。
      1. [初出の実例]「心早(はや)き人なりければ、只一人抽(ヌキンデ)て、後の山より何地(いづち)ともなく落給にけり」(出典:太平記(14C後)一三)
      2. 「いかめしげに先走り独りぬきん出何とする」(出典:浄瑠璃・平家女護島(1719)二)
    2. 人なみはずれてすぐれる。ひいでる。
      1. [初出の実例]「祖逖字は士稚気がぬきんでたぞ」(出典:玉塵抄(1563)五)
    3. 他よりひときわ高く出る。
      1. [初出の実例]「広い境内に二列の木々が枝をひろげて、花の雲を作り、ぬきんでて高い楼門を、その上に乗せた形である」(出典:帰郷(1948)〈大仏次郎〉花)

抽んでるの語誌

( 1 )「ぬき(抜)」と「いづ(出)」の複合語「ぬきいづ」から変化して「ぬきんづ」となり、「いづ」から「でる」への変化に並行して「ぬきんでる」となった。
( 2 )中世軍記物語にみえる形が古いが、その話しことば的な性格からも、撥音便が現われる中古の頃あたりにはすでに使われていたという可能性も考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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